第13話「レースカー誕生」
翌日の部活からパーツの分解が終わったマシンに、届いたパーツを搭載し始める。
「フロントフェンダーつけるから持っててー」
「わっかりましたー」
2日目でもうレーシングカーの形になってきた。
「これって、スーパーGTにいるあれじゃないんですか?」
「だよね。なんか見覚えある。」
「あかり、夏空気付いたかい?」
「あ、先生」
「このクルマって」
「そう、スーパーGTに参戦するMC86と同じボディキットだ!」
「あ、やっぱそうだ!」
MC86のMCとは、スーパーGTを運営するGTアソシエーションが販売するシャシー、マザーシャシーの略称。
スーパーGTにローコストで参戦できると期待されて開発されたシャシーだったが、実際、2025年現在、マザーシャシーを使う車両はGT300の5号車マッハ車検MC86のみ。
「GTの方の参戦台数が少ないからパーツがもらえたってことですか?」
「そうだね。さすがにスペアパーツだけど」
「でも、このパーツをつければAT-Xに出られるんですよね?」
「夏空くん、忘れちゃあいないか?AT-Xの規則」
「?」
「AT-XはGT3もしくはAT-0の規則に該当しないマシン…」
「つまり?」
「あ!単純にエンジンの問題か!」
「そう!」
「今の86のエンジンは改造しているとはいえ240馬力くらいしか出てない。」
「新しいエンジンが必要ですね…」
「そこも安心せい!私がエンジンも確保している!」
ホワイトボードに貼られていた資料には〈PORSCHE〉の文字があった。
「ぽ、ぽるしぇ?」
「そう!PORSCHEの水平対向6気筒エンジンを搭載する方向で進めている!」
「でも、秋原先生?これ、多分寸法的に86のエンジンルーム入んないですよ。」百音が呟く。
「え、まじか!?」
「なら、まだWRXとかに使われてるEJ20とかの方が現実的かと。」
「なら、ラリーチームにも知り合いがいる。スペアのエンジンもらえないか聞いてみるよ」
「それと…AT-Xクラスではブーストシステムの搭載も認められてる。私的にはKERSを搭載したいんだが…」
KERSとは?
運動エネルギー回生システム(キネティックエナジーリカバリーシステム)の略。
ブレーキングの際、クルマは運動エネルギーをブレーキパッドを介して熱エネルギーに変換し、減速する。
ただ、そこで熱に変えられてしまうエネルギーを運動エネルギーのまま回収し、バッテリーに充電、それをコーナー脱出時の加速アシストなどに使う、エキストラパワーとして活かそう!というような仕組みのものだ。
「あの、F1にも使われていたやつですよね?」
「そうそう。」
「それ面白そうです!使いましょう!」
「まさか、こんなにいい反応もらえるとは思わなかった。よし、KERS搭載の方向で行こう」
86は愛豊高校のオリジナルMC86へと変貌した。




