「第83話 - 反撃の狼煙」
『スキルのことがよく分かるスキル』でゴブリンたちが近づいてきているのを感じる。
死が、少しずつアキトに迫ってきていた。
(き、緊急避難!)
アキトは咄嗟に、『火魔法スキル』でホルダーのスーパーバリアの矢を反応させ、自分をバリアで覆った。
そして、同じく火魔法の力で自分の身体を吹き飛ばし、無理やり建物の方に突っ込んでいく。
目を瞑って、アキトは数十メートルも突き進む。
無理をする分、MP消費は大きい。10以上ものMPを一気に使い果たした。
いくつもの建物を倒壊させたことで、土煙が立ち上る。
アキトの姿を隠すように、瓦礫の山が築かれていく。
「はぁ......はぁ......!」
息を整えながら、アキトは咳き込む。
血が絡んだ痰を、彼は吐き捨てた。というかこんな傷でもなおるのか。
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プレイヤーランク ★
プレイヤーレベル 24
次のレベルまで 611
累積経験値 8238
ステータス 0
HP 123
MP 22/49
スキル 0
『スキルのことがよく分かるスキル』 -
『矢をたくさん打てるスキル』 ★
『魔法がチョットだけ大きくなるスキル』 ★
『火魔法スキル』 ★
『ステータスを偽装するスキル』 -
『肉体の損傷を再生するスキル』 ★★
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あ......★2なのね。★1つだったら多分死んでたわ。これ。
「なんだ。あいつら。あんなスキルがあって、あんな使い方されたら、普通に死ぬところだったじゃないか。絶対許さん」
アキトの中で、憎悪の炎が燃え上がる。
考えうる限り、最も残酷なやり方でゴブリンたちを殺してやりたい。
(『念力が使えるスキル』は欲しい。というか必要なスキルだ。どうしたら手に入る?)
アキトは『スキルのことがよく分かるスキル』で、そのスキルの獲得条件を確認する。
「『高度100メートル以上で、体をねじ切って殺す』......だと!?」
(どうやったらそんなことができるんだよ!!!)
アキトは絶望感に打ちのめされる。
到底、自力では達成できそうにない条件だった。
そんな彼の葛藤をよそに、崩れた建物の残骸を乗り越えて、ゴブリンたちが近づいてくる。
アキトの生死を確かめに来たのだろう。
苛ついたアキトは、矢を束ねて混合魔法として放つ。
炎と雷、風が渦を巻き、ゴブリンたちを一掃していく。
非戦闘員のゴブリンを含め、数十体ものゴブリンが倒れていった。
その数の多さに、アキトはレベルが上がったのを感じる。
同時に、MPが少し回復したのもわかった。
「......MPをガッツリ使えば、無理ってわけでも無いのか」
アキトは呟く。『念力が使えるスキル』......自分を追い詰めたこのスキルをどうしても手に入れたいと感じていた。
だが、すぐに我に返る。
(MPを使い切ってしまえば、こういう緊急避難もできなくなる。矢の発射すらできなくなるぞ。本当に大丈夫か?)
彼は自問自答する。
しかし、答えはもう決まっていた。
「いや、やろう。攻める。攻めなくちゃ。この都市をなんとしても滅ぼすんだ」
アキトは立ち上がる。
その瞳に、強い意志の光が宿っている。
「そのためにも『念力が使えるスキル』......これは必ず手に入れてやる」
彼は心に誓う。
アキトはゴブリンが固まっている方向に向かって走り出す。
向こうも、先程の攻撃でアキトが死んでいないことに気づいたのか、『気を使えるようになるスキル』を持ったゴブリンたちも彼に向かってきていた。
「おらよ!!!」
ゴブリンどもと向かい合った瞬間、アキトは10本以上の矢を発射する。
雷撃が、炎と爆風が、氷結が、鞭のような蔓が、ゴブリンめがけて炸裂していく。
「「ゲオル・ジガ!!」」
気を使う分身ゴブリンたちも負けじと、何らかの技を放ってくる。
互いの攻撃がぶつかり合い、凄まじい爆発が起こる。
爆風が横殴りに吹き荒れ、複数の建物が崩れ落ちていく。
だが、ゴブリンどもの被害は限定的だ。
アキトの放った魔法を、彼らは巧みに防いでいるのだ。
(気って、なんでもありなのか!テレビ番組じゃないんだぞ!『気を使えるようになるスキル』、ズルすぎないか!?)
アキトは愕然とする。『気を使えるようになるスキル』の万能さに、彼は度肝を抜かれていた。
「だがな、本命はそこじゃないんだよ!」
アキトが叫ぶ。
その時だった。
「ギャアアア!!」
ゴブリンの悲鳴が上がる。
彼らの足元から、炎の柱が吹き上がったのだ。
『念力が使えるスキル』を持つゴブリンが、勢いよく空に吹き飛ばされていった。
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