【第3章】Artifact Alpha
報せは天文学者のネットワークを駆け巡り、各地の光学望遠鏡、電波望遠鏡の観測データが照合された。
そして判明した事実は、世界に大きな衝撃を与えた。
全長20km、秒速250kmの物体が、太陽系の内側に向かって外宇宙から飛来している……
彗星や未発見の小惑星ならばあり得ない速度である。直ちに、望遠鏡や人工衛星、月面基地が動員され精密な観測が開始された。
その結果は、さらなる衝撃をもたらした。
全長20km、秒速250km。精密分光観測の結果判明した成分はタンパク質を含む有機物。
徐々に減速し、内惑星軌道への進入コースに乗っている」。物体から発射される規則的な電磁波。
数日後、その物体には、国連によって"Artifact Alpha"というコードネームが与えられた。
"Artifact"、すなわち人工物。それが明らかに意思を持って地球に接近している。
世界がパニックに包まれるまでさしたる時間を要しなかった。
仮想空間で、多くの意識の対話が続いていた。
“00000001, 00000001, 00011000, 00000000, 0010, 0010, 01”
“00000010, 00000001, 00110110, 00011110, 0110, 0000, 01”
“00000100, 00000011, 00000111, 00000100, 1100, 1100, 11,11,11,11, 10”
“00000101, 00000001, 00110110, 00000000, 0010, 0000, 01”
“00001000, 00000001, 00000100, 00000010, 0111, 0010, 11,11,11,11, 00,00,00”
“11110000, 00010000, 00001000, 00000001, 0000, 0000, 01”
“00000100, 00, 00, 11, 11, 11,11, 10”
能力は未知、意図も未知。全長20km、秒速250kmの巨大な何かが太陽系にやってきた。
コードネーム "Artifact Alpha"、通称AA。
各国政府は、パニックを戒厳令や非常事態宣言で抑えつつ、Artifact Alphaの観測を続けた。
その結果明らかになったことは、更にパニックを加速した。
Artifact Alphaは地球に向けて軌道修正している……
そして、軌道修正しているにもかかわらず、推進剤の類の噴射が一切観測されていない……未知のテクノロジーに間違いなかった。
各国は軍を総動員して防衛体制を敷いた。国連安保理の緊急理事会が招集され、かつて大国の拒否権行使で機能不全に陥っていたことが嘘のように、Artifact Alphaに対して共同して監視に当たることが決議された。




