最近、異世界もの増えてきたよねって話 その2
はじめまして。作者です。
2種類同時進行で進めようと思いました。
多分こっちのほうが更新頻度は高めかな…?って感じです。
暇つぶしになればと思います。
〜森の中〜
「はぁ…はぁ……あー…辛…」
森の中で大の字に寝転がる少年。およそ6歳児程に見える少年の名はアークツルス。
見た目に反して実年齢は19歳であり肉体のみ幼児退行したただのゲーマーである。
「なんで森で寝転がってるんだろう…」
???「私が説明しよ〜う!」
「……どちらさまですか?」
概念の神「私は概念の神!名前はまだない^^」
「夏目漱石みたいなこというじゃん…」
概念の神「あっバレた?まぁそんなことよりも。君。今生きてるの知ってる?」
「流石に。走馬灯かなとも思いましたけど」
概念の神「残念。現実でした〜」
「俺は今どういう状況なんですかね…?異世界転生したのはなんとなく察しましたけど…」
概念の神「おぉさすが。その通り!君は異世界転生したよ^^元の世界では交通事故で死亡。本来ならそのまま天界まで運ぶつもりだったんだけどさ。死に方が死に方だったからね。神様からの慈悲だよ〜」
「……確か腕と足ちぎれたんでしたっけ」
概念の神「そう。因みに右目も無いよ。右目・左腕・右足を切断。大量失血と全身骨折で死亡。あそこまでボロボロになるなんて…5トンダンプって凄いね。人間は恐ろしいものを作るんだね」
「まぁ…利便性を求めて効率化させるの大好きですからね…でもそれだけで死者を蘇生させちゃっても良かったんですか?」
概念の神「まぁ死因も転生の所以だけど…一番は”なんの為”にあそこまでボロボロになって死んじゃったのかが大きな決め手かな」
「……そんな大層なことしたつもりはないですけど…」
概念の神「謙遜は時に傲慢なことだよ。それに。ただ”好きな相手”の為に腕や足がなくなろうが最期まで笑顔で女性に微笑みかけて心配し続けたのに”大層なことじゃない”なんて…口が裂けても言えないよ。まっ!とりあえず前世のことは程々にして。今の話をしよう^^」
「あい…」
概念の神「とりあえず君の身体年齢は6歳。血液型はA型だよ」
「血液型はどうでもいいのでは…?」
概念の神「まぁそうなんだけどね。何よりも大事なのは…」
「………」
概念の神「君はアークツルスに成ったよ」
「………うっしゃぁ…」(拳を高く上げる)
概念の神「その気持ちはすごくわかる。でも流石に完璧にアークツルスにするのは無理だったの。ごめんね?」
「いやもう。アークツルスの時点である程度は対応できそうなので大丈夫です」
概念の神「ありがとう^^一応なくなったのは、スキル・パッシブスキル・メイン武器・メイン装備・アイテム類かな」
「なるほど…”血の加護”失ったの痛いな…」
概念の神「でも逆を言えばそれ以外の全ては残ってるから、大丈夫じゃないかな?」
「……えっ”理壊”あるんですか…!?」
概念の神「うん^^神様会議でもそこはどうにか勝ち取れた^^」
「神様会議なんてあるんだ…」
概念の神「まっそういうことでこっちの世界では好きに自由に楽しんでね^^」
「あっ…消えちゃった…神様。ありがとうございます……まずは…これどうやって起き上がろう…”血操術”で血で手足作るか…目は…このままでいっか」
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〜10分後〜
「さて…適当に歩いてみたけど周囲に危険物等獣の類もいない…神様の話が本当なら何があっても大丈夫だろうけど…流石にどんな危険が潜んでるのかわからないから慎重にいかないとな…」
???「きゃぁぁぁぁ!!」
「っ!!」
茂みの奥から幼い少女の叫び声が聞こえ、アークツルスは反射的に声のする方へ飛び込む。
その先には、熊のような見た目の獣が今にも襲い掛かりそうな勢いで少女を睨みつけていた。
「……晩御飯ゲットぉ!!」
???「ひっ!つっ次はなんですか…!?」
「あっ驚かせてしまって申し訳ありません。お怪我はありませんか?」
???「だっ大丈夫です!そっそれよりも…その魔獣…」
「魔獣?あぁこの熊ですか。大丈夫です。もう息していませんので」
???「いっいつの間に?!」
