第6話「大会開幕」
説明を受けたあと、美浜サーキットには様々なマシンのエンジン音が響き渡る。
「みんな結構プッシュ(攻める)してますねー。」
「そりゃ、最速を目指してるんだから。」
「あ、龍星先輩。」
「とりあえず、シート調整しちゃうから1回乗ってみてくれ」
86に乗り込む。
「どうだ?」
「もう少し、シートが前にあるとペダルを全部踏める感じです。」
「じゃあ、もう少しシートを前にしよう。」
「後、やってほしいことは?」
「トラクションコントロール、切れますか?」
「切っちゃっていいのか?滑ると結構アブねぇぞ?」
「大丈夫っす。ゲームでも僕そういう滑らせる乗り方好きなんで」
「じゃあ、大丈夫かな。わかった。切っておく。」
この日は86の調整を終え、近くのホテルへと向かった。
「あ、あの部長、一緒にご飯食べませんか?」
「あ、いいよー全然。一緒に食べよう!」
ホテルの1階に入っているコンビニでお弁当とかを買い、部長の部屋でご飯を一緒に食べ始めた。
「…」
「…」
僕が誘ったのに、2人の間には沈黙だけがあった。
「…あの、部長って、なんで自動車競技部に入ったんですか?」
「私?それはね、もともとモータースポーツが大好きなの。スーパーGTとかF1見に行くくらいね」
「そうなんですね」
「逆に聞くんだけど、夏空くんはなんでこの部活に来たの?」
「僕は…スーパーGT目指してるからですね。」
「というと?」
「自分、中学の時、ゲームでは日本一になりましたけど、カートとかみたいな競技で結果は出したことないから、実車経験を積みたくて。」
「たしかに高校で実車走行を経験できるのはいいよね」
「もちろん明日の本番も勝つ?」
「もちろんすよ!勝ちます!」
「フフッ、じゃあ、楽しみにしてるね。」
「はい!」
一緒に食べたのはコンビニの弁当だったが、今まで食べた中で一番美味しかった。