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嵐山京助【約束と暗黒のリリス】

心の声は強い力を持ち“念“となる。


霊力が高ければ、

他人の念を嫌でも読み取ってしまう。


京助もわたしも強い霊力がある為

少しでも油断をすると電気信号のように伝わってしまい、

強く念じた言葉は口にしなくても聞こえてしまうことがあるので厄介だ。


霊力のコントロールをしなければならない。

気を抜いてしまえば思念が京助に伝わってしまうことだろう。


初めて京助に会った日、

降りてきた言葉がずっと気になっていた。


“死んでみたいよ“


京助の本心だと思う。


260年生きた彼の肉体的老化は、

おそらく三十代前半で止まっているようで

見た目は二十代前半と言ってもおかしくないくらい若々しい。



霊感がある者同士は実際の年齢ではなく、

魂の年齢を感じながら人と付き合うことが多い。

稀に子供でも、立派な大人よりずっと経験を積んだ

経験値の高お魂を持ち合わせた子もいる。


京助も幼い時からそのようなタイプの子だったと思う。



京助が仲間になることに抵抗を感じていた来宮はある条件を出した。

1、朱華が危険にさらされた場合には命懸けで守る事

2、朱華に恋愛感情を持たない事


朱華自身は条件の内容を知らなかった。

あくまでも来宮と京助での間で約束された条件。


非常にくだらないが

来宮ができる唯一の抵抗であろう。


わたしも今回一緒に旅をするにあたり、

来宮の知らないところで京助と約束を結んだ。


旅の間、わたしからヒーリングを受けることだ。


ヒーリングとは心の傷を癒やし、

浄化するエネルギーバランスを整える施術である。


京助の過去世がエンジェルヒーラーだったとしても

肉体を持った人間として生きている以上、

人並みの煩悩はあるだろうし、苦痛も感じる生き物であることは同じ。


京助は死にたいと願っている。

それは異常なことで、決して幸せな魂とは感じなかった。


お節介かもしれないが、

京助の心を癒したかった。


彼は自分の使命をやっと始められると言っていたが

言い方を変えれば守護霊である私の祖母、

恵美子からの指示で京助の人生の時間を奪うことになる。

それは“支配“に値する。


長年生きてこのような高い霊力を持つ彼が一番理解しているはずだ。

それでも彼はノーと言わなかった。


本人が決めたことであるならばそれでいいとは思うが、

なんのメリットもなくこちらの力にだけなってもらうのは

わたしとしては気が引ける。


京助は癒しなど望まないだろうけれど、

これから仲間として長い時間を過ごすのであれば尚更、

彼には少しでも幸せを感じる時間を過ごしてほしいと思う。


受けてほしい約束の理由は話さなかったが、

京助は仕方なくも承諾してくれた。


ヒーリングは、

彼の肉体で極端にパワーが落ちていたりバランスが崩れている部位を探り

手から放出されるエネルギーで癒治療を行う。


そっと触れることもある為、

彼は嫌でもわたしに過去のトラウマを知られることになる。

霊視をしようと思わなくても、

触れることでエネルギー反応として映像でみえてきてしまうのである。


京助が“仕方なく“承諾してくれたのは、過去を知られたくないからではなく

私に対する遠慮から拒もうとしたのであろう。

彼はそういう男である。


二百年以上生きていれば人生色々あって当然だと思うが、

京助が死を願いながら生きてほしくはなかった。


わたしは占い師として何人もの人々を霊視してきたが、

心の奥底に深い闇を抱えた人には共通する“印“がある。


それは目の奥に“黒い月“(暗黒のリリス)と呼ばれる

暗黒色の月のマークである。


古代西洋占星術では黒い月は人間に与える災難の星とされ

本能的強い欲求や病的なまでの人の闇として恐れられてきた。


黒い月の目をした人をこれまでも霊視してきた。


京助は美しく聡明な印象であるが、

目の奥にくっきりと暗黒の黒い月が写っているのだ。

彼はとてつもない霊力の持ち主であるが、

恐らく自分が黒い月を持っていることに気付いていない。

わたしが約束を提案したことで、なんとなく自分の中に黒い月があるのでは?

と察したかもしれないが、特に聞いてくることもなかった。



“黒い月“のを持っている人間の特徴は

壮絶な過去やトラウマを抱えている人や、

長年の暗いトンネルの中にいるような感覚を持ち生きてきた人間、

何度も何度も病み、病み続けた過去から

目の奥に刻まれ、

やがては呪いの闇の力となり目の奥に刻まれる。



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