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ナニモノにもなれなかった転生者

作者: まい

 一発ネタに全力です。


 そのネタ部分で少しでも頬を(ゆる)めて頂けたなら、幸いです。

 おっす! オラ、名前も無い田舎の村人のムスコ!


 名前(なめぇ)はゼクチっちゅうんだ!


 周りのみんなからキツネ顔キツネ顔言われて(へこ)んでっけど、目はパッチリしてっし愛嬌(あいきょう)ある顔してっから、(しれ)ぇ目をされなくて助かってるぞ!



 …………とまあ、こんな挨拶すればオレが誰かなんて分かるわな。


 そう。 地球の日本で命を落とした元オッサンだ。


 死に方は自業自得的な死に方だったから、生前の恨みとかは抱えてない。


 つーか名前のゼクチってなんだよ!


 無理矢理漢字に変換して是口ってか!? つーかゼクチのクチって口だよな!? ゼ(くち)なんてなるならいっそ、ゼロ(ぜろ)の方が厨二的に格好良くて良かったんだけど!!?



 そんな奴だけど、今は生前の記憶を持ったまま中世ヨーロッパのド田舎みたいな所に生まれて暮らしている。


 中世ヨーロッパと言ったが、どうも魔法があるファンタジー世界みたいだ。


 だがこの村には魔法を使える者はいないから、魔法なんて見たこと無いし使い方も分からない。


 ただ村の神父は神のチカラを借りる奇跡って魔法みたいなモノを使えるから、そこでファンタジー世界だなと判断した。




 親から教わった話だが、この世界はどうやら生前にゲーム機で遊んでいたRPGみたいな、ステータスがあるらしい。


 よくある自分にしか見えない空中投影式の。 オレはまだ見たこと無いけど。


 そして技能とかスキルとかは無い世界だが、一定年齢を迎えて初めて、どこの町や村にもある、この世界の神を(あが)める教会で祈りを捧げると、ちょっとした祝福が神からもらえるらしい。


 この祝福を得て初めて、ステータスが見えるようになるんだってさ。


 んで祝福は取るに足りないものばかり。


 肩幅が他の人より少し広くなるとか、座高が高くなる低くなるとか、アホ毛が生えるとか、口が悪くなるとか、声が少し高くなるとか低くなるとか、薄毛に悩まされなくなるとか薄毛に(毛が全部無くなる皮肉的な意味で)悩まされなくなるとか。


 主に身体に関わる変化が起きるそうだ。


 方向感覚が強くなるとか、(かん)が少しだけ良くなるとか等を例とした、身体に関わらない祝福も有るそうだが、かなり珍しいらしい。


 ちなみに父は胸毛が剛毛になる祝福だそうな。


 おかげオレが父に抱き上げられると、胸毛がゴワゴワしてなんか不快だったんだよなぁ。


 それの原因が祝福って、祝福が祝福(ひとのためになる)になってねーじゃん! と知ったその時に絶叫したかった。 ガマンしたけど。


 でも、前世視点から言って容姿的に十分イケる母が「胸毛(そこ)が良い」と言っているから、どうにもモヤる。


 …………え? 母の祝福? 知らん。 男が女にそんな事()くモンじゃねえ(意訳)と、教えてくれないからな。 そんなデリケートなモンなの? 祝福って。


 そう言ったって、母のは予想がつくけどな。 だって1人だけ腰が高いと言うか、足が長いと言うかだし。


 いやそれ以前に、この程度の世界なのにステータスって必要なの? 良く分からん。




 そんなオレも、その一定年齢に達したところだ。


 年齢といえば、中世ヨーロッパ風のド田舎はやはり厳しいな。


 前世ほどの衛生観念とか医療知識や技術や設備が無いから、体力的に弱い子供がバタバタ死んでく。


 もっと小さかった頃に集まって遊んでいた頃の子供達で、生き残っているのはもう半分位だわ。


 こんな体験をしたら、この世界での命の価値がどれだけ安いか、嫌でも教えられて染み付いてしまう。



 ……………………。



 あー、今はそんな時じゃないな。 後であいつ等の墓へ花でも持って、祝福をもらえた報告をしに行くか。




 ダメだ、湿っぽいのは前世含めても苦手だわ。 気分を切り替えていこう。


 さあ! 村の教会へ行くぞオラァ!! 



〜〜〜〜〜〜



 村の教会なんて粗末もいい所で、本当に簡素なもの。


 それでも出来るだけ立派なものをと頑張ったのが(うかが)える、木を掘り抜いた神像が置かれている礼拝堂へ。


 そこにはオレより先に来ていた両親と、準備して待っていた神父の姿。


 神父は中々の苦労人で、口を開くと宗教組織内の権力争いの話ばかりする。


 定期的に行われる礼拝と説法の時にも、説法に反する内部の権力争いを引き合いに出して、そんなのにならないでと語るほど。


 ……そう言うのがイヤで田舎へ逃げてきたんだなぁと、哀れに思った。



 まあそれは置いといて。




 祝福の時間だオラァ!!!


 神父から祈る姿勢の指導が有ったけど、その場面を何度か見かけてるから知ってるぜオラァ!


 神の像の前で膝をついたぜオラァ!


 手を組んで、アゴを引いて、目を(つむ)るんだろオラァ!


