「第84話 - 決死の覚悟」
「ギャアアア!!」
ゴブリンたちの悲鳴が、戦場に響き渡る。
彼らの足元から、突如として炎の柱が吹き上がったのだ。
『念力が使えるスキル』を持つゴブリンが、勢いよく空に吹き飛ばされていく。アキトが地中を通じて『火魔法スキル』を発動したのだ
「それきた!」
アキトは雄叫びを上げると、炎の翼を作り出し、そのゴブリンに向けて全速力で飛んでいく。
MPで作り出した炎のロープを、念力ゴブリンの体に巻き付け、空高く舞い上がる。
「ああ!馬鹿みたいなMP消費だ!」
アキトは歯噛みする。
自身を飛ばすだけでもかなりのMPを消費するのに、最高速度で2人分の重さを背負って舞い上がっているのだ。
スキルが想定を超えた出力にきしんでいるような感覚すらある。
「おらあああああ!!!」
アキトは咆哮を上げながら、ロープに巻き付いたゴブリンを思い切り上に引き上げる。
体と魔力操作を組み合わせた、離れ業のような動きだ。
念力ゴブリンが、空高くに投げ出される。
アキトもまた、200メートルは超えているんじゃないかというほどの高度まで到達していた。
『高度100メートル以上で、体をねじ切って殺す』ここから100メートル落下するまでに念力ゴブリンを倒さないといけない。
(自由落下の速さって何秒だ!わからん!数秒以内にねじ切って殺せばいい!)
アキトは焦燥感に駆られる。
彼はゴブリンの両足に思い切りしがみつくと、自分ごとMPのロープで縛りつけ、氷の矢で自分ごと氷結させた。
「グオオオオ!!」
念力ゴブリンが怒りの声を上げる。
必死の形相で、アキトを殺そうとスキルを発動させてくる。
「ぐっ......!」
アキトは苦痛に顔を歪める。
内臓を直接いじられて、小腸でウインナーを作られているような感覚があった。
「あああ!!!絶対許さん!」
アキトは憤怒の炎を燃やしながら、ゴブリンの上半身に巻き付けたロープの方に、烈風の矢を複数貼り付ける。
そして、それを一気に発射した。
烈風の矢の加速力によって、ゴブリンが擬似的に空中に固定される。
「グギャオオオオオ!!!」
念力ゴブリンは空中で牛裂きの刑のような状態になっていた。
まるで、時が止まったかのような状態だ。
「よし!これで終わりだ!」
アキトは勝利を確信する。
彼は自身の身体から火魔法を噴射し、回転力をかけていく。
固定されたゴブリンの上半身に対して、アキトはゴブリンの下半身と一緒に凍りついている。
自分ごと下半身を、ものすごい勢いで回転させていくのだ。
「うおおおおお!!!」
アキトの雄叫びが、大気に轟く。
「ギャアアアア!!!」
アキトはMPを湯水のように消費し、ゴブリンの胴体をねじ切っていく。
ミチミチと筋繊維がちぎれる感触が、急になくなったのもつかの間、ゴブリンの胴体がねじ切れ、アキトの体が勢いで急回転をする。
「はっは!やったぞ!」
アキトは歓喜の声を上げる。
念願の『念力が使えるスキル』の獲得条件を、ついにクリアしたのだ。
ゴブリンの体が灰になり、上半身だった場所にオーブが残る。
アキトは手を伸ばそうとするが、そこで自分の身体が落下していることと、凍りついていることに気づいた。
「しまった!」
彼は慌てて、火魔法を炸裂させる。
自分の体を焼き、氷結を溶かしながら、必死でオーブに手を伸ばす。『肉体の損傷を再生するスキル』があるから、やけどなんて気にしなくても良い。
「掴んだ!」
アキトはオーブを握りしめると、そのまま体に吸収した。
その瞬間、彼の身体はゴブリンの家の屋根に叩きつけられた。
「ぐはっ!!」
屋根を抜け、床を抜け、ドスンと地面に落ちる。
全身が傷だらけで、血だるまになっている。おまけに腸がウインナー状態だ。
(大丈夫だ。『肉体の損傷を再生するスキル』で回復できる範囲......『スキルのことがよく分かるスキル』もそう言ってる......気がする......)
アキトは激痛に全身を震わせながら、なんとか起き上がった。
冒険者カード
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プレイヤーランク ★★
プレイヤーレベル 24
次のレベルまで 196
累積経験値 8653
ステータス 0
HP 123
MP 2/49
スキル 0
『スキルのことがよく分かるスキル』 -
『矢をたくさん打てるスキル』 ★
『魔法がチョットだけ大きくなるスキル』 ★
『火魔法スキル』 ★
『ステータスを偽装するスキル』 -
『肉体の損傷を再生するスキル』 ★★
『念力が使えるスキル』 ★★
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