「見かけたそばからちょちょいと…それよりもこんな所で幼い少女が一人でどうかされたんですか?」
???「わっ私はこの森に何でも治すと言われている万能の霊草があると聞いて…」
「…それって…薄紫の花弁で、小さい光の玉みたいなのをほわほわって周囲に回せてるあれですか?」
???「そっそうです!どこにあるのかご存知なのですか!?」
「すみません。場所まではわからないです。でも一つ言えるのは、その霊草は使わないほうがいいです」
???「どっどうしてですか?」
「僕の知っているものとおなじであれば、その霊草は確かに病を治しますが、その代わりほぼ確実に正気を失い2〜3年で死ぬ毒草だと思います」
???「そっそうなのですか?!」
「はい…それの対象は獣の血が宿っている者か毒に対する耐性が異常なまでに高い極一握りの人間だけです」
???「そっそれじゃあ…お母様は…ッッッ!!」(涙)
「……人の事情に首を突っ込むのは非常によろしく無いと思いますが…よろしければ僕に話を聞かせてくれませんか?」
???「……私のお母様が…不治の病に罹ってしまいまして…今の医学で治すことは不可能らしく…書物を読み漁って……」
「…なるほど。それであの霊草に辿り着いたと」
???「はい…このままじゃ……お母様は…うぅ…」(涙)
「……僕で良ければ治しましょうか…?」
???「え…?」
「…多分…というか…上手くいけば治せると思います」
???「ほっ…本当…ですか…?」
「…はい。治せます。ただいくつか条件がありますが…それも些細な事ですが」
???「おっお願いします!!」
「…はい^^じゃあまずはお母様のところまで案内お願いできますか?」
???「はい!!」
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〜山の麓〜
「僕が今までいたのって山の中だったんだ…」
???「ご存知なかったのですか?」
「あはは^^”お恥ずかしい」
???「おや?」
???「あっお父様!」
???「リエラ。どこ行ってたんだい?それに隣りにいる少年は…」
リエラ「お父様!この方はアークツルス様です。私が森で魔獣に襲われていたところを助けてくださったのです」
???「!そうだったのか。はじめまして。僕はジン・クラウス。僕の娘を守ってくれてありがとう」
「いえ^^申し遅れました。僕はアークツルスと申します。気軽にアークとお呼びください^^リエラ様も^^」
リエラ「はっ!」
ジン「どうかしたかい?リエラ」
リエラ「そっその…私…アーク様に名前を名乗っておりませんでした…」
ジン「……後で僕の部屋に来なさい」
リエラ「あぅぅ…アーク様。申し訳ありませんでした」(ペコリ)
「いやいや^^聞かなかった僕も悪いので気にしないでください^^それよりも…リエラ様。本題が」
リエラ「そっそうですね。お父様。少しご相談があります」
ジン「……その様子だとアーク君が関係ありそうだね。場所を移そうか」
〜〜〜〜〜
〜小屋の中〜
ジン「---さて。それでリエラ。話というのは?」
リエラ「……お母様の病についてです」
ジン「…………」
リエラ「お母様の病が不治の病であることはお父様が一番ご存知かと思います」
ジン「あぁ。そうだね。今は容態は安定しているが次いつ山が来るかわからない状態だ」
リエラ「はい。私達は病を治す為にたくさん努力してきました。ですがどれも効果はみられませんでした」
ジン「残念ながらそうだね」
リエラ「そこで…そこで。アーク様のお力を借りたく思います」
ジン「アーク君の力?どういうことか説明してくれるかな?」
「はい。ここからは僕が」
ジン「うん」
「まず最初に。僕の術式は理を壊すと書いて”理壊”。触れた相手、触れられた相手に僕のルールを強制させる能力です。この力を応用して治療を試みます」
ジン「ッッッ!?……君は…自分が何を言っているのかわかっているのかい…?僕も…僕の妻も子供の戯言に耳を傾けるほど余裕はないよ」
「わかっています。僕もそこまで子供ではありません。初めて会ったガキを信じるのは怖いかも知れませんがどうか今だけは信じていただけませんか?必ず治してみせます」
ジン「……君。歳は幾つだい?」
「6つです」
ジン「…{6つで術式を有するなんてことはありえない…それにこの肝の座り方…}治らなかったらどうする?」