 これで何か祈るんだろ? オラァ!


 ナンマイダーナンマイダーナンマイダー とか祈ってみたぜオラァ!



 …………お? おおお?


 見物の両親から嬉しそうな歓声が小さく上がったな。


 祝福をもらえたみたいだな。


 目を開けて立ち上がって、神の像に背を向け……ん? 両親がなんか驚いてるな?


 まあいいや、ちょっくらステータスを開けてみるか。


 開け方はもう居なくなった友達が親から聞いた話として教えてくれたから知ってる。


 心の中で、窓を押し開けるようなイメージで……と。



 うん。 出たね。


 それには、ええと。




名前:ゼクチス


祝福:微笑(ほほえ)みの糸目




 それだけ!?


 ステータス、それだけ!!?


 いやそれ以前にオレの名前って本当はゼクチスなの!? なんでスが無くなってたの!!?


 つーかこの祝福ってどんな効果なん? いや、なんとなく分かるよ。 糸目とかって書いてあるもん。


 でも今確認できないから……あ、神父さんドモっす。


 神父さんがこの時代らしい鏡である、金属を(みが)き上げた結果の反射で見る手鏡を貸してくれた。


 それで手鏡を覗き込むと……うん。


 目を閉じているようにしか見えないのに、今まで通り普通に見えてる不思議は祝福だからと、この際置いとく。



 手鏡に映るオレは、キツネ顔の糸目になってら。 しかも常に微笑みを浮かべてる。


 すっげーーーーー胡散臭(うさんくさ)い顔してる。


 いっつも何か(たくら)んでそうな顔してる。


 この糸目って開かないのかな?


 (おどろ)いたフリをしてみる……目が開いた。


 怒るフリをしてみる……ちょっと怖い感じがするが、こっちも開いたな。


 人差し指を(くちびる)に当てて、シーーな内緒のポーズをしてみる……片目だけ開いたな。




 うん。 全体的に、思いっきり胡散臭い。


 笑顔が胡散臭さを助長してる。


 何考えているか読めない感じで、実に胡散臭い。


 マジで胡散臭い。 我ながら、なんだコイツ。



 …………いや、コイツに似てる顔を見た事あるわ。


 丁度前世のオレ世代。


 オタク達がアニメの強力な魔法の呪文を覚えるのが必須科目だとか言ってたやつ。


 なんだっけ。 オタクの話だと何回もアニメ化やゲーム化した化け物作品で、元はオタク向けファンタジー小説とか言ってたな。


 異様にキラキラした目で今週も凄かったな! とか言い合ってたから、なら1度見てみるか〜とかってなったアニメのキャラ。


 おかっぱ頭で敵側の魔王だったかなんかの神官で、主人公達の敵なクセして共闘したり出し抜いたり、やっぱり敵対したりの変なキャラ。




 …………うん。 見れば見るほど胡散臭いわ。


 胡散臭いって言葉しか出てこないほど胡散臭い。


 こんなので町へ出てみ? オレを見た瞬間から町の警備兵達に確実にマークされて、あまりの窮屈(きゅうくつ)さから折角の町を楽しめないだろうなぁ。




 …………あー、これは一生この村で大人しくしといた方が良いやつだ。


 村の中なら一定の信用と信頼がある。


 もしこんな怪しい風貌(ふうぼう)でここから出ても、外では警戒ばかりされて息が詰まる未来しかないだろう。


 どれだけ裏の意図なんか無いと言い張っても、それが逆効果になってよけいに警戒されたりして。


 ああ、畜生。 この世界を見て回る旅とか面白そうだと思っていたんだがなぁ。


 諦めるかぁ。

 ゼクチスがゼクチと呼ばれるようになったのは、単にゼクチの方が呼びやすいから。


 それでゼクチと言い続けてたから、ゼクチだと認識された。 ただそれだけ。



 主人公のゼクチスはこのまま村で働き、前世の経験を活用してなんとなく村の子供のお守り役兼教師役みたいな曖昧(あいまい)な立場におさまりつつ、時々前世の知識で村の環境を少し改善したりする。


 そんな、なんかよく分からない村人として生涯を過ごしたそうです。






蛇足


 スレ◯ヤーズのゼ□スって、本当に胡散臭い風貌してますよね。


 目が見えてるのが不思議なくらい糸目で、いつでもニコニコ笑顔で暗躍する獣神官。


 なのになんかミステリアスかつ甘いマスクと溶けそうな程に甘い声で人気だとかって、目と耳を疑いましたわ。


 幼心に、なんだアイツって感想しか湧かなかったですし。


 それとあいつの声が石✕彰さんだったからこそ人気になった感じもありますし、別の方が演じていたら人気はどうなったでしょうね?

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― 新着の感想 ―
[一言] あー、スレイ〇ーズ!の。 なっつかしぃ~。 そう言えばその後の本編のお話し、二冊出て止まっちゃいましたね? 確かにあのきな臭い神官って色々と苦労人の所もあるから親近感が…… いやホント、笑い…
[良い点] 大半はなんでもない人体の差異であり、つまり個性でしかないようですね。でも普通はこんなもんですな。 特別容姿や素質に優れたり、逆に先天的な障害があったりするのが生き物。この世界では障害の事を…
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