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スキルホルダーになったので、ダンジョンで無双します!  作者: よだれどり星人
1章 『スキルのことがよく分かるスキル』
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「第79話 - 死を誘うコンボ」

アキトは意識を取り戻した。頭がズキズキと痛む。どうやら長く意識を失っていたわけではなかったようだ。


彼の周りには依然として数枚のスーパーバリアが残っていた。淡い青色に輝くそれらは、かろうじてアキトの命を守り抜いたのだ。


(数枚以外はすべて破られたということか......?)


無数のスーパーバリアに覆われていたアキトは助かったものの、爆風の衝撃で数百メートルも吹き飛ばされていた。全身が痛みを訴える。


「嘘だろ......」


アキトは信じがたい光景を目の当たりにする。喉がカラカラだ。砂埃が舞い、喉の奥まで痛い。


草原を見渡すと、爆発の爆心地がすぐにわかった。


数十メートルにわたって、地盤ごとひっくり返され、草木はなぎ倒されている。まるで巨大な隕石でも落ちたかのような惨状だった。


大地が抉られ、美しい草原だった場所が茶色い地層でむき出しになってしまっている。地層の縞模様が、まるで地球の歴史を物語るかのように露出していた。


爆風で木々が根こそぎ吹き飛ばされ、無残に折れ曲がっている。太古の巨人が通り過ぎたかのような光景だ。


土砂が舞い上がっているのか砂っぽい。アキトは咳き込む。


緑あふれる草原は一変し、まるで戦場のような様相を呈していた。生命の息吹を感じさせていた大地が、一瞬にして死の色に染まったのだ。


「レイ......!」


アキトは焦燥感に駆られる。心臓が高鳴る。


レイの安否が気がかりだった。彼女の姿が見えない。最悪の事態を想像し、アキトの胸が締め付けられる。


彼は『火魔法スキル』で炎の翼を作り出し、一気に爆心地へと向かった。


炎の翼を羽ばたかせ、爆風で乱れた大気を切り裂きながら疾走する。


(尋常じゃない威力だった......)