「喜んで自害します^^若しくは煮るなり焼くなりお好きにどうぞ」
ジン「………はぁ…そんなことはしないよ。いいだろう。正直今は悩んでいる時間すら惜しい。頼めるかい?」
「あい^^それじゃあまずはお会いさせていただけますか?」
ジン「あぁ。こっちだ」
〜〜〜〜〜
〜扉の前〜
「へぇ…何重にも結界を張ってるんですね。これは…除菌と消毒と高酸素…除湿加湿に防御系が数枚…厳重ですね」
ジン「…なんでそんなにも正確にすべて当てられるんだい…?」
「えへへ^^…っ!わぉ…」
ジン「……リーファ・クラウス。僕の妻だよ」
ベッドに横たわるのは、目を凝らして漸く分かる程弱々しくかろうじて息をする酷くやせ細った翡翠色の髪の女性がいた。
「……これは何時頃からです?」
ジン「ほんの3週間前から寝たきりの状態だよ。最初の週で寝たきりになり、2週目で体は酷くやせ細り、今では高酸素の結界を張らないと呼吸の維持すら厳しいほどだ」
「なるほど……呪術か…?でも呪術にしては早すぎるな………とりあえず早速始めますが…先に断りを入れます」
ジン「なんだい?」
「僕の魔術を発動させるには僕が対象に触れる必要があります。なので、奥様の身体に触れることになりますがお許しください」
ジン「…あぁよろしく頼むよ」
「はい。では…(リーファのデコに触れる)わっ体温低っ」
アークツルスの手がリーファのおでこ付近に触れるも、すぐに手を引き、元の位置まで戻る。
ジン「ん?もう終わりかい?」
「いえ…目を覚ましてすぐ目の前に知らない僕がいるとテンパるかなと思いまして…では。発動します。『リーファ様の病が治らないわけ無い』し、『リーファ様の身体が3週間前と変わるわけ無い』」
アークツルスが告げた途端にリーファの身体が、徐々に膨らみを増し、痩せこけていた身体は健康体のそれまでに戻り、今まで眠り続けていたリーファは目を覚ます。
ジン「リーファ!」
リエラ「お母様!!」
リーファ「………ジン君…?それに…リエラまで…どうか…したの…?」
ジン「リーファっ…!目を…醒ましたんだね‥!!」(涙)
リエラ「お母様っお母様っ!!」(頭を押し付ける)
「{今のうちに接待受けたとこまで逃げよ}」
〜〜〜〜〜
リーファ「そう…私は3週間寝たままで…」
ジン「そうだよ。なにをやってもダメだったのにそこに居た彼の力を借りたら一回で治ったんだ!」
リーファ「?そこにいるって…どこにもいないわよ?」
ジン「え…まさかっ!!」
リエラ「アーク様!?」
リーファ「とりあえず…私はもう大丈夫だから。彼を探してあげて?私も直接お礼が言いたいわ」
ジン「そっそうだね。このまま恩を返さず逃さないよ…!」
〜〜〜〜〜
〜最初の部屋〜
「ズズズ…はぁ…このお茶美味しいな…紅茶かな?ズズズ…」
ジン「(バァァァン)アーク君は居るかい!!!」
「ブッッッフッッッ!!!!」
リエラ「アーク様っ!」
「あぁ…僕の一張羅が…」
ジン「なんで勝手に居なくなるんだい!!」
リエラ「そうですよ!お礼が言いたかったのに!!」
「多分そのセリフ姿消した時に使うものであって同じ建物に居たじゃないですか」
ジン「それでもだよっ!さぁ!戻るよ!!」
「出会って数十分の方に首根っこ掴まれるとは思わなかった」
〜〜〜〜〜
リーファ「貴方が…」
「はじめましてリーファ様。僕はアークツルスと申します。気軽にアークとお呼びください^^」
リーファ「私はクラウス家第14代当主リーファ・クラウスよ。アークツルス様。この度は私の命を助けて頂き誠に感謝申し上げます」(頭を下げる)
「頭を上げてくださいっ僕に出来ることで良かったです^^あっそれと。今のリーファ様の状態ですけど、身体は寝込む前と同じですが、身体機能は低下しているので無理はなさらないようにしてください。リハビリはゆっくりお願いします」
リーファ「えぇ^^そうします」
ジン「本当にありがとう。アーク君」
リエラ「ありがとうございます!」
「いえいえ^^それじゃあ僕はこれで…」
リーファ「行かせると思う?^^」
「ですよねー」
リーファ「色々とお話がしいたいのだけれど…いい?」
「もちろんです。でもその前に家族水入らずで話した方がいいのでは?」
リーファ「その隙に逃げるつもりじゃなくて?」
