「第78話 - 未知なる脅威」
ダンジョン2層の薄暗い通路を、アキトとレイは慎重に歩を進めていた。先ほどの激戦で倒した500匹以上のゴブリンの焦げたにおいが周囲に漂っている。魔導ポーチの中では、戦利品の魔石がカチカチと音を立てていた。
「で、次は何をするつもり?」
レイが少し退屈そうに尋ねた。その真っ赤な瞳は、まだ次の戦いを求めているようだった。
「ああ......あれ?」
アキトは突然立ち止まった。首を傾げ、眉間にしわを寄せる。
「どうしたの?」
レイが不安そうに聞いた。
アキトは首を振った。
「なんか...変な感じがする。『スキルのことがよく分かるスキル』が...いや、反応してないんだけど...」
次の瞬間、スキルが激しく反応『していない』ように感じはじめた。まるで、隠されている何かがいきなり暴れ出しているかのようだ。
「おかしい...めちゃくちゃ反応してる!でも、反応してないように感じる...」
アキトは混乱した様子で呟いた。
周囲を見渡す二人。ダンジョンの壁面に這う蔦、床に広がる苔、そして遠くに聞こえる水滴の音。しかし、敵の気配は一切感じられない。
「敵?でも...気配はしないよね」
レイが慎重に周囲を確認しながら言った。
「わからない...でも...」
突如、彼の脳裏に過去の記憶が蘇る。
「待てよ...こんな感覚、前にも...」
「『ステータスを偽装するスキル』の時だ!」
アキトは叫んだ。
「ヤバい、絶対に敵がいる!」
レイは即座に戦闘態勢に入った。その動きは、まるで舞うように優雅だった。
アキトは『スキルのことがよく分かるスキル』に意識を集中する。まるで霧の中から形を探るように、スキルの反応を丹念に探っていく。
「見えた!『気配を消すスキル』『空気を液体にするスキル』『土の中を自由に移動できるスキル』...敵は地中にいる!」
アキトの声が響き渡る。しかし、次の瞬間、彼の顔から血の気が引いた。
「距離は...くそっ、近すぎる!」
「真下だ!」
アキトは反射的に、足元にスーパーバリアの矢を3本束ねて放った。『矢をたくさん打てるスキル』の効果で、彼の体は9重のスーパーバリアに包まれる。青白い光が彼らを包み込む。
足元には、不自然な水たまりが広がっていた。しかし、それは水ではない。冷気を放つ、得体の知れない液体だ。
「これは...『空気を液体にするスキル』の仕業か」
アキトは唇を噛んだ。
(でも、空気が液体になったところで、そんなに危険じゃないはずだ......これが危ないなら液体窒素を使った理科の実験で死者が出るだろ)
アキトの思考は加速する。しかし、『スキルのことがよく分かるスキル』が、新たな脅威を感知した。
「もう一つスキルがある......『ほんのり熱くなるスキル』?」
その瞬間、アキトは敵の意図を悟った。恐怖が背筋を走る。
「レイ、今すぐ地中の敵を倒せ!殺さないと俺たちが死ぬ!」
レイがこちらを見て動揺する。そうか、彼女が地面を燃やしても、この液体空気が爆発するじゃないか!
「私は大丈夫!自分の心配をしなさい!」
アキトは我に返り、緑樹の矢を地面に打ち込んだ。太い蔓が地中に潜り込み、敵を捕らえようと伸びていく。しかし、敵の位置が深すぎる。蔓が辿り着くまでには、時間がかかりすぎる。
その時、凄まじい風が四方八方から吹き込んできた。空気が信じられないスピードで液体へと変化していく。透明な液体が、足元にどんどん溜まっていく。
アキトは焦りながら、ありったけのスーパーバリアの矢を掴み、火魔法で自分に向けて発射した。無数の青い光の層が、アキトの体を幾重にも包み込んでいく。
その瞬間、地面から凄まじい爆発が起こった。液化した空気が、一瞬で気化し、二人を吹き飛ばした。
■続きが読みたいと思った方は
どうか『評価』【★★★★★】と『ブックマーク』を......!
ポチッとお願いします!




