「第77話 - 特殊スキルの秘密」
「これも贅沢な使い方よね。ゴブリンを倒すのに魔法の矢を惜しみなく使えるなんて、聞いたことがないもの」
レイの言葉に、アキトは驚きを隠せない。
「そうなの?」
「ええ。そのスキルもいわゆる結末操作系スキルって言われる、特に強いスキルじゃない?」
レイは尋ねた。
「さっきも何か言ってたよね。特殊分類とか、結末操作系スキルとか、それ何?ヤバいのは感じるんだけど、どう強いのかがあんまりわからない」
アキトは首をかしげる。自分の力の特異性を、彼はまだ理解していなかった。
「矢を1本しか放ってないのに、3本になるっておかしくない?」
レイが問いかける。
「.......言われてみればそうだね」
アキトは深く考えてなかったことに気づく。
「しかもMP消費してないでしょ?」
レイが追及する。
「言われてみればそれはおかしな話だね」
アキトは納得する。
「これはスキルとして、一般的な魔法スキルを超えてると思わない?」
レイの言葉に、アキトは頷く。
「MPを消費するしないのはそうだな。魔法とは違う気がする。」
「それだけじゃないわよ。魔法スキルはMPを消費して、何かを生み出す機械のようなものだけど、結末操作系スキルはスキル自体が現実改変に作用しているわ」
「あ、なんとなくわかった......ような気がする」
「......あなたのスキルは、矢が増えるって結末に現実が改変されている。それにMPは必要ないわね。それがスキルの力だから。」
レイは説明する。
「さっき私が使った紅蓮魔法スキルも一部、その部類よ。ゴブリンを焦がしたやつ」
彼女の言葉に、アキトは合点がいく。
「『紅蓮魔法スキル』が焦げるっていう結果を発生させうるものでもあるってことか?MPを消費して、紅蓮魔法の元?みたいなものを生み出す装置ではなく」
「そうそう。とはいえ、あれはMPを大量に消費しているけどね。感覚的に、部分的にそうというくらいの話よ」
レイが続ける。
「根本が魔法スキルだからね。派生している分、完全に結末操作型っていうわけじゃないわ」
「そういうことだったのか」
アキトは納得する。
「ステータスカード見せてくれる?」
レイが尋ねる。
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プレイヤーランク ★
プレイヤーレベル 14→23
次のレベルまで 265→576
累積経験値 2532→7378
ステータス
HP 113→122
MP 24→46
スキル
『スキルのことがよく分かるスキル』 -
『矢をたくさん打てるスキル』 ★
『魔法がチョットだけ大きくなるスキル』 ★
『火魔法スキル』 ★
『ステータスを偽装するスキル』 -
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「お、結構レベル上がってたな。やっぱり逃げずに向かってきてくれるというのはありがたい」
アキトは満足げに呟く。MPなんてほとんど倍にまで伸びている。
「.....『魔法がチョットだけ大きくなるスキル』ってどんなスキル?」
レイが気になったように尋ねる。
「見たほうがわかりやすいだろ。これがスキルをオフにしたファイヤーボール」
アキトは小さな炎の玉を生み出す。
「これが、スキルをオンにしたときのファイヤーボール」
彼の手から放たれたファイヤーボールは、先ほどよりも大きい。密度も高そうに見えた。
「MP消費は?」
レイが確認する。
「無いな」
アキトは即答する。
「......これも結末操作系スキルね。MPを消費して、魔法的な何かを発生させる装置としての魔法系スキルではなく、魔法の巨大化という結果を生み出す装置としてスキルが機能してる」
レイがぶつぶつ言ってる。やばい!ふんわりとしかわからない!
「結末操作系スキルを複数持ってるなんて......」
レイは呆然と呟く。
(強そうなスキルを集めてきたつもりだったが、よっぱり強かったらしい。よかったよかった)
アキトは内心で喜ぶ。
「あ、魔石も集め終わったわね」
レイが告げる。
紅竜がドロドロ解けていって、魔石がこんもりと積み上がった。
「持ち帰って換金しておくわ。金森に渡せば200万くらいにはなると思う」
レイは淡々と言う。
「取り分はどうすればいい?」
アキトが尋ねる。
「金森の手数料は勝手に抜かれるわ。私は別にいらないわよ。初心者からお金をむしり取るのも嫌だし」
レイは即答する。
(レイの講座って数百万しなかったっけ?)
アキトは疑問に思う。
「講座はそれで生計を立ててる人がいるからね。私だけ無料になんてしたら迷惑がかかるわ」
レイはきっぱりと言う。
「ああ、なるほど」
アキトは納得する。
「で、次は何をするの?」
この世界におけるスキルの特殊分類について
結末操作系スキルは行為の結果を操作し、因果を超えて結果自体を生じさせるスキルを指します。
『矢をたくさん打てるスキル』『魔法がチョットだけ大きくなるスキル』を本文のように捉えた時、2つのスキルは結末操作系スキルに該当すると言えるでしょう。
他にも特殊分類として名前がついているものをいくつか紹介します。
例えば、『呼吸不能にするスキル』は概念支配系スキルに該当します。呼吸という生存に必要な概念に対する指揮権/支配権を剥奪するものだからです。
『矢が必ず当たるスキル』について考えてみましょう。
結末操作系スキルに見えますが、因果律操作系スキルと分類されることのほうが多いです。発動過程で矢が奇跡的な軌道を描いて相手に当たるからです。相手に当たるという結末が生じているというより、相手に当たるという結果に至るまでの過程が操作されているスキルだからですね。
まだ、いくつか特殊分類はありますね。また後日。