「…………そんな事するわけ無いじゃないですかー^^」
ジン「長過ぎる間があったね」
リーファ「家族で話すのも大切だけれど…今はこっちの方が優先度が高いわ」
「…なんなりと」
リーファ「ありがとう^^それじゃあ不躾にごめんなさい。いくつか質問させて?」
「あい」
リーファ「まず…そもそもどうやって私の病を治したの?ジン君から術式を使ったとは聞いているけれど…」
「僕の術式は触れた対象・触れられた対象に対して僕ルールを強制させる能力です。簡単に言えば、不可能を可能or可能を不可能にすることができるんです」
リーファ「…例えば…触れた人間に対して、”動ける”という可能を、”動けない”と言う不可能にする…ということ?」
「そうです。それが対象に僕が触れた場合になります」
リーファ「逆はどうなるの?」
「その場合は、僕に対する可能性の逆転が発生します。例で言えば雨とかそうですね」
ジン「雨?」
「はい。雨に一度でも触れれば、”僕に当たる”という可能を不可能にします。なので、次から雨が降っても、術式発動中僕は雨に濡れることはありません」
ジン「なっなるほど……それを対人で考えれば…触れられなくなるのか…」
「はい^^今回の場合は、リーファ様に発動させたいので僕がリーファ様に触れ、”リーファ様の病は治る”、”リーファ様の肉体は3週間前から変わらない”と。可能性を逆転させました」
リーファ「なるほど……」
リエラ「???」
ジン「これは……恐ろしいね…一度でもアーク君に触れたり、触られたりしたら術式の発動条件を満たしてしまうのだから…」
リーファ「それでも限度はあるのでしょう?」
「いえ特には。僕が思ったことなら大抵のことは可能になります」
リーファ「……時間制限とかは…」
「一度触れれば死ぬまで発動圏内ですし、触れられた箇所・触れた箇所を切り落としても無駄です」
リーファ&ジン「ハァ………」(顔を覆う)
「流石にため息されると傷ついちゃいますよ?」
リーファ「ごっごめんなさい…でも…その力は公言しているの?」
「嫌いな人とかにはあえて伝えて、君の命は僕が握ってるよって伝えています」
ジン「わぁ…」
「あぁ露骨に引かれた…涙がちょちょギレそう」
リーファ「アーク君…貴方のその術式は悪い人からすれば喉から手が出るほど欲しがるわ…」
「でしょうね」
リーファ「……とりあえずこの話はおいておきましょう。それより…私の命を救ってくれたアーク君にはお礼がしたいの」
ジン「そうだね。それにリエラの命も救ってくれた事のお礼もしたい」
リーファ「そうなの…?」
リエラ「そっそうです…」
リーファ「そう…ちゃんとお礼は言ったの?」
リエラ「………あっ……」
リーファ「……あとで私の下に来てね?^^」
リエラ「あぅぅぅ〜…」(涙)
「{デジャブ…?}」
リーファ「アーク君。本当になんとお礼を言えばいいのか…私だけじゃなくリエラの命まで…何でも言って。どんなお礼でもするわ」
「お礼なんてそんな…でも名目上そういうのは必要ですもんね…」
リーファ「………」
「………………………履物を…買ってもらえませんか?」
リーファ「そっそんなことでいいの?」
「勿論です。というか元々お礼なんて頂くつもり無かったのでこれでも結構頑張って出したほうなんです」
リーファ「そっそうなの?欲がないのね」
「お礼が欲しくて助けたわけじゃないですし…というか僕今靴無いですし」
リーファ「そうだったのね…わかったわ。すぐに準備させるわ。どういうのがいいとか、希望はあるかしら」
「できれば…こんな感じのサンダルがいいです。素材は少し硬めのゴムっぽいやつで」
リーファ「これね…海辺の街に売ってるタイプのものね…」
「{ビーサンの概念があってよかった…}」
リーファ「でもそれじゃあ歩きづらいんじゃない?普通の靴じゃなくていいの?」
「普通の靴だとすぐ壊しちゃうんです」
リーファ「そうなの?なら最上級のものを用意するわよ?」
「んー素材というより…僕が靴が嫌いで履いてると段々ストレス溜まっちゃってダメなんです」
リーファ「ストレス…?まっまぁいいわ。すぐに用意するわね」
「いや全然。急ぎのあれじゃないのでゆっくりでいいですよ。僕はしばらく森で暮らす予定ですし」
ジン「そうなのかい?」
