月山朱華【霊感の目醒めと封印】
月山朱華(女)職業:占い師
現在41歳である。
わたしは幼い頃から霊感があった。
なんとなく感じる気配、誰かの声、、、
でもそれは、
皆が普通に普段から感じ取っていることだと認識していたし、
自分が人とは違うこと、特別なことなんてないと思っていた。
5歳を過ぎた頃には霊と呼ばれるものがみえるようになっていた。
霊の存在を見つけるたびに親に報告したが、
嘘をつくな、変なことは言うなと叱られるので
何かがいても見て見ぬふりをするようになっていた。
時には話しかけてくる霊もいたが、
何となく恐怖心があり話すことはしなかった。
そんなある日、
自分の霊感が覚醒してしまう出来事があった。
小学校5年生の冬、
父親の転勤が決まり、東京から仙台に引っ越すことが決まった。
都内に住んでいた頃は狭いアパート暮らしだったが
引越し先の社宅のマンションは4LDKの11階建のマンションだった。
初めて自分の部屋を持つことができ、とても嬉しかった。
わたしには4つ下の弟がいて、子供部屋は北側に2部屋あったので
姉であるわたしが先に選べることになり、玄関から入って左側の部屋を選んだ。
その部屋に地縛霊が住んでいたのだ。
仙台の冬はとても寒く、
毛布を何枚か重ねて寝た。
布団にもぐり込んでから
重ねた布団の重さがしっくりと身体に馴染むまで時間がかかった。
かけた布団の足元から、
まるで誰かが乗っかって歩いてくるような重さが
のし、のしっと近づいてくる異様な感覚がおさまらなかった。
腹の辺りまで重さを感じた時、
急に恐ろしくなって起き上がって確認するが、何もない。
そのうちに気づくと眠ってしまうのだが、
また違和感で目が覚めてしまう。
そんな違和感でよく眠れない日々が続いたある日、
事件が起きた。
いつものように違和感を感じながらも
寝不足が続いていたので今日こそは眠りたいと思い、
違和感がある重さに耐えてみようと決心した。
布団の重さがいつもより重たく感じながらも
腹の辺りまで重さを感じたあと、
起き上がらずにどこまで重さが近づいてくるのか試してみることにした。
すると、
首元の辺りまで来た時、
やはり耐えられなくなって起きあがろうとした瞬間、
金縛りにあったのだ。
、、動けない、、!!
声も出すことができず、心の中では叫ぼうとしたが
うう、、と小さなうめき声を出すのが精一杯だった。
閉めたはずの窓辺のカーテンは激しく揺れ、
もうそこは自分の部屋の中ではなかった。
真っ暗な闇の竹藪の中にいたのた。
音もなく一人の女の霊が近づいてきた。
霊に気付いた時には、
一瞬にして自分のすぐ側に立っていた。
白い着物を着た髪の長い女性が立っていた。
女性の下半身は薄く透けていて、
血まみれの脚が見えた。
女性の霊は何も言わず、じっとこちらを睨みつけ
目が合った途端、手に持っていた大きな鎌を勢いよく振りかざし、
わたしの脚を切断しようとした。
、、、っ!終わった、、!殺される!
心の中で叫んだ瞬間、朝になっていた。
朱華「、、、、、夢!?」
あまりにもリアルすぎてとても夢とは思えなかった。
閉めたはずの窓は開いたまま、静かにカーテンが揺れていた。
【霊感を封印する】
恐ろしい夜を越えたわたしは、
その夜の出来事を誰にも話すことができなかった。
あまりにも恐ろしく、
そして誰も信じてくれないだろうと思ったからだ。
しかし、あれは夢ではない。
根拠のない強い確信があった。
事件が起きてから以前よりも霊感が強くなっていった。
見たくもないのに見えてくる、
おどろおどろしい姿をした霊を目にする度にストレスを溜め、
精神はおかしくなり、
自分でもコントロールできないほど性格は攻撃的になっていった。
地縛霊を見た日から半年が経ち、
ふと、あの日の夜の出来事を誰かに話したくなった。
朱華「明日、親と友達に話そう。」
理由はないが何となく急に話したくなったのである。
そう思った日の夜、
強い金縛りに遭ってしまった。
、、、あの時と同じだ、、、。
負けてたまるかと思い、恐怖を感じながらも目を開けてみた。
すると、
部屋の天井が全て真っ黒な無数の顔で埋め尽くされていたのだ。
恐ろしくなって無理やり声を出そうとした。
うなされる自分の声で目覚め、なんとか朝が来た。
慌てて起き上り、
天井や部屋の中を見渡したが何もなくなっていた。
その直後、耳元で
「この事、誰かに話したらどうなるか分かってんだろうな?」
と、早口で男の声がした。
わたしは震え上がり、
その日から霊に関わる事全てにおいて口にしないと決めた。
霊感を封印すると決めた。