紅
きみに想いを伝えられた
これでいい…これで…どうか…幸せになってくれ…雪…
「せっかく記憶を消されたのに…残念だったな…光…」
「央、やめて…やめてちょうだい!!」
怒りで覚醒したルージュは…もはや雪の声すら届かない…
光に手を伸ばそうとした瞬間…ルージュの背後から高圧的な威厳を放つ声が響いた
「誰の断りを得て暴れている?」
この気配は……!
「青二才の分際で…暫く会わぬうちに 随分と礼儀知らずになったものだな…ルージュ…」
「ゴードン様…」
黒のスーツに身を包んだゴードンは眠るマリアに近づくとゆっくりと額に手をかざした
「お前には…辛い想いばかりさせてしまった…封印した力を帰してやろう…」
ゴードンの瞳が金色に輝きマリアの指がピクリと動く
「マリア!」
傍によろうとするルージュは金縛りにあったように動けない
「触るな!!」
「封印していた力を解いた…数年後には目覚めるであろう」
ゴードンはルージュに目を向けると
「封印を解いたからには…この子はまた狙われるだろう…貴様に守れるのか?」
「…この命にかえても…」
「ならば…むやみな殺生は許さぬ…血を見るのはたくさんだ!」
「ルージュ…その名の通り…貴様は血の気が多い…雪の運命の相手を殺したいのか?」
光が…姉さんの運命の男…
「宿命とは不思議なものだ…目覚めるためにはありとあらゆる困難が立ちはだかって邪魔をする…お前は昔から考えなしだからな…」
「申し訳…ございません…」
「…妻が覚醒してな…ようやっとここを離れられる…」
「騎士達とマリアはお前に預ける…今日より私の代わりにこの歌舞伎に君臨し下衆な輩は始末しろ…目覚めの時が来るまで魔の者からマリアを守れ…」
「お前が約束を果たした暁には…安心して我が娘を妻にするがいい…ルディ、その時が来るまでこやつがバカな真似をせぬよう頼んだぞ…」
「ゴードン、僕ははなからそのつもりだよ…ルージュはまだまだ未熟ものだ」
「ゴードン様、私も弟が心配です。どうか傍にいて見守ることをお許しください」
「私も兄が心配です! 傍で見守る事をお許しください」
「よかろう…二人ともこのバカを支えてやってくれ」
ゴードンは優しく微笑んだ
「あの…俺は愚か者ですが雪とキーシャと共にルージュをサポートさせてください」
光は跪きゴードンに頭をたれる
「おい、光、お前には頼まないぞ!」
「ルージュ…言ったそばから聞き訳が悪いならマリアは絶対にやらん…」
「お前の姉が惚れこみ、マリアが転生させただけのことはある…不思議な力を持つ男だ
…お前の片腕となるであろう」
確かにそうかもしれない…ゴードン様のお目は確かだ…
「ありがとうございます! ゴードン様…このルージュ、命に代えても必ずや約束を果たしマリアを妻に迎えます」
ゴードンは静かに頷き霧となって消えて行った
数ヶ月後…眠らない街・歌舞伎町に君臨するCamerotでは騎士達と共に今宵も紅の騎士・トリスタンが姫君たちを出迎える
マリアが目覚めるその時まで…
「いらっしゃいませ、姫君…ようこそCamelotへ…」
――――――――