「孤独なので…やることもないし暇つぶしがてら山の魔獣でも壊滅させようかなと思ってます」
ジン「それなら…僕達と来るかい?」
「え…?」
リエラ「わぁっ!いいですね!それ!」
リーファ「そうね。その方が私達としてもありがたいわね」
「そうなんですか?人一人増えると色々と大変じゃないですか?」
リーファ「そんなことないわ。それに…アーク君はただの子供じゃないわ。私達のことを救ってくれた命の恩人だもの。喜んで歓迎するわ^^」
「〜〜〜っ!じゃっじゃあ…足手まといにならないようにがんばります。よろしくお願いします」
リエラ「よろしくお願いします!アーク様^^」
ジン「これからよろしくね^^」
リーファ「よろしく^^」
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〜翌日・家の前・AM5時〜
「ほっ…よっ………ていっ」
ジン「おや…?」
「れいっ」(数メートル先の木がへし折れる)
ジン「……精が出るね。アーク君」
「わっ。ジン様。おはようございます^^」
ジン「おはよう^^凄い威力だね。今のも術式かい?」
「いえいえただのフィジカルです^^というか、戦闘では術式は使わないですよ。ほとんど」
ジン「そうなのかい?使えないとか?」
「いえ、使っちゃうと戦いがつまらなくなっちゃうので」
ジン「つまらない?」
「あー…今のは良くない返しでしたね。すみません」
ジン「いや…大丈夫だよ。それよりも…アーク君はよく戦いに身を置くのかい?」
「…昔ほどでは…」
ジン「…なんだか苦い思い出があるのかい?」
「まぁ…そうですね。あまりきかれたくないなーと…」
ジン「それじゃあ聞かないよ」
「ありがとうございます^^ジン様はこれから素振りですか?」
ジン「あぁ。僕はこう見えても騎士だからね」
「こう見えてもって…どう見ても聖騎士の格好じゃないですか。純白のスーツのような制服着て」
ジン「そうかな?そう見えているのならよかったよ^^…アーク君は」
「はい?」
ジン「アーク君は剣を使えるかい?」
「……我流で良ければ」
ジン「一本お願いできるかな?」
「僕の方こそ。ジン様と刃を交えるなんて…光栄です」
ジン「そう言われると照れるな。良かった。2振り持ってきておいて」
「真剣ですか」
ジン「勿論。練習は本番だからね」
「…加減できないかもですよ?」
ジン「思いっきり来るといいよ。僕も思い切りいくから」
「…練習だってこと忘れないでくださいね?」
ジン「勿論^^これでも騎士団の中でも筆頭騎士としてやらせてもらっているからね。そう簡単には負けられないよ」
「{微妙に会話が通じていない気がする…}まぁやりましょうか」
ジンとアークツルスはそれぞれ位置に着く。ジンは模範解答のような真っ直ぐで綺麗な姿勢で構える。
対するアークツルスは剣での戦闘経験が少ないせいで構えが独自の戦術にあった構えになっている。
ジン「{構えこそあれだが隙がないな…}いつでもいいよ」
「ではお言葉に甘えて」
アークツルスは右手で持っていた剣をジンめがけてぶん投げる。
ジン「{得物をなげた!?}何を考えているんだい?」
「これが僕の戦術なので」
ジンが飛んできた得物を弾くと同時に、アークツルスは得物の柄をつかみ、空中で半回転し、ジンの逆サイドを狙う。
ジン「っ?!」
ジンはアークツルスの不意打ちにも身体を仰け反り紙一重のタイミングで躱し、反撃の一閃を繰り出す。
「あら惜しい」
アークツルスは、ジンの反撃を足場として利用し後方へ飛び退く。
ジン「なるほどね。君は超近接特化か。それも9割体術」
「流石。理解と判断が早い」
ジン「これでも騎士団としては長い方だからね。君のような近接特化の子は嫌いじゃないよ。なぜなら---」
「っ!!」
ジン「僕も近接特化だからね」
ジンは目にも止まらぬ速度。それこそアークツルスがほぼヤマ感で防ぐ程の速度で急接近すると、アークツルスと同じか、それ以上のアクロバティック戦法で攻める。
「まっじか…!」
ジン「どうした?防ぐ一方じゃないか」
「もうすぐですよ」
ジン「ん?」
「うし。慣れた」
ジン「っ!!」
「そりゃぁ」
ジンのスピードに慣れたアークツルスは、カウンターを入れ始める。
「(距離を置く)おっ2人とも起きた」
