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嵐山京助【京助の過去】

二百六十年前、僕は人間として生まれた。


人間の肉体を授かるまでは霊界でエンジェルヒーラーをしていた。


浄化のパワーが他のヒーラーより強い事を理由に、

天神様から命を受け、

特別浄化が必要な魂を癒す任務を任されていた。


子を失った女性や、

パートナーから暴力を受けてきたり、

言葉による精神的な痛み、苦しみ、

心が病んでしまった女性の魂を成仏へ導く仕事だった。


僕は、涙を流す女性を宥める日々を過ごしていた。

僕に癒され、

成仏に向かっていった女性たちは皆、とても美しかった。



そんなある日、

涙を流さない女性の魂と出会った


女性の魂はなんの表情もなく、

ただ黙って暗い顔をしたまま俯いていた。


なんて冷たく悲しい、寂しい魂なんだ、、、


ヒーリングしても変わらない、

そっと抱きしめても変わらない、

何をしても癒されることなく女性の魂との日々は過ぎていった。


何をしても癒されない女性の魂と出会い10年が過ぎた頃、

魂は真っ黒な粉となり僕の目の前から消えてしまった。



その後と理由が気になり、

僕は天神様いる部屋のドアをノックした


「天神様、僕です。少しお話がしたいのです」


天神「、、、お入りなさい」


女性にしてきた日々のことや、

僕なりにどう感じたかを丁寧に伝えた。



それを聞いて、

天神様は僕に新しい使命をお与えになることを決めた。



“その時がきたようですね“


「人間としての自分で生きてきなさい。あなたの人間としての命が終わった時、

なぜ女性の魂が癒されることなく消えたか分かる」



癒されることなく消えた女性の理由を探しに、

僕は地上に降りてきた。



そして

僕という人間としての人生が始まった



人間として人生を始めて、

わかった事がある。



人の感情は複雑で、無数にあること


正しいか、正しくないか

悪いか、悪くないか


そんなシンプルな基準もなく

納得ができないことばかりであること


108の煩悩などでは

とても収まらない


恐ろしい程、欲深いこと


どんなことも

簡単には思い通りにはいかないこと


それは何年経っても、

変わることはないこと



“何度生きても同じだ“



その理由はなぜか

僕なりに考えた


考えた結果、

導き出された答えは“期限“だった。


人生の時間は限られている


人には寿命がある


残された人生の時間がどれくらいあるかは誰にもわからない


分かっていたら、できることがある

分かっていたら、できないことがある


いつか終わりがくると知っているから

人は行動する

後悔しないために立ちあがろうとする


それでも、

過去を振り返り後悔する



そうやって


“生きる“


生きる時間の中で

美しい何かが生まれていく。


それはほんの一瞬で


人間として、もがき苦しみ


諦めず生きた者にしか分からない


“幸せ“という小さな宝物


そうやって生きる。


それが人間という生き物だからだ




期限があるから、

初めて自由でいられる


終わりというものは

人の心を強くし、

人生を彩る力となる



そういう世界を人は

人として生きる





だけど

僕には、終わりがない


天神様は

僕に期限を与えなかった



僕には寿命がない



後、何年生きられるのか

後、何年生きなくてはならないのかもわからない


人は出会い、

いつか必ず別れが来る


それは決して悪いことではなく

むしろ美しい世界である



人の命はいつか終わりがくるから

尊く美しい




僕の魂は永遠に朽ち果てることができまま

260年が過ぎた





死んで、みたいよ





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