一話
この世界は魔法がある。
この世界は勇者がいる。
この世界はーーー?
♪
やあやあみなさん、初めまして。
ボクの名前はユウ。
これからお見せするのは、ボクが夢を叶える話。
♪
町外れの湖の近くに、赤い屋根の家がある。その家は花に囲まれていて、とても綺麗で。
住んでいるのは誰だろう?と、その家を見たものは思うだろう。
「あたたかくなってきたわね~」
赤い家に住む少女がそう呟くと、花は答えるようにふわふわと揺れる。
なにげない1日の始まりーーかと思ったその矢先。
ビュンッと空間を割いてしまいそうなほど速い風の音が聞こえた。
「!?」
少女は驚いてその場にしゃがんだ。
「やあやあ。こんにちは。はじめまして」
ー1人の少年(?)が少女に近づいていく
「っだれ?こっちにこないで!!!」
腰が抜けてしまったのだろう。少女は手をバタバタさせるだけでその場から離れることはできなかった。
「おっとおっと、これは失礼。挨拶だけじゃあだめだったね」
..少年は《《キランッ》》とウインクをする
「ボクの名前はユウ。キミをー
殺しにきた」
少年はウインクをした時とは打って変わって真剣な顔でそういった。
「っ!?わけがわからない!何故!?」
「何故って言われても....。ああでも、君はもう死ぬわけだし、特別に教えてあげようか」
少年は1人納得し、少女のもとに近づいていく。
「ボクが君を殺すのは、いわば試しうち?この場合は試し殺しかな?」
少年は少女に近づき、その場にしゃがんで人差し指を立ててそう言った。
「試し殺し?意味がわからない。」
「...ああごめんごめん。なぜ試し殺しをするのか、だよね」
少年は立ち上がりーださい決めポーズをしながらこう言った。
「ボクは世界を征服したいんだ!
それがボクの夢でね。」
「では、どうやって征服する?世界征服ってのはやっぱり悪者っぽくいかなきゃでしょ?」
少女はわけがわからない、と思いながらもユウの演説を聞いている。
静かに聞くことでユウの気が変わるのを待っているのだ。
「ボクは魔王を倒してその座を奪うのがいいと考えた!
どうだい?素晴らしいだろう?」
....素晴らしい?
「でも、魔王になったところで、世界には強い人がたくさんいるんだ、きっとそのうちピンチが訪れてしまう...ボクは完璧を求めているんだ。」
聞くことしかできない少女はごくりと唾を飲み込む。
「だから、ボクはまた考えたんだ。」
ユウはフラフラと歩いていた歩みを止めて、少女の前に立った。
「魔王を倒しながら強い勇者たちも倒して行ったらいいんじゃない!?とね。」
「つまり、勇者のふりをするんだ。
魔王を倒すためには魔王城を探すんだ。その旅の最中で強い奴を討ち、最終的には魔王を討つ!」
....?
「っ...ならあなたははじめに殺す相手を間違えてるわ。」
「...うん?」
少女は震えながらユウの目を見て答える
「私は強くないもの。少し耳が良くて、花が好きなだけよ。あなたが殺す相手にはふさわしくない。」
少女にとっては最後の命乞いだ。
「...」
少女は怖くてユウの顔を見れない。
震える体をどうにか動かして逃げようか?
それとも死を受け入れるか?
わからないわからない怖い怖い怖い
2人の間に沈黙が訪れる。
すると、
「ふふふ....ははははははは」
途端にユウが笑い出した。
わけがわからなかった。なぜこいつは笑っているのだ。少女のあたまは真っ白だった。
「君、面白いね。たしかにキミは、ボクの夢には微塵も関係なかったや」
少年はクルッと向き直り少女に背を向けた。
...これは、解放されたのか?
少女は自分が解放されたと思い、安堵感から涙が溢た。
が、ユウはまた向き直り、
「...キミ、耳が良いんだって?」
ゾワゾワと、少女の力の抜けた体がまた震え上がる。
「...ふふふスタートダッシュは大成功だ」
♪
「...これ紅茶です」
場所が変わり、2人は赤い屋根の家の中にいた。先ほどユウが放ったであろう風のような攻撃によって部屋の中のものは所々がもといた場所とはあきらかに違う場所にあった。
「やあ、どうもどうも。」
ユウはズズズッと紅茶を啜るが、アツッといってすぐに机に戻した。
「さて、キミも座りたまえ。せっかく仲良くなったんだ。」
「...仲良く?」
「ああ、そうだとも。」
ユウは椅子を指差しながらそう言った。
...仲良くなったと思っているのはユウだけだろう。
「あなた、私を連れて行ってどうするつもり?」
「キミは後ろについてくるだけでいいんだ。...えぇと...名前は?」
「リボンよ。」
リボンは不思議に思う。
なぜ、自分を殺しにきたはずの人と紅茶を飲んで、そして仲間になったのか。
「ははは。そんなに心配しなくても大丈夫。後ろで、音を聞いていてくれるだけで。」
先ほど、ユウはリボンを勧誘したのだ。
自分の世界征服を手伝ってくれ、と。
リボンは断ったらどうなるのかを考え、はい、と答えてしまった。
「えぇと、ユウ、さん?」
「呼び捨てで構わないよ。」
「なら、ユウ。」
「なんだい?」
「...何か計画があるのよね?それを教えてちょうだい。」
リボンは開き直り、ユウに全面協力をしていずれ解放されることを願って、そう聞いた。
「...計画?ボクにそんなものがあると思うかい?」
.....おい。