ジン「ふぅ…(剣を鞘に納める)それじゃあ今日はこれくらいかな」
「ですね。お疲れ様でした^^」
ジン「うんお疲れ^^それよりアーク君は強いね。どこで剣を学んだんだい?」
「独学です。だから、有識者の方が見たらボロボロですよ」
ジン「独学であの技術か…君の過去が凄く気になるよ」
「そこはどうか無視していただけると幸いですね」
ジン「勿論。詮索はしないよ^^」
リエラ「お父様ー!アーク様ー!」
ジン「そろそろ戻ろうか^^」
「はい^^」
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リーファ「アーク君。貴方に一つ相談があるの」
「相談…ですか?」
リーファ「そう。リエラと一緒に聖堂教会で”プレート”を作ってみない?」
「”プレート”?」
リーファ「その人の個人情報が書かれた小さなカードのことよ。身分を証明するためのものね」
ジン「因みに、そのカードには自分がどんな加護を授かっているかや術式や魔術の有無もわかるんだ」
「へぇ…あった方が便利そうですね」
リーファ「そうね。これから私達と行動する…つまり、町や村に訪れる場合は持っていた方が変に怪しまれる可能性が減るわね」
リエラ「丁度今日、私の”プレート”を作る為に聖堂教会に行く予定だったのです。だから、一緒にどうですか?」
「でもそれって、発行するために費用とかかからないのですか?」
ジン「大丈夫だよ^^最低限の情報だけなら無料だし、追加で情報を入れるとしても銀貨数枚だから、さして影響はないよ。勿論。追加料金は僕らで持つから、アーク君は何も気にしなくて大丈夫だよ^^」
「そうなんですね…それじゃあリエラ様。僕もご一緒させていただきます^^」
リエラ「はい^^」
リーファ「聖堂教会までの道のりはリエラが案内してくれるわ。お願いね?リエラ」
リエラ「はい!それでは行きましょうか^^」
「はい^^」
リーファ&ジン「いってらっしゃい^^」
〜〜〜〜〜
リエラ「聖堂教会まではここから歩いて10分ほどの場所にあります」
「結構近いんですね」
リエラ「はい^^それにこの村は魔獣による被害報告が少ない平和な村なのです。なので安全に行って帰ってこれると思います」
「あっここって村なんですね」
リエラ「はい^^ここは王都から少し離れた小さな村です。気温もほぼ一定で外敵も少ない事から、お母様の療養するにはうってつけと思いまして」
「なるほど。余生はここみたいに長閑な場所でひっそりと暮らしたいですね^^」
リエラ「私もそう思います!^^」
〜〜〜〜〜
リエラ「こちらが聖堂教会になります!」
「ほ〜…結構シックな…落ち着いたThe・教会って感じの建物ですね」
リエラ「中には必ず一人以上のシスター様が滞在しているので、昼夜問わず私達の相談に乗ってくれるとっても心優しい場所なんです^^」
「そうなんですねぇ^^」
リエラ「それじゃあ早速中に入りましょうか^^」
「はい^^」
〜聖堂教会・ロビー〜
シスター「おはようございます。本日は如何されましたか?」
リエラ「私と彼の分の”プレート”を作りたく伺いました」
シスター「承りました。それではこちらへどうぞ。ご案内します」
シスターに連れられ、二人は奥の部屋に移動する。
部屋の中には2枚のカードと巨大なクリスタルが設置されていた。
シスター「こちらのクリスタルへお触れください。読み取った情報を”プレート”の方へ書き込まれていきます」
「へぇ…あっじゃあ僕は先に外へ出ているので、リエラ様お先にどうぞ」
リエラ「はっはい!それじゃあ…触れます!」
アークツルスが外へ出るのを確認したリエラは、クリスタルにそっと触れる。するとクリスタルは淡く輝き、次第に直下の名刺ほどのカードに情報が刻まれる。
シスター「お疲れ様でございました。これにて”プレート”の作成は終了となります。こちらがそのものとなります」
リエラ「ありがとうございます!アーク様っお待たせしました^^」
「あいっ^^じゃあやってきます」
〜〜〜〜〜
「お待たせしました〜」
リエラ「いえ^^どうでしたか?」
「無事に完成しました。リエラ様の方も大丈夫そうですか?」
リエラ「はい^^情報に間違いはありませんでした^^」
「それは良かった^^それじゃあ帰りましょうか^^」
リエラ「はい^^」