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スキルホルダーになったので、ダンジョンで無双します!  作者: よだれどり星人
1章 『スキルのことがよく分かるスキル』
85/92

「第85話 - 無双の嵐」

「あー......もうしばらく動きたくねぇ」


アキトは呟く。

さすがの彼も、ここまでの戦闘で体力を......いや、精神力を使い果たしていた。


『肉体の損傷を再生するスキル』をなんとか手に入れたこと。

一方的にゴブリンを嬲り殺しにする予定が、『気を使えるようになるスキル』にボコボコにされるは、呪いで右足が腐り落ちるわ。

『念力が使えるスキル』を持つゴブリンとの死闘。

空高くまで飛び上がり、必死の思いでゴブリンの体をねじ切ったあの瞬間。

そして、落下する最中にオーブを掴み、ゴブリンの家に叩きつけられた衝撃。


アキトの脳裏に、激しい戦いの記憶がよみがえる。

全身に走る痛みと疲労感が、彼の意識を蝕んでいく......ってダメだダメだ。ここは敵地だぞ。


「MPも切れそうだから、とりあえず、100単位でゴブリンを殺していって、レベルアップでMPを回復させないと」


アキトは呟きながら、ホルダーから矢を取り出そうとする。

しかし、そこで彼は気づいてしまう。


「あれ......?」


ホルダーに矢が一本もない。

というか、ホルダー自体がぶっ壊れている。


「そりゃそうか......」


アキトは苦笑する。

あれだけの激戦を繰り広げれば、装備が壊れるのも無理はない。


「あ、でも魔導ポーチは大丈夫だったか。いや、残ってなかったら泣いてるって。1000匹分のゴブリンの魔石が入っているんだぞ。買い取り価格で100万円は超えるんじゃないか?壊れたなんて言われたら泣くぞ?」


アキトは安堵の息をつく。

冒険者にとって、魔導ポーチは命綱のようなものだ。

それが無事だったことが、何よりの救いだった。


「それにしても装備品が壊れるような冒険って、他の冒険者はどうやって対応しているんだろうな」


アキトは首をかしげる。

過酷な戦いの中で、いかに装備を維持するか。

それは、冒険者にとって重要な課題なのかもしれない。


「よしよし、まだありそうだ」


彼は魔導ポーチを探る。

冒険に来る前に、魔法が込められた矢を大量に格納しておいたのだ。


「1万匹のゴブリンの集落を襲撃しようというのに、数百本程度の矢しか持っていかないなんてありえないからな。作っておいてよかった」


アキトは数十本の矢を手に取ると、ゴブリンたちに向かって放つ。


「『念力が使えるスキル』......行け!」


彼の意思に呼応するように、矢が浮き上がり、ゴブリンの方に射出される。

『矢をたくさん打てるスキル』と『魔法がチョットだけ大きくなるスキル』のコンボにより、矢は3本に増え、込められた魔法も強化されている。


「ギャアア!」


数匹のゴブリンが、矢に貫かれて息絶えた。

苦痛の悲鳴が、戦場に木霊する。


「......こりゃあいい。火魔法よりも数倍使いやすいな。このままいくか」


アキトは満足げに呟くと、手に持つ矢を次々とゴブリンに向けて放っていく。


大工のバイトのときに見た、ロール釘と鉄砲を思い出す。ロールケーキのように束になった釘を、鉄砲とよばれる釘打ち機で次々打ち出していくことで、人の手でやるよりも数倍早く釘を打つことができるのだ。


