運命の変わる日~夜~
前回からの続きです!
ナギとイコが一緒に暮らすことになって、数週間が経った頃。
夜、ナギの姿が見当たらないことに気がつく。
「ナギ…?」
これまでもナギが仕事の場合は何も言わずにどこかへ行くこともあった。
しかし、今日はやけに胸騒ぎがするようで、イコはナギを探しに外へ出ることにした。
探し待ってしばらくだった時、家屋の中で何かが倒れる音がした。
こっそりと覗くと、そこにはナギと見知らぬおじさんがいた。
ナギはいつも綺麗に結われていた髪は乱れており、血がべったりと衣服についていた。
そのすぐそばを見ると、おじさんは横たわって血を流しており、見ればナギが殺したのだろうということがわかった。
「…だれだ」
ナギは人の気配に気がついたようで、すぐに振り返る。
「…イコ」
ナギはイコの姿を見た時、絶望したような顔をした。
今まで、ナギの仕事をイコに見られたことはなかったのだ。
ナギは動揺隠せないようで、手に持っていた短剣の刃をイコの方へと向ける。
「…軽蔑したか?…なんで来たんだよ、今更後悔しても遅いんだからな…」
ナギは動揺からか、会話がおかしくなっていた。
イコはそんなナギを真っ直ぐみる。
そして、何も言わずにナギへ近づいて行き、そっとナギの髪を触る。
「ナギが教えてくれたよね」
イコはナギの髪を結ぶ。
ナギはされるがままで、何も言葉を発しなかった。
「…ナギのこと、怖くないんてないよ。…ナギは、人を殺しちゃうけど、誰よりも寂しがり屋で、瞳の綺麗で…。そんなあなたが大好きなんだよ…」
ナギは短剣を床に落とす。
乾いた金属音が、家屋の中で響いた。
「俺は…、寂しがり屋なんかじゃ、ない」
反論しようとするものの、情けないほど声が震えている。
ゆっくりとイコと目が合うと、そこには嫌悪も恐怖もない、ただ一点の愛だけが宿っている。
「…馬鹿だなぁ」
ナギはつぶやくと、力が抜けたようにイコの身体へと身を寄せる。
イコはそれを受け止め、ギュッと抱きしめた。
「もう、本当に離せないからな」
ナギとイコは、このまま深い闇へと落ちていくことだろう。
だが、2人の孤独は確かに1つの絆となったのだ。
2人は協会へ帰り、ナギはイコを膝の上に載せている。
今度は、ナギがイコの髪を結っているようだ。
イコが顔を上げ、ナギの瞳を見る。
ナギは今までのような冷たい瞳ではなく、ひどく熱く、愛情に満ちた瞳となっていた。
「ほんとに…綺麗な瞳だね」
ナギが言葉を発する前に、イコは目を閉じて寝てしまった。
すやすやと寝息まで立てている。
「イコには敵わないな…」
誰にも聞こえないような声でつぶやく。
ナギはイコの頭へと手をやり、起こさないように静かに撫でる。
とても愛おしそうに、ガラス細工に触るように。
そのまま、ナギも静かに眠った。
ナギがその眠りから覚めたのは、強烈な痛みからだった。
「…っ!…あ…いっ!?」
ナギが目を開けようとしても、開けられなかった。
…いや、確かに開けたはずなのに、なにも見えなかったのだ。
幸い、片方の目は血にまみれながらも無事なようで、ようやく焦点を合わせて、周りを見ることができた。
「…イ…コ?」
見ると、イコが何か白い球体を手に持っている。
それをウットリと眺めているようだった。
「…本当に、綺麗だなぁ…」
イコはそれをもって、ナギへと近づいてきた。
そのときわかった。それは、自分の目玉なのだと。
ナギは激痛に苛まれながらも、そこから逃げようとはしなかった。
いや、もう逃げられなかったのだろう。
イコというナギにとっての愛を与えてくれる存在、愛していい存在への、吐き気がするほどの執着が、それを許しはしなかったのだ。
「ハ、ハハハ…そうか、そうだよな」
ナギはイコの頬へと手を伸ばす。
イコも逃げようとはせず、じっとナギを見つめているようであった。
「全部…、全部くれてやるから、一生俺と離れるな…イコ」
全てを手放し、人間としての尊厳も捨て、ナギはイコと共にあることを望んだ。
それは、ただの純愛ではないだろう。
電球に虫が集るように、ナギもイコという光を求めてしまったのだ。
そして、数日後イコは処刑された。
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ここまでで、ナギ少年の過去編は終わりになります。
つぎのお話からは、学園編へと突入します!




