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紅(くれない)  作者: はとたろ
第六章 接客
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第九章 再会2

なんで…こいつが…自殺したはずのこいつが…俺の目の前にいるんだ…


真理に光との辛い記憶を消された雪はボロボロになったクマの光を抱っこすると

そっと鞄の中に入れて家路へと急いだ


数時間後…


チクチクチク……

とれかかり今にも落ちそうな光の腕を雪は得意の裁縫で元に戻そうと縫っている


「 さあ、出来た! 合う生地がこれしかなくてごめんね ほんの少し、色が違うけど勘

弁してね 」


ボロボロの身体を器用に手持ちのパイル生地で継ぎ足して嬉しそうに微笑んでいる雪に

光は返す言葉がなかった


麻酔もないのに 縫われていて不思議と痛くなかった

てか…俺はお前を追い詰めてボロボロにして地獄に突き落としたんだぞ


そうか…この姿じゃわかんないよな


「 彼女にはあなたとの記憶がないのよ 」


え……


突然 話しかけてきた真理の声に光は固まる


安心なさい もう何もしないわよ

ああ、因みにシーパシーで話しているからこの会話は彼女には聞こえていないわ

暫くその姿のままでいることね


お願いだ、元に俺を元の姿に戻してくれ


お断り…


それより 央が知ったら あなた…八つ裂きにされるわね


央…あいつ!! そうか、あんたが助けて連れて行ったのか…ってことは


雪ちゃんは私が蘇生したのよ


蘇生……あんた…いったい何者なんだ?


さあね…それより少しは反省するのね


コンコン ノックの音にビクリとすると央が満面の笑みで帰って来た


「 姉さん、腹減った~なんか食うものある? 」


「 おかえり央くん、焼きそばとおでんの残りでいい? 」


「 おお~頼むぜ~姉さんの作るものなら何でも美味いからよぉ~ あれ? 」


ギクリ!!


クマの光と目が合うと央はひょいっと抱っこして顔を見つめる


な、なにしやがんだ、はなせ、はなせってば

ジタバタしたいところだが光は動けず央には何も聞こえていない


「 この子どしたの ?」


「 歌舞伎町で捨てられてた ボロボロにされて蹴られて痛そうでほっとけなかったか

ら… 」


「そっか…姉さんらしいな よかったな♪クマ助、優しい姉さんに拾われてよ」


ク、クマ助…って 勝手に変な名前つけんじゃねぇ!

っか、バカか、こいつら ふたりして人がいいっつーかヤバいっつーか…


ああ……だから…俺は…騙したんだ…


おでんのいい匂いがしてくる


「 お、美味そうだぜ、いただきま~す クマ助も食いたいだろ、姉さんのおでんは天

下一品だぞ~

待ってろよ、食ったら俺のかわい子ちゃんたち紹介してやっからな 」


こいつはシスコンだったのか……雪があんなことして…どう思ったんだろう…


央は食べ終わると大切な家族だと言いながら蛇の夫婦のぬいぐるみの蛇田さんや、パン

ダのぱんき子や

いろいろなぬいぐるみ達を光に紹介しはじめる


「みんなの名前、憶えたか? 皆、クマ助と仲良くしてやってな」


マジで言ってやがる…やべえヤツ…


央は突然 真顔になりクマ助をじっと見つめる


な、なんだ、なんか気付いたのか?


「 ボロボロになるまで…散々遊んどいて…飽きたから捨てるって…俺は…そういうの

が許せねえんだよ!!! 」


………


「 ぬいぐるみだから何したっていいのかよっ! こいつら痛くたって苦しくたって口き

けねんだぞ! 」


何でそこまで怒るんだよ そのとおりだけど…


央は泣きながら瞳に怒りの炎を宿らせ震えている


「 おんなじこと…自分がされたら…どんな気持ちになるか…考えてみろよ!! 」


こいつ…こいつの中にある燃えるような熱い炎は何なんだ…


央はクマ助ならぬ光をギユッと抱きしめると頭を撫でながら言い聞かせた

まるで父親のような天使のような優しい笑顔でゆっくりと…


「 大丈夫、何も心配しなくていいぞ 俺たちの家族になったんだ これからはなにが

あっても絶対に守る! 」


いったい…何者だよ、こいつ…何で 何でそこまでムキになるんだ

たかがぬいぐるみに優しくするんだ

俺は 俺は お前の姉さんを殺したんだぞ…


「 おっと、最近冷え込んできたからな、ちょっと待ってな 」


央はふわふわな毛布を持ってくると光の目の前でチョキチョキ切り出して雪に渡す


「こいつ、ちっこいからこれで足りるだろう、姉さん、切り口 縫ってやってな」


「 いいわよ マイクロファイバーって軽くてこの子たちの負担にならないものね♪ 」


なんなんだ…よ…ぬいぐるみに毛布って…軽くて負担にならないって…


「 央と雪にとって私たちは家族なんだ 」


え…ふと前を見ると…パンダのぱんき子がしゃべっている


俺はとうとう狂っちまったのか…


「 そうじゃないよ きみが私の声が聞こえるのは家族になったから… 」


「ふたりは子供の頃から鍵っ子で話し相手は私たち売れ残ったぬいぐるみだった」


「人気のない子達は始末されちゃうけど私たちを作ってくれたお父さんは優しい人で…

もう買われないジャンク同様の仲間を嬉しそうに抱きしめて家族にしてくれたんだ」


「だから雪と央は私たちの恩人なの。一生見守っていくつもりだよ」


「 あれ、キミ、どうして泣いているの? 」


話しを聞いていた光の瞳から涙がとめどなく溢れて零れた


――――――――







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