要はマシンガンである。念力スキルによって、念力魔法矢マシンガンが完成したのだ。


アキトは手に持てるだけの魔法矢を持ち、構えて、ゴブリンの群れに向けて容赦なく、念力で矢を発射していく。

『念力が使えるスキル』の力で、矢は彼の意思に呼応し、生物のように宙を舞う。

『矢をたくさん打てるスキル』と『魔法がチョットだけ大きくなるスキル』の相乗効果により、一本の矢が三本に増え、込められた魔力も強化される。

幾重にも重なり合った魔法の力が、破壊的な威力を生み出していた。


「ドドドドドドド!!」


念力で発射する反動にアキトの体にも力が入る。

存在しない銃口から魔力の火花が散っているようにも感じられる。


手元からは7.62mm NATO弾をM60機関銃で発射するようなスピードで矢が発射されていく。

炎と雷、氷と風の魔法が渦を巻きながら、ゴブリンの群れへと降り注ぐ。


念力の力によってアキトは1匹単位でゴブリンを狙って倒すことができるようになった。

ゴブリンの頭を狙えば脳天を貫き、胸を射れば心臓を穿ち、腹を狙えば腸を断ち切り、発動する魔法効果が周辺のゴブリンをまとめて殺害していく。

彼は微妙に狙いをずらしながら、無数の矢をばらまいていく。

逃げまどうゴブリンの群れをすりつぶしていくように、丁寧に魔法を炸裂させていく。


「ギャアアアア!!」

「ウボォォォ!!」


凄惨な断末魔が、戦場に木霊する。

頭蓋骨を破壊された者、胸腔をえぐられた者、腹腔を穿たれた者。

ゴブリンたちは一瞬で命を奪われ、その死体が灰になっていく。


「バタンッ!」

「ガシャーン!」


ゴブリンの悲鳴だけでなく、建物が倒壊していく音も響き渡る。

魔法矢は、ゴブリンだけでなく建物をも容赦なく破壊していた。

脆い木造の壁は砕け散り、土の床は抉れ、石造りの柱は崩れ落ちる。

まるでハリケーンが通り過ぎたかのように、集落は瓦礫の山と化していく。


血も肉片も灰になって消えていくため、魔石混じりのがれきだけがのこっていく。

一面に広がる阿鼻叫喚の地獄絵図など、数瞬で消えていく儚い光景だ。

そして、その死と破壊の嵐の中心で、アキトは歓喜に震えていた。


「ははははは!!ざまぁみやがれ!!この念力スキル、ハンパじゃねぇぜ!!」


彼の瞳は、復讐の炎で燃え上がっている。

ゴブリンに痛い目に合わされてきた恨みを、一気に発散しているようだ。


魔法矢の威力もさることながら、MPの消費効率の良さも凄まじい。

アキトは数多の魔法矢を放ちながらも、まだ充分な魔力を残していた。


(こりゃあ楽勝だ。どんどん殺って、レベルアップでMPを回復しながら進軍すればいい)


彼は有頂天になりながら、さらに矢の雨を降らせ続ける。

ゴブリンの集落が、一瞬にしてスクラップと化していく様を愉しむかのように。


アキトは何度もレベルアップの感覚を、彼の体に感じながら次々と区画を移動し、破壊の限りを尽くしていく。


「どれくらいレベルアップしたかな?」


アキトは冒険者カードを確認する。


冒険者カード

-------------------

プレイヤーランク ★★

プレイヤーレベル 28

 次のレベルまで 7

 累積経験値 13413

ステータス 0

 HP 127

 MP 17/65

スキル 0

『スキルのことがよく分かるスキル』 -

『矢をたくさん打てるスキル』 ★

『魔法がチョットだけ大きくなるスキル』 ★

『火魔法スキル』 ★

『ステータスを偽装するスキル』 -

『肉体の損傷を再生するスキル』 ★★

『念力が使えるスキル』 ★★

-------------------


「レベルアップによるMP回復がやっぱりいちばん美味しいな。休むより攻めるほうが効率的ってわけだ」


2~3分にも満たない時間で、アキトは1000匹近くのゴブリンを抹殺していた。


「楽しい時間はもう、終わりか」


アキトの『スキルのことがよく分かるスキル』は恐ろしい敵の気配を近くに感じていた。


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