アキトは爆発の規模に戦慄する。冷や汗が背中を伝う。


これまで放ってきた混合魔法による爆発と同じか、それ以上の破壊力だった。


正直、自分がこんな攻撃をくらう立場になるとは思ってもいなかった。と、同時に敵の攻撃に対してあまりにも無力である自分にイライラする。


爆心地の近くまで来ると、炎の柱が立ち昇っているのが見えた。


「レイ!?」


オレンジ色に輝く炎の中に、レイの姿を、いや、炎そのものと化したレイを見つけた。アキトは目を疑う。


「焦ったわ。あなた、目に見えないくらい遠くまで吹き飛ばされちゃったし」


レイは涼しい顔で言う。その声には、かすかな安堵の色が混じっていた。


彼女は爆心地の只中にいながら、びくともしていない。炎に包まれた姿は、まるで神話に登場する火の精霊のようだ。


「......レイは、全然大丈夫そうだね」


アキトは安堵の息をつく。思わず笑みがこぼれる。


レイが無事でいてくれたことが何よりも嬉しかった。胸の奥で温かいものが広がる。


「全然ってことはないわ。『紅蓮魔法スキル:精霊化』を使わないと死んでいたわ」


レイが告げる。その声には少しだけ疲れが滲んでいた。


「精霊化?」


アキトは聞き慣れない言葉に首を傾げる。好奇心が湧き上がる。


「自分の体をMPによって生み出された魔法物質に変換するのよ。あらゆる物理攻撃を無効化できるわ」


レイは説明する。その口調には、少しだけ自慢げな調子が混じっていた。


「......★3って異次元だなぁ。というか、レイがすごいのか」


アキトは感嘆の息を漏らす。★3つのスキルを持つ冒険者の力は、彼の想像を遥かに超えている。畏怖の念すら覚える。


「どちらかしらね。あなたも生き残れたのね」


レイが言う。その声には安堵と、かすかな驚きが混じっていた。


「もう、外が見えないくらいスーパーバリア張ったからね......」


アキトは苦笑する。過剰なほどのスーパーバリアを展開していたおかげで、爆風から身を守ることができたのだ。自分の慎重さに感謝しつつ、少し恥ずかしくもあった。


「ゴブリンどもは?」


アキトが尋ねる。周囲を警戒しながら、敵の気配を探る。


「ゴブリンだったの?」


レイは驚いた様子だ。眉をひそめる。


「そうか......ゴブリンだよ。『空気を液体にするスキル』で液体化した空気を『ほんのり熱くなるスキル』で一気に熱くして、爆発させたんだ」


アキトはゴブリンの恐るべき戦術を説明する。その声には、恐怖と尊敬が入り混じっていた。


「とんでもないことをするわね......ここの2層、実力のある冒険者が結構やられて、ほとんど誰も入らなくなったのよ」


レイが呟く。その瞳に、かすかな不安の色が浮かぶ。


「......そうなの?」


アキトは驚愕する。2層のダンジョンに、そんな危険が潜んでいるとは知らなかった。冷や汗が額を伝う。


(なら止めてくれよと思わないでもないが、勝手に別にこのダンジョンで待ち合わせすると決めたのも俺なのでぐうの音も出ない。下調べも別にしてなかったし......)


アキトは後悔の念に駆られる。もっと慎重に行動するべきだった。まぁ切り替えよう。自分を奮い立たせる。


「この攻撃は自爆だったのか......ゴブリンたちが刺し違えてでも俺を殺そうとした?」


アキトは疑問を口にする。考えれば考えるほど、状況が不可解に思えてくる。


「いや、そうとは思えない。根拠はいくつもある」


彼は状況を分析し始める。頭の中で、パズルのピースを組み合わせるように情報を整理していく。


「まず、あまりにも贅沢な攻撃だ。『気配を消すスキル』『空気を液体にするスキル』『土の中を自由に移動できるスキル』『ほんのり熱くなるスキル』......どれも相当強力なスキルだ」


アキトは敵の持つスキルを列挙する。それぞれのスキルの強力さを考えると、背筋が寒くなる。


「これだけのスキルを持ったゴブリンたちを、使い捨てにするとは思えない」


彼は首を振る。あまりにも無駄な戦力の消耗だ。戦術的に考えても、合理的ではない。


アキトは爆発で出来た穴を見つめる。数メートルもえぐれ、地盤ごとひっくり返っている。おそらく、液体になった空気が地面に染み込んだせいだろう。


(地中に潜っていたとしても、助かったとは思えない)


彼は考える。爆発の衝撃で、トンネルごと崩れ落ちたか、潰れてしまったはずだ。生存者がいるとは考えにくい。


アキトは『スキルのことがよく分かるスキル』を起動し、周囲を探る。意識を研ぎ澄ませ、微かな気配も逃さないよう神経を集中させる。


「......いた」


アキトの意識が、ある場所に引き寄せられる。


最大規模1万匹近くのゴブリンが集まる集落......いや、もはや街のような規模だ。遠目に見ても、人工物が集中している場所がわかる。


アキトはその集落を睨みつける。眉間にしわを寄せ、歯を食いしばる。


「何がいた?」


レイが尋ねる。その声には緊張が滲んでいた。


「さっきの奴らだよ。『気配を消すスキル』『空気を液体にするスキル』『土の中を自由に移動できるスキル』『ほんのり熱くなるスキル』......全員あの集落にいる」


アキトは敵の存在を告げる。その声には、怒りと焦りが混じっていた。


「へぇ......!」


レイは興味深そうに呟く。その瞳に、戦意が灯る。


アキトはさっきの戦闘時、『空気を液体にするスキル』の入手条件を確認しようとしたのだ。我ながら、優先順位を間違えたと反省しているが......重要なヒントが得られた。


「さっきのゴブリンたちな、スキルオーブの入手条件がなかったんだよ」


アキトが言う。その声には、発見の喜びと同時に、不安も滲んでいた。


「......それはおかしなことなの?」


レイは怪訝な顔をする。彼女の眉が寄る。


「そう、初めてだった。どんな個体にも入手条件はある。どれも偶然満たすには難しすぎる条件だけど、必ず存在しているんだ」


アキトは首を振る。これまで見てきたモンスターには、全てスキルオーブの入手条件があった。例外など一つもなかったのだ。


「奴らは殺してもスキルオーブを落とさない存在だったってことね」


レイが合点する。その声には、事態の重大さを理解した色が滲んでいた。


「そうだ......見つけた。『分身を作るスキル』。あの中にいるぞ」


「奴が作った分身が、捨て身で俺達を殺しに来たんだ」


アキトの言葉に、レイの表情が引き締まる。二人の間に、緊張が走る。


ゴブリン大集落と、そこに潜む強力なスキルの持ち主。未だ見ぬ強敵の存在に、二人の冒険者は身構えるのだった。

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