運命の変わる日
初めての投稿なので、ゆるく読んでいただければなと思います。
いちお、乙女ゲームを主軸として書きましたが、あんまりぽく無いので、恋愛小説として楽しんでください!
任務を終えたばかりであった少年は、血の匂いが雨によって流されていくのを感じる。
少年は、そんな土砂降りの雨の中、一人立ち止まっていた。
「…」
ふと、後ろに人がいるのを感じる。
少年は、濡れた前髪を無造作にかき上げ、後ろにいた少女へと視線を向ける。その鋭い目線は、少女を射抜くが、瞳はどこか寂しげであった。
「…なんだ、お前。死にたいのか」
少女は少年の目を見たまま、ずいっと傘を差しだす。
「…悪いが、今は誰かにかまうほど暇じゃない。…いや、こっちに来るな服が汚れるだろう」
少年の衣服は血で染まっているが、少女をかまわず少年に近づいて、傘を差しだす。
少年は一瞬、見たこともないようなものを見る目で、少女の顔を見た。しかし、すぐに顔をそらしてしまう。
「お節介なやつだな…。チッ、好きにしろ。」
少年は、傘を差しだしている少女に背を向け、冷たい土砂降りのなかを歩きだした。
その様子を見て、少女は何も言わず、裸足のまま少年について行った。
泥にまみれた路地裏のなかを二人は進んで行く。
少女はベチャベチャと音を立てながら、少年の背中を懸命に追った。
しばらくして着いたのは、廃教会であった。
外も中もボロボロで、いまにも崩壊しそうな程廃れている。
少年は何も言わずにその中へと入っていく。
少女は少し立ち止まった後、少年に続いて中へと足を踏み入れた。
少年は結んでいた長い髪をほどき、壁にもたれて座り込んでいる。
沈黙の後しばらくして「おい」と言葉を発した。
「そこで動かずにいろ」
面倒くさそうに立ち上がり、古びた布をもって少女の前に立つ。
「傷だらけだ。…汚い血がつくと困る」
そう言い、雑多に置かれた物の上に少女を座らせ、その足首を少しこわばった手でつかんだ。
「…」
お互いに何も話さない。
しかし、少女の冷たい指先が、少年の頬へと伸びた。
身体がピクリと反応し、全身を硬直させる。
少年は反射的に少女の手を振り払おうとして、その動きを止める。
少女と目が合った瞬間、少女の口元には笑みが浮かんでいたからだ。
「…」
少女が何か言葉を発したようだったが、雨音にかき消されてしまった。
少年は戸惑いの目を少女を見る。
けれども、少女の手を振り払おうとはせず、ただじっと少女の目を見続けた。
少女の赤い髪から滴る雫が、少年の膝に落ちたとき、少年はやっと目を伏せた。
少年は足首へと視線を向け、包帯を巻き始めた。
先ほどより少しだけ…ほんの少しだけ、乱暴さが抜けていたようだった。
「…お前、笑えるんだな」
少年はぶっきらぼうにつぶやいた。
少女は少し驚いたような顔をすると、またもやニコリと微笑むのであった。
少年は少女の手当てをした後、また壁に背を寄せ、今度は眠りにつこうとしていた。
少女はそんな少年のもとへ行き、横に座って頭を少年の肩へと寄せる。
「…俺に殺されると思わないのか」
いつもより低い声で威圧するが、少女は関係ないといった顔で正面に見える雨をじっと見つめている。
少年はため息をついた後、少女と同じように雨を眺める。
少年は面倒そうな顔をしながらも、微動だにせず、そのまま目を閉じる。
数日後。
始めは警戒していた少年も、常に一緒にいれば慣れてくるもので、
少女と一緒に過ごす時間は当たり前の事となっていた。
任務にはついて来ないものの、その時間以外では少女は少年のあとをおい、
そのことが日常的になっていた頃のこと。
少年は朝食を調達するために、朝市へ向かった。
教会へと戻ると、少年の外着を持った少女が外で不安そうに周りを見ている。
「…馬鹿だな、お前」
少年は朝市で買ったパンを抱え、少女を見つめる。
少し引きずられたような跡のある外着を見て、少し不服そうに眉をひそめた。
少年は少女の方へと歩み寄り、パンを差し出す。
「…捨てられたかと思ったか?」
少年は投げかけるが、少女は反応しなかった。
静かにそれを受けとった後、少しづつちぎりながら食べている。
そんな少女と教会の中へと戻り、少女と一緒に食事を終えた。
少年はまた外へと向かう。
少女を一瞥した後、歩き出した。
市場へと向かい、少年は少女の靴を買う。
少年が少女の足元を見ると、少女は少し恥ずかしそうに足をもじもじとさせた。
裏路地へと向かい、少女の足に布地の靴を履かせた。
少女はぼんやりと、すぐ隣にある食堂での喧騒に耳を傾けているようだった。
「…これでどこへでも行けるだろ」
少年はぶっきらぼうにつぶやく。
少女は一歩踏み出し、そのままの勢いで少年の胸に飛び込んだ。
「…!?」
不意を突かれたようで、そのまま体制を崩す。
二人は地面に倒れこんだ。
「どこへでも行けるなら、私はあなたの隣がいい」
少年は一瞬目を見開いたが、諦めたように「ハハッ」と笑った。
「…お前は本当に、救いようのない馬鹿だな…ナギでいい」
少年は初めて自分の名前を口にした。
ナギは、初めて自分の事を大事に思ってくれる少女のことを受け入れたようだった。
「…私はイコだよ」
少女は嬉しそうに言う。
ナギは自分の上に倒れこんでいるイコの背中に手を回した。
「…隣にいても、ろくなことはない。明るい未来も、俺には持ち合わせていない。…だが、どうしてもとお前が言うなら…。もう、離してはやれないからな」
ナギは真っ赤な顔をして、イコの身体をギュっと抱きしめた。
それは、今まで愛など欠片もなかった少年の…、ナギなりの精一杯の愛の誓いだった。
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