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紅(くれない)  作者: はとたろ
第六章 接客
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第十四章 覚醒

いつも通り店に向かう途中…央は見覚えのある男性とすれ違った


え…? 今の…ケイ先輩?


「 先輩、おはようございまっす。待ってくださいよ~どこ行くんですか? 」


腕を掴まれ振り向いたケイに瓜二つの男性は訝しげに央を見てムッとしている


「 きみ、誰? 人違いじゃない? 」


「 えっ…や、やだなあ~からかって~あの、もしかして まだ怒ってるんですか? 」


親し気にへらへらする央に思いきり不愉快な顔をして


「 俺、あんた知らないんだけど…離してくんない… 」


掴まれた手を振り払うと男はスタスタ歩いて行った


…んだよ…感じわりぃな…だいたい店と逆方向に歩いて行ったけど…


「 おはようございまっす 」


スタッフルームに入ると早々とケイが支度していた


「 おはよ、トリスタン 」


マジかよ!!!! だってさっき…


顔面蒼白な央を見てケイが近寄ってくる


「 どした? 幽霊でも見たような顔して… 」


「 な、なに言ってんですか! さっき外ですれ違って声かけたら人違いだってムッとされて… 先輩、スタスタいつもと逆方向に行かれたから俺、てっきり怒ってんのかなって… 」


ケイの顔色がみるみる変わっていく


「 いつ…だ? 」


「 へ…? 」


「 そいつといつ、どこですれ違った? 」


ケイは央の胸ぐらを掴んで興奮している


「 だから…つい、さっきですよ…ってことはケイ先輩じゃないんですか… 」


ダッ…!!


「 あ、先輩! 」


ど、どーすんだよ、もうすぐ開店だぜ (汗)


「 ケイが? 」


「 はい、真っ青になって慌てて外に行って…あんなケイ先輩、初めて見ました 」


「 そう…見つかったの… 」


真理は顎に手をあて考えている


え?


「 ケイの片割れ 」


片割れ?? あ、そういえば…以前 はぐれた双子を探してるって……じゃ、あの人が…


「 そっか、そうだったのか! バカだ、俺、てっきりケイ先輩だと思って気付かなかった!! 」


「 せっかく偶然に会ったのに…すぐに店に連れてきていれば… 」


ポタ…ポタ…


央の瞳から呆れるほど涙が溢れた


「 おいおい、お前が泣くことないだろっ 」


ガウェインに肩を叩かれたが央は自分の馬鹿さ加減に腹立たしかった


ピシャン!


いきなりの真理の平手打ちにハッと我に帰る


「 何を考えているの? もうすぐお客様が見えるのよ 少しはプロとしての自覚を持ちなさい… 」


「 他人の心配より…自分の心配したら?  あと一か月でナンバー2になれないとゲッシュを破ることになるのよ 」


そ、そうだった! まだ俺、ナンバー6で3にもなっていない…


「  あなたはね…すべてにおいて甘いのよ… 」


真理に蜂の一刺しをされ央は自分を奮い立たせた


「 きみは半端だね 」

先日 ケイに言われた言葉が脳裏に蘇る


半端…そうだ…暢気に人の心配している場合じゃない!

約束の期限まであとひと月…

せっかくもらったチャンスを無駄にする気か…俺は!!


化粧室に行き、顔を洗い鏡を見る

面長で据わった眼差し…整った顔立ちの男がこちらを見ている


こんな顔してるんだ 俺…


こっち向きになると…あ、斜め角度だとなんだか…スケコマシみたいだな…


待てよ…スケコマシ……少しはその色気が必要なんだ!


店に来てくれる姫たちはときめきとロマンスも求めていらっしゃる


友営とはいえ…少しは推し的な魅力がないと…推し…そうか!

接客は誠実に…でも表情でドキリと姫たちをさせることが出来ないと!!


色気のないバカなぬいフェチの男に姫たちが会いにくるかよ!


俺はここの姫たちが優しいのに甘えていたんだ…くそ! 本物のバカだぜ


央は鏡を見つめて表情の研究をし出した


これだ…この角度…この微笑み…よし!


受けるかどうかはわかんないが自信を持て! 自分自身に

央、お前はCamelotの騎士、トリスタンなんだぞ 悲しみの子と名付けられ…イズーと命がけの恋に身をやつした…


女性が全てをなげうっても愛したい男にならないと…


持ち歩いているベティエ著「トリスタンとイズー物語」を読み返しながら気のいい央からトリスタンへと変わっていく


「 おい、トリスタン、そろそろ姫たちを出迎え… 」


呼びに来たパーシバルは別人のようなトリスタンを見てギョッとした


「…パーシバルさん、すみません…今、行きます…」


なんだ…こいつ…いつもと雰囲気が……


影のある妖艶な微笑みを浮かべて一礼すると トリスタンは扉へと歩いて行った


「 いらっしゃいませ姫君…ようこそCamelotへ 」


跪き挨拶するトリスタンの変貌ぶりに騎士たちの誰もが内心 驚いていた



――――――――



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