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スキルホルダーになったので、ダンジョンで無双します!  作者: よだれどり星人
1章 『スキルのことがよく分かるスキル』
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「第89話 - 壮絶なる魔法の嵐」

『気を使えるようになるスキル』を持ったゴブリンとその分身たちは、互いをかばいながら、防御に徹してきたが、疲労のあまり膝をついていた。とはいえ、数分攻め続けてもまだ俺は気ゴブリン、その分身たちを一匹も倒せていなかった。


それを20体前後のアキトの分身で取り囲む。


集落はアキトの魔法矢による攻撃によって焼き尽くされ、彼ら以外に生き残っているゴブリンはもういない。


アキトは『スキルのことがよく分かるスキル』でスキルを分析する。何度見ても入手条件は『より優れた気の運用で殺すこと』だった。ふざけた話だ。どうやって手に入れろというのか。格闘戦で倒せってか?


(さっさと殺して帰りたいんだが、何かいい方法はないだろうか)


彼は考えを巡らせる。とりあえず、全方位から矢を打ち込んでみることにした。


炎爆の矢、雷撃の矢、烈風の矢といった、攻撃系の矢を打ち込む。


炎爆、雷撃は事前に気で魔法が破壊されてしまうため威力が出ないのだが、烈風の矢は、気で破壊される前に発動できると、かまいたちが奴らの皮膚を切り裂いてくれる。


緑樹の矢もいい。物理的な蔓として魔法が発現するため、気ゴブリンたちの動きを明確に阻害してくれる。ただし、何か気を注入するような技があるのか、気ゴブリンが力むと、蔓が空気を入れすぎたタイヤのように弾け飛んでしまう。


(うーん何か良い方法はないか......矢もなくなってきた)


アキトは溜息をつく。


「分身、何人か矢を増やす方に回ってくれ」


彼の指示で、分身が後方で矢を増やし始めている。『念力が使えるスキル』による念力で空中に発射した矢を回収することで、複利で矢を増やしていくスタイルだ。


「矢がなくなりそうだ!矢をくれ!」


分身の一人が矢を求めている。


「今渡す!そのまま発射していけ!」


アキトは増やした矢を念力でその分身の方に飛ばしていき、分身は念力でその矢をそのまま気ゴブリンに発射した。


そうすると奇妙なことが起きた。


今までこちらの攻撃を安定して凌いでいた気ゴブリンたちの体勢が、急に崩れ始めたのだ。


「今、何が起きた?今の矢を放った奴は誰だ!?」


「確かではないが、緑樹の矢に急に足を取られるようになったな」


「おい!今俺からもらった緑樹の矢なんだが、なんか強力だった気がするぞ?何かしたのか?」


アキトとアキトの分身の声が入り混じって、状況が掴みづらくなってきた。


「この矢を念力で渡すから、そのまま念力で発射してみてくれ!」


アキトは増やした烈風の矢を分身の一人に念力で矢を渡す。分身は念力スキルで受け取るとそのまま念力スキルで矢を発射していく。


見ていると、今まで皮膚に傷をつけるのがせいぜいだったのに、かなり深く傷が入るようになった気がする。というか気ゴブリンの数匹は耳が吹っ飛んでいる。


「お、おい、まさか...」


「これやばいんじゃないか?」


「や、矢が無いんだろ?ちょっと試してみないか?」


アキトは矢がなくなった分身を集めて、烈風の矢を手で持ち、念力スキルで発射した。


「俺が烈風の矢を念力で発射すると、3本に増える」


そのままアキトは念力で軌道をくるりといじって、もう一人の自分の方に矢を向けた。もう一人のアキトは念力で軌道を調整しながら、受け取ると引き続きくるくる軌道を周回させる。


「や、矢が9本になった......」


彼らは顔を見合わせ頷くと、最後の一人のアキトに矢を渡す。


「おっと、多いな......」


3人目のアキトが軌道を周回させると、明らかに矢の数が増えた。おそらく27本。


「こ、これは......」


「あ、ああ......スキルが、スキルの効果が重複している」


「お、おい、はやくゴブリンに発射してくれよ!」


「お、おう」


アキトらはその数十本の矢をゴブリンに向けて発射する。気で破壊される前に火魔法で点火された烈風の矢は、数匹の気ゴブリンの腕を切り落とした。


「「「「「うおおおおおおお!!!!」」」」」


アキトたちは歓喜した。分身によってとんでもないことが起きていることに気づいたのだ。


「5体の分身で少しの間気ゴブリンを完全に抑え込め!残りの俺で連携するぞ!12体は『矢をたくさん打てるスキル』をオフにしろ!27本以上の同時コントロールはキツイ!」


