表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
スキルホルダーになったので、ダンジョンで無双します!  作者: よだれどり星人
1章 『スキルのことがよく分かるスキル』
90/92

「第90話 - 無慈悲な破壊と過去の傷跡」

アキトが砂漠と化した元ゴブリン都市の中心で横たわっていると、レイの足音が近づいてきた。彼女の姿が視界に入ると、アキトは身を起こす。


レイは周囲を見回し、その光景に驚きの表情を浮かべた。しかし、すぐにアキトに視線を向けると、その瞳は氷のように冷たくなった。


「それにしても無茶苦茶したわね?地上でもこんなふうに暴れてみたい?」


彼女の言葉は軽やかだったが、その目はアキトの心の奥底まで見透かすかのように鋭かった。アキトは思わず身震いする。


「そんなことはないよ。全く」


アキトは即座に否定したが、レイの冷たい視線は緩むことはなかった。


「現代人にあるまじき精神性ね。ダンジョンモンスター保護団体なんかがあれだけ声を上げているし、生き物を殺すことなんか、生活の中では無いでしょう?これだけ殺ってよく平然としていられるわね?」


レイの言葉に、アキトは言葉を失う。確かに、現代社会では生き物を殺すことは稀だ。多くの人々は、ダンジョンでモンスターを倒すだけで吐き気を催すという。


「......」


言葉が出ない中、アキトは自分の手を見つめた。その手には、数え切れないほどの命を奪った痕跡が刻まれているようだった。


「俺は九州が地元なんだよ」


アキトは静かに語り始めた。その声には、深い悲しみが滲んでいた。


「ダンジョンから魔物が地上に溢れ出したとき、まだ、中学生だったっけ......今九州はどうなってるんだ?」


「日本国の支配の及ばない、レッドオークの勢力圏よ」


レイの返答は冷静だったが、その言葉の重みはアキトの胸に突き刺さった。


「九州に残った人間はどうなってるんだ?」


「報道ではレッドオークの庇護のもと、ぬくぬく暮らせていることになっているわね」


「実際は?」


「出産の義務化。生まれた子どもの半数は奴らの餌」


レイの言葉に、アキトの表情が歪んだ。彼の脳裏に、忌まわしい記憶が蘇る。


「......たまに夢に見るんだ。レッドオークから逃げてるときの夢を」


アキトの目は遠くを見つめ、その瞳に恐怖の色が浮かぶ。


「燃え盛る街の中......炎よりも暗い皮膚をした巨体が炎の中から歩いてくる......」


彼の言葉に合わせ、周囲の景色が変容していくかのようだった。砂漠は消え、炎に包まれた街並みが浮かび上がる。そして、その中を歩む巨大な影。


「ダンジョンから出てきた奴らが俺達を食うわけでもなく、理由もなく殺していったのを......俺は見てた」


アキトの声は震えていた。過去の記憶が、彼の心を揺さぶる。


「それが理由?」レイが尋ねる。


「いや......うーん......親や友人ともそこで死に別れたけど......別に憎んでるわけじゃない。ただ、ダンジョンのモンスターと一緒に生きていくことはありえない。だから殺さないといけない。そう......思っているんだと思う」


アキトの言葉には、悲しみと諦めが混ざっていた。彼の心の奥底に眠る感情が、少しずつ表面化していく。


アキトは立ち上がると、2層に残っている4つのゴブリン共の集落を順番に指さした。そして、炎爆の矢、雷撃の矢、氷河の矢、緑樹の矢を一本ずつ手に取る。


「残りも殺していいか?」


「ええ」


レイの許可を得て、アキトは念力で矢を分身に発射する。15体の分身の間で矢が回されていく。その光景は、まるで複雑な糸操りのようだった。


「打て」


アキトの命令と共に、4つの集落にそれぞれ矢が発射された。


瞬間、世界が変容する。


まず、恐るべき雷鳴が響き渡った。アキトが今まで経験したことのない轟音だった。地響きに、彼の体は恐怖で震えた。雷撃の矢が攻撃した集落は、いや通った軌道は黒焦げで、生命の痕跡が残っていないことは確認するまでもなかった。


次に、猛烈な熱を帯びた炎が地面を這いずり回った。その後、地表を蹂躙した炎は見たこともないほどのサイズの火球となって空に舞登っていく。炎爆の矢の威力は、アキトの予想をはるかに超えていた。


その隣では、標高数百メートルはあろうかという氷山ができていた。氷河の矢が生み出した氷の塊は、まるでその場所を別世界に変えてしまったかのようだった。


さらに隣では、数十メートルもの長さのトラックのような太さをした木が無数にうごめいていた。それらは地面を掘り返し、叩きつけている。緑樹の矢の力は、自然の怒りを体現しているみたいだった。


アキトは呆然と、自らが引き起こした破壊の光景を見つめていた。


「......魔石の回収ってできるか?」


「粉微塵でしょ」


レイの返事に、アキトは深くため息をついた。


「じゃあ、帰るか」


彼は冒険者カードを取り出し、眺める。


冒険者カード

-------------------

プレイヤーランク ★★

プレイヤーレベル 42→45

 次のレベルまで 6,347

 累積経験値 49,348 → 65,543

ステータス 0

 HP 141 → 144

 MP 170 → 209

スキル 0

『スキルのことがよく分かるスキル』 -

『矢をたくさん打てるスキル』 ★

『魔法がチョットだけ大きくなるスキル』 ★

『火魔法スキル』 ★

『ステータスを偽装するスキル』 -

『肉体の損傷を再生するスキル』 ★★

『念力が使えるスキル』 ★★

『分身を作るスキル』 ★★

-------------------


一切の生命が失われたゴブリン共の都市を後にしながら、アキトは自分自身がどこに向かっていこうとしているのか思いを巡らせていた。

■続きが読みたいと思った方は

 どうか『評価』【★★★★★】と『ブックマーク』を......!

 ポチッとお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