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紅(くれない)  作者: はとたろ
第六章 接客
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第十六章 ケイ

「 今日で五日です… 」


「 何が…? 」


「 何がって…! ケイ先輩ですよ 真理さん、本当は知ってるクセに!! 」


真理はメンソールの煙草をくゆらし無表情に応えた


「 辞めたわよ 」


え……なんだよ…それ……


「 何も? 何も言わずに…ですか? 皆にひと言も言わずに!! 」


「 彼が決めたことよ…片割れが見つからないと何も出来ない…って 」


「 ナンバー5だった自分が易々とあなたに抜かれて…でも何も感じないって言ってた」


やっぱり…ケイさんの兄弟を見かけた時…無理やりにでも店に連れて来たら…ふたりは再会できたの…に…


「 真理さん…俺… 」


真理は黙ってメモを渡した


西新宿6丁目 タワーズマンション701…


「 ありがとう…ございます! 」


「 よろしいのですか? 」


亮に念押しされ真理はクスリと笑って言った


「 お節介うさぎちゃんだから…止めても無駄 」



うわっ! すっげえ高層マンション……マジ住んでる世界がちげーな…って、そんなのどーでもいいだろ! 俺!!

いきなり おしかけて失礼…だよな


な、何て言うんだ…俺はケイ先輩に…まだ教わりたいことがたくさんあるんだ…


央は拳を握り唇をガリッと噛んだ



ピンポーン♪


「 はい… 」


やべっ…もろ超絶不機嫌じゃんか…


央がパニックになっていると突然ドアが開きケイが顔を覗かせる


「 よお…何してんの…そこで… 」


「 お、俺、俺はっ…ケイ先輩にまだ教わりたい事が山ほどあるんですよっ!! 」


「 誰の命令? 」


その言葉にカチンときた央は思わず大声を張り上げた


「 命令って何だよっ! あんたが…いきなりいなくなるから…会いに来たんだ…訳聞かせて下さい…ケイ先輩… 」


「 落ちて…くだけた… 」


何がだよっ!!


訳のわからないケイの態度に央はキレた


「 なに…俺を…殴りたいのか? 」


「 ご兄弟を探しながらでも仕事続けられるでしょう… 」


「 俺に説教しに来たの…大したご身分になったものだな… 」


……違うんだ ただ 俺は…


「ぷっ、 あっはははは」


いきなり吹き出され央はポカン…


「 ごめん、ごめん、ちょっとからかったんだよ 」


「 そんなとこで立ち話してないで入ってもらえば゛… 」


部屋からケイと瓜二つの顔が出てきた


「 あー、あ、あなた…この間の… 」


「 ああ、きみ…お店の人だったんだ ひろ君と間違えたんだね 」


ひろ君……てか、こうしてふたり並んでも鏡…みたいだ…


「 あ、でもご兄弟、見つかってよかったですね ほんとよか…った… 」


会えたんだ…やっと会えたんだ…

ボロボロに泣き出す央を双子は優しい瞳で見ている


「 いきなり訪ねて来て キレたり、泣いたり 忙しいやつだな 」


「 どうぞ 」


ケイの双子、豪が淹れてくれたココアを飲みながらほっとする央にケイは静かに語りはじめた


「 俺は離れ離れになったこいつを探してたんだ 気の遠くなる時間をかけて何百年もね… 」


そうか! この人もヴァンパイアだったっけ…


「 なかなか目覚めてくれなくてね…花屋で働いていて、最初俺を見て目をまんまるくして驚いてた(笑) 」


「 鏡を見てるみたいで…いきなり泣かれて抱きしめられた瞬間…ゲイかと思ってひろ君を突き飛ばしたんだ 」


「 ひどいだろ? 」


「 何度も何度も店に来てくれてありとあらゆる花を買ってくれるから流石に気が引けてね… 」


「 家に来てくれって頼まれて まあ襲われはしないかと思って… 」


ケイ先輩、完全にホモだと思われてたのか…


「 すごいマンションに住んでるからびっくりして…ひろ君はショコラを淹れてくれてね 好きだろ?って言われて正直 驚いた 僕、ホットチョコが大好きで朝、晩、欠かさず愛飲していたから…  」


「 それで…肖像画を見せられて 」


「 肖像画? 」


「 俺たちが子供の頃のね… 」


「 僕とそっくりな、じゃなく僕とひろ君が手を繋いでにこにこしていて…見ていたら涙が自然に出てきて…」


「突然、目眩がして気を失っちゃってね…気付いたらソファに寝かされていて…心配そうに僕の顔を覗き込んでるひろ君を見て まるで霧が晴れるように思い出したんだ 何もかも…」


「 Camelotにいたのはこいつを探すためだったからね 目的を果たせたってわけ 」


そうだったのか…


「あの お二人が再会されて本当に嬉しいです でも…ケイ先輩は俺の憧れで優しくて厳しくて…いろいろ教えて下さって… つまり…やめないで下さいっ! 」


「 ひろ君、どうする? 」


「 可愛い後輩にそこまで言ってもらえて嬉しいけど… 」


「 騎士の教育係としてはどうかしら… 」


「 真理様… 」


「 プレイヤーとしてではなく…それに彼の育てている薔薇は濃度が濃くて美味しいし… 」


美味しいって…薔薇が美味しいって…


「 あら…薔薇は我々にとって大切なエネジーなのよ 知らなかったの? 」


「 あの、僕の薔薇、本当にお気に召していただけましたか? 」


真理は微笑んで頷いた


「 お店だけではなく あなたさえよければ…私の薔薇園を任せたいわ あなたの薔薇で庭園をいっぱいにして頂だい 」


「 ありがとうございます! 喜んで務めさせていただきます 」


「 よかったわね お節介なうさぎちゃん 」


真理にからかわれ赤面しながらも嬉し泣きしている央を見て


「 なら 今日からひろみって呼んでよ 本名だから あらためてよろしくな 央 」


「 はい! ひろみさん、豪さん、よろしくお願いします! 」


「 決まりね、じゃ 焼肉でも食べに行きましょう 」


「 おお♪ 肉ですか~! あ、でも匂いが不味いんじゃ… 」


「 明日までお休みにするわ 」


やったぜ!!


「 じゃあ行きましょう 私の兄がやっているお店でいいわね? 」


真理様のおに…いさん? お兄さんもいたのか… マジかよ!



「 ルディ様にお会いするのは久しぶりです! 」


「 僕も僕も! 」


真理様のお兄さん……いったい どんな方なんだろう…


嬉しそうなひろみと豪を見て央はますます気になった



――――――――








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