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【第16章】 文明の交差

 地球から、Artifact Alphaに対して金属、ケイ素、希少元素が潤沢に提供された。


 引き換えに提供された科学技術は、地球の文明を数世紀分一気に進歩させた。

 真空エネルギー抽出技術、慣性駆動技術、超光速航行技術、計算機技術。いずれも夢のような技術であった。


 2034年7月。

 アリエス連合王国サフィラ市。

 異星船の着地から2年が経過した。押しつぶされ「食われた」ビル群の復興が進んでいる。破壊の傷跡はもはや残っていない。


 今年のアリエス連合王国の元首フラッグマンはザイド公であった。7年ぶりに官庁に連合王国旗と並んでザイド公の旗が掲揚されている。

 二つの知性が出会った土地に、今、彼らから受け取った技術を研究開発する研究所が建設されようとしていた。


 開所式には、今回の出来事の関係者が招待されていた。

 翔平、麗。諒一、イベッタ、絵里。亜紀。フアン教授。スコール大尉。それぞれの思いを胸にこの地を踏み、空を見上げて未来を思うのだった。


「満腹」になった彼らは今夜、太陽系を出立する。

「ねえ、パパ」絵里が、空を指差した。「本当に、行っちゃうんだね」


 全長20kmのArtifact Alphaは、L2ラグランジュ点から慣性駆動によって旅立って行った。

 それと呼応するように、地上に残されていたLX1の残骸に灯っていた明かりがまるで「さよなら」と告げるかのように明滅し、消滅した。


「彼ら、最後に何て言ったと思う?」 亜紀が、胸元のシルバーのヘアクリップに触れながら言った。

「『00(未決定)』こそが、私たちが旅を続ける理由だ……。そう言っていた気がするわ」


 翔平と麗は寄り添い、新しく手に入れた超光速航行の技術がもたらす、まだ見ぬ銀河の果てを夢想していた。

「私たちも、いつか追いつけるかな」 「ああ、きっと。今度はこっちから、新しい船に乗って会いに行こう」


 人類はもう、孤独ではない。 銀河のどこかに、自分たちの「心」の一部を分かち合った友がいるのだから。


 いずれ地球人類も太陽系を旅立つであろう。彼らから受け取った技術を使って。

【終】


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