第5話「参戦」
「…だから、このコーナーはアウトインアウトではなく、インインインみたいなライン取りの方が…」
「なるほど…」
あかりが言ったことを夏空は一字一句漏らすことなくノートに書き留める。
「とまぁ、こんな感じかな。」
「ありがとうございます。」
「もう、明日からサーキット入りだけど、大丈夫?」
「はい」
「ヘルメットとか装備一式はこっちで準備しておくよ。」
「お願いします」
5月2日金曜日。
「すごい台数ですねー!」
「今年はたしかAT-1クラスが164台、AT-0クラスが35台、AT-Xクラスが22台エントリーしてるってさ」
「だいたい220台…多すぎ…」
「多いからAT-1クラスは今日の9時から予選が始まるよ。だけど、私達は明日の午前中になるよ」
「早いっすね」
「そうでもしないと全車が走りきれないからね。」
「そういえば、僕たちはどのクラスにエントリーしてるんですか?」
「いい質問だね。ちょうどいいや、この大会のクラス分け説明するね」
「お願いします!」
自分たちの学校のピットの前に立つ。
「まず、私たちがエントリーしているのはAT-1クラス。このクラスは市販車をベースにした車両での参戦がマスト。ワイドボディみたいな外観を変えるのは禁止。純正の形を保つことが絶対。」
「他にいくつクラスがあるんですか?」
「あとはね、AT-0クラスとAT-Xの2つのクラスがある。そのクラスも説明するね。」
2人はピットエリアを歩き始めた。
すると、スープラのGT4車両などが整備されているエリアに来た。
「この辺はGT4車両がありますね」
「この車両たちがAT-0クラスのマシン。AT-0クラスは400馬力以上の改造車両もしくはFIA-GT4の規格に準拠したマシンでの参戦が許可されてる。このクラスでは指定メーカーのパーツを使ったワイドボディも許可されてる。」
「改造車両ってよりはGT4が多いですね」
「そうだね〜。多分、GT4っていう完成したレーシングカー使えるってのがいいかもね。」
「そうですね。僕たちみたいなクラスだといちから作らないとですもんね。」
「じゃあ、最後のクラスを紹介しよう。」
さらに奥に進むとGT-RのGT3車両などが整備されている場所に来た。
「この辺はGT3っぽいマシンたちが多いですね。」
「これが高校タイムアタックの最高峰クラス、AT-Xクラス。特徴はFIA-GT3の規格に準拠したマシンもしくは他のクラスの規格に準拠しないマシンでの参戦が許可されていること。」
「GT3…何千万、何億のマシンたちじゃないですか…」
「でも、だいたいの学校は地元のレースチームから借りたりとかだよ。唯一学校で持ってるのは産浜高校だね。」
「産浜ってあのスポーツ強豪校の?」
「お、知ってるの?」
「だって、甲子園何回も行ってるじゃないですか」
「あ、野球で知ってるのね。」
「ま、クラス分けの説明は以上だね。明日は走行日だからこのあとは調整しよう。」
「はい!」