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紅(くれない)  作者: はとたろ
第六章 接客
24/29

今年中に…ナンバー1…


「お兄様…でも彼は私のゲッシュを守ってクリアしたばかりなのよ。今年中になんて…」


司は真理の頬を撫でながら厳しい言葉を発した


「ではきみは…央くんの血で貧血をやり過ごしていずれ彼を干からびさせるつもりかい?」


真理の顔色が一瞬で青くなる


「私は大丈夫よ。この間たまたま倒れたに過ぎないわ…それにCamlotは私のお城よ…お兄様とはいえ、うちの騎士に口出しされるいわれはありません」


「おやおや…遅すぎる反抗期かな…真理、きみは下界に居続けるにはすでにギリギリなはずだよ…」


「ギリギリって…司様、教えてください。どういうことなんですか?」


司は軽くため息をつくと


「店が終わったらわたしの家へ…そこで詳しく説明しよう」


「わかりました。ありがとうございます」


「央…」


不安そうな真理を優しく包み込むように抱きしめ額にそっと口づけると央からCamelotのトリスタンへと顔つきが変わりはじめる


「あなたを帰したりしない…俺を信じて…」


背中を向け、トリスタンは姫たちの待つテーブルへと向かって行った


「いらっしゃいませ。姫君…ようこそCamelotへ…」


トリスタンがテーブルを廻りはじめると姫たちが一斉にぽぉーっとして見惚れている…


「トリスタン…あなた、何かあった?」


恋を知らなかった無垢な彼が命がけで恋する紅の騎士へと変貌したことをトリスタンの姫たちは誰もが女性特有の勘で気付いてしまう


「何もありませんよ。久美姫…」


微笑みながらも揺れる瞳には恋する者特有の狂気と色香が漂っているのに久美は感づきにっこり微笑んだ


「だめよ…」


「え…」


「クスクス…私は人生も恋愛もあなたより先輩なのよ…私の目をごまかそうとしても無・駄」


「白状なさいな…好きな人が出来たでしょう」


トリスタンは顔色ひとつ変えずに水割りに唇を近づけると上目遣いに久美を見つめる


ドキリとするほどセクシーな表情に久美は驚いた


「そんな顔して…逃げるなんて反則よ」


「では…意地悪で素敵な姫君にあたたかいグリューワインを…」


絶妙なタイミングで亮が久美のイメージに合わせたアップル入りの熱々のグリューワインをテーブルに運んでくる


「あら、あなた素敵ね! カウンターにいるのがもったいないわ!」


前髪がハラリと片目にかかった憂いのある亮を見て久美は興味深そうに話しかける


もとナンバー1のオーラは本人の自覚なしにふとした刹那に漂うようだがトリスタンは彼が雪を自殺に追い込んだ張本人とは露ほども気付いていない


「…姫…今はわたしがお相手ですよ」


一瞬でも久美の気持が亮に揺らいだことに腹を立て…トリスタンは少し拗ねた表情を見せると…久美の指をキュッと握った


あ、あら…この子ったら、いつの間にこんなテクニックを覚えたの?


いやだわ ドキドキしちゃうじゃない


「お召し上がりください…姫をイメージしたグリューワインです。温まりますよ」


次の瞬間、握った指を優しく外すと天使のような屈託のない優しい微笑みでワインをすすめるトリスタンは誰にも真似の出来ない独特のオーラを放っていた


彼自身、そのことに気付かずに…


コク…「まぁー熱い! 甘くて美味しいわ 何か入っているけれど…」


「シナモンとリンゴですよ…アダムとイブが目覚めた禁断のリンゴを貴方に…」


奥から見ている亮は腕組みしながら頷いていた


成長したな! 央… お前はもう立派な夜王だぜ

他者への敵対心は自分をステップアップするのに必要だからな


「そのことに気付いたら怖いものなしね…」


「今後が楽しみですね…真理様? お顔の色が優れませんが……すぐにあちらへ…車を出しましょう!」


「ありがとう、亮…大丈夫…少し寝不足なだけよ」


「……嘘が下手ですね…なんとも似合わない言い訳だ…」


ギロリと睨む真理を見て一瞬、ギクリとしたがいつもと違う様子に気付いた亮は不安を覚えた


「出過ぎた事を申しましたご無礼をお許しください…ですが、オーナーに倒れられてはプレイヤーも従業員たちも不安になります」


当たり前のことを指摘され真理は思わず苦笑いした


「そうね…らしくないこと言ったわ…累を呼んで頂だい…」


「かしこまりました」


跪いて一礼すると亮は真理の秘書の塁を呼びに行った


流石は…ナンバー1ね…光… 陳腐な嘘を見抜かれたわ

私は…どうかしている

あの子が央が騎士として成長していくのが何故こんなに辛いの…

どうしてさびしいの…


彼が本物の騎士になるのにそう時間はかからない


いえ、すでにもう…なってしまっているのかもしれない…


その優しさに触れた誰もがときめき心惹かれる 一流と云われるプレイヤーたちがひれ伏す紅の騎士に…


彼を育てるのが私の役目なはずなの…に…こんなに心が乱れてどうするの…


無意識に涙が頬を伝っていく……央……央…!


「真理様、大丈夫ですか? 車の準備が出来ております」


どうにもならないモヤモヤした感情と戸惑いを抱えたまま 真理は塁の車で自宅へと帰って行った



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