第12話「アップデート開始」
サーキットでの大会が終わり、学校に戻ってきた。
外はもうすっかり真っ暗だ。
「…」
秋原は1人、86と向き合っていた。
「もし、このままAT-1クラスにい続けたら多分インターハイには行けない…台数的にも…」
その時、なにか決心し、電話を取り出した。
「あ、もしもし、秋原です。お久しぶりです。例の件なんですけど…あ、はい!お願いします!」
「よし、86アップデート計画、始動だ…!」
週明け、放課後。
「こんにちはーっす」
夏空がいつもの工場に入る。
「って、なんじゃあ、こりゃあ!?」
目の前には山積みになった段ボールやなにかのフロントバンパー、リアウィングなどが置かれていた。
「あ、夏空くん来てたんだ」
「あ、部長、お疲れ様です。これなんですか?」
「さぁ、私にもさっぱり」
「あ、2人とも来てたんだ」
「「あ、秋原先生こんにちは」」
「これなんすか?」
「これはね、最強の86を生み出すパーツだよ」
「実はね、私達愛豊高校自動車競技部は…AT-Xクラスへの出場を決定した!」
「「「ええええええええ!?」」」
「ちょ、ちょ、ちょっと待ってください?」
「私達、先週までAT-1クラスに出てたんですよ?いきなりAT-Xなんて、大丈夫なんですか?」
「安心したまえ。だから、信頼できるレースチームから86の強化パーツをもらってきたんだよ」
「今日の部活からこのパーツたちの組み上げ作業を開始する」
「はーい」
「そういえば、飛鳥と龍星は来ていないのか?」
「あの2人なら今日テストの補習で遅れですよ」
「あの2人…」やれやれというように顔を覆う。
「とりあえず、取れるパーツを取り外していこう。外すべきパーツはここに貼っておくから」
ホワイトボードに86のイラストがプリントされたものが貼られる。
「この赤色になってるところを外せばいいのかな」
「みたいだね」
2人がかりでまずはボンネットを取り外す。
「ボンネット重いよー」
「はーい」
気づけば86の原型がなくなってきた。
「骨だけみたいになってきましたね」
「だね。あとはトランク外せば完了だね」
「「こんにちわーっす」」
「あ、2人とも来た!早く着替えて手伝ってよー!こっち2人で分解するのすごい大変なんですけどー」
「わりぃ。補習が長くて」
「ほんとすんません!もう赤点なんてとりません!」
「とらないのが当たり前でしょうが。ね、夏空くん」
「え、あ、は、はい、そうですね」
言えない…自分も赤点とったなんて言えない…
そこからの作業は早かった。
4人がかりでエンジン、トランスミッションも降ろした。
「これで、86はただの骨だけになったと。」
「ですね。」
「じゃあ、こっからは組み上げですね」
4人での組み上げが始まった。




