第10話「ベスト16開始!」
《ただいまより、ベスト16トーナメントを開始いたします!招集されたチームから車検エリアに進んでください!》
運営スタッフがメガホンを使って指示する。
《エントリーナンバー296番、菱三津高校!》
緑色のシビックFL5がピットエリアの一番先頭に進んでいく。
そこから時間を置いて
《エントリーナンバー192番!愛豊高校、車検エリアに進んでください!》
「行こっか」
「行きますか」
「行きましょう」
メンバーたちがまた86を押してくれる。
そして、車検エリアであかりがベスト16でのセットアップなどの変更箇所を伝えていく。
この報告をしっかりと行わないと失格となりうるのだ。
「OKです、車検合格です。健闘を祈ります」
スタッフが送り出す。
「夏空くん」
「なんですか?」
「このあとはベスト16が始まるけど、別に変な気にならなくていいからね」
「わかってますよ。こうゆう感覚、僕慣れてるんで。」
「じゃあ、大丈夫ね。」
「はい!」
その会話を最後にドアが閉められる。
その時、運営スタッフが駆け寄ってきた。
窓を叩いてくる。
ドアを開ける。
「なんですか?」
「実は今、クラッシュが発生して、君たちのグループの出走が遅れそうなんだ。」
「そうなんですね。わかりました」
その後、僕の出番が来るまでに3回はクラッシュによる中断があった。
《エントリーナンバー192番、エントリーナンバー237番、コースオープン!コースインしてください!》
その指示の後、86ともう1台WRXがコースインする。
「まずはベスト16、勝ち上がれるかですね。」
「そうだな。」
飛鳥と秋原がモニターを見つめる。
ベスト16に進出すると、またルールが変わる。
ベスト16前の予選では3周し、1番速かったタイムで順位がつく。
ただ、ベスト16からは3周して、3周のうち速いタイムが多かった方の勝ちとなるのだ。
例えばAが1周目で1分4秒、2周目で1分5秒、3周目で1分4秒を記録。
Bが1周目で1分6秒、2周目で1分5秒、3周目で1分5秒を記録したとする。
そうするとAが2回1分4秒を記録しているのに対し、Bは1分4秒がない。
その結果Aの勝ち、という方式になる。
そんな確認をしていたときだった。
《クラッシュ発生、クラッシュ発生!》
スタッフたちの無線が漏れ聞こえる。
「え、クラッシュ?」
全員がモニターに注目する。
すると、モニターに映ったのはリア周りが大破したWRXの姿だった。
全員の緊張が緩む。
「秋原先生、こうなった時はどうなるんですか?」
「ん?こうやってクラッシュになったら無条件で不戦勝だよ」
「じゃあ、私たち、ベスト8確定ってことですか?」
「そうだね。他グループでもクラッシュあったし…」
トーナメント表を確認しに行く。
「おっ!愛豊、ベスト8のところに線が伸びてる!」
「ホントだ!」
ベスト8以降もクラッシュ混じりの大会となっていく。