15人のアキトの間を、くるくると烈風の矢が回っていく。とんでもないことが起ころうとしていることを、彼らは予感していた。


たった1本の烈風の矢。100万円の矢に『矢をたくさん打てるスキル』、『矢をたくさん打てるスキル』、『矢をたくさん打てるスキル』がかかり、2700万円相当の使い捨て攻撃に膨れ上がっている。


その27本の矢それぞれに『魔法がチョットだけ大きくなるスキル』と『魔法がチョットだけ大きくなるスキル』と『魔法がチョットだけ大きくなるスキル』と『魔法がチョットだけ大きくなるスキル』と『魔法がチョットだけ大きくなるスキル』......以下省略がかかり、込められた魔法の規模・威力が増加している。


「15人の俺を行き来したこの矢には『矢をたくさん打てるスキル』が3回、『魔法がチョットだけ大きくなるスキル』が15回発動しているはずだ。『魔法がチョットだけ大きくなるスキル』で魔法の威力が2倍になると仮定すると、2x2x2x2x......は約3万倍?」


ちょ、ちょっと......15人はやりすぎじゃないか?


アキトは混合魔法を使ったときのことを思い出す。いや、所詮風魔法なんて、かまいたちみたいなもんだし、気にしなくていいだろうと考える。だって、もう今日だけで1万本近く放ってるんだぜ?大したことないんじゃね?


彼は烈風の矢を気ゴブリン共に向けて発射した。


烈風の矢が目にも止まらぬ速度で発射される。


「あっ......」


アキトの口から、無意識に声が漏れた。世界がスローモーションに見えた気がした。


急に戦場から音が消え、眼前の光景が......石造りの建物が、気ゴブリンたちが、藁の屋根が......あらゆるものが数センチ浮かび上がり......さらにそのすべてが砂粒に還元されて静かに、静かに崩れ落ちた。あまりの光景に、アキトは冷や汗が吹き出すのを感じる。


すべての分身が念力魔法矢マシンガンをやめている。気ゴブリンがいなくなってしまったからだ。


アキトは廃墟となったゴブリンの都市を歩いていく。十数メートル進んだところから、地面の感触が変わったことに気づく。


「砂だ......全部、全部砂になってしまった」


烈風の矢の魔法が発動した場所より後方数百メートルにわたって、すべての物質が無数のかまいたちを浴びることで、細かい粒子にまで還元されてしまったのだ。


アキトの目の前には、見渡す限り砂の砂漠が広がっていた。先ほどまでゴブリンの都市があった場所......そこにはもはやその面影すら残っていない。


建物は跡形もなく崩れ去り、瓦礫の一つ一つに至るまでが砂と化している。まるで、この世界から都市が消し去られ......数千年、数万年が経過したような......


足を踏み入れた瞬間、砂に足がとられ、地面にめり込む。灰となったゴブリンが自分の足を掴み、地獄に引きずり込もうとしているように感じた。


「......悪くないな」


アキトは呟く。自らが生み出した破壊の光景に、感動していた。


かつてここに存在したすべてのものが、一瞬にして砂塵と化したのだ。真っ白な灰のような砂で構成される砂地。そこに生命の、文明の痕跡はない。いや、文明どころか自然の営為すら感じられない。これはもはや、神が世界を始める前の光景......眼の前の光景はそれほどのいびつな無機質さを感じさせるものだった。


風が砂を巻き上げ、アキトの髪をなびかせる。その感触は、死神の息吹のようだった。


砂の上に、アキトは背中から倒れ込んだ。自らの持った力の大きさに、彼の心臓の鼓動が速くなるのを感じる。


頭上の太陽が、砂漠を照らし続ける。まるで、彼の罪を暴き出すかのように。


アキトは拳を握りしめる。人生が決定的に変わってしまった感覚を覚えていた。


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