「第71話 - 3つ星冒険者」
「弓、使っていいんですか?」
アキトは不安げに尋ねる。以前のダンジョン爆破事件のことを思い出し、彼はちょっとしどろもどろになる。戦闘動画を見られたというなら、もはや犯人だってバレているのかもしれない。
「使いなさい。もう、犯人だってわかってるし、別に追求もしないから」
レイは涼しい顔で言う。
(言質を取った。なら魔法矢フル活用、全力で挑ませてもらおう)
アキトは覚悟を決める。
「私もスキルを使うけど、出力は★2つ程度にまで制限されるわ」
レイが続ける。
「そうなんですね。ち、ちなみにレイさんってアーティソンのランクはいくつなんですか?」
アキトが尋ねたときには、転送が始まろうとしていた。ちなみに昨日、アーティソン内で『火魔法スキル』『矢をたくさん打てるスキル』『魔法がチョットだけ大きくなるスキル』の並列起動を解禁した俺は、高速でランク戦周回を繰り返し、41935位にまでランクを上げることに成功していた。
「950よ」
レイの言葉に、アキトの脳が理解を拒否する。
(は???)
驚愕している間に、彼は転移されていた。
「戦闘フィールド、高原。10秒後に戦闘を開始します。10...9...」
システムのアナウンスが響く。
アキトは『スキルのことがよく分かるスキル』を使って、相手を探知しようとする。
が、別に探知をせずとも相手の場所はわかっていた。
『紅蓮魔法スキル:紅竜召喚』
高原の草をやき焦がす、紅蓮魔法の精霊のような生物が複数召喚されているのが目の前で確認できていたからだ。
(見ただけでヤバいってわかる、あれが★2つ程度のスキルなのか...!?)
アキトは戦慄する。
彼は急いで『矢をたくさん打てるスキル』と『魔法がチョットだけ大きくなるスキル』を発動し、スーパーバリアの矢を自分に放つ。
「3...2...1...戦闘開始」
「行きなさい」
レイの言葉とともに、空を舞う紅竜が様々な方向から、アキトに飛びかかってくる。
(というか、レイの奴、ほとんど、こっちを見てないくせに場所が把握されているんだが!?どうなってる!)
紅竜は、レイの指示を受けた瞬間、まっすぐこちらに向かってくる。『スキルのことがよく分かるスキル』で自分だけ相手の場所がわかる優位性が消滅した。
(ヤバい。全部殺せる気が全くしない!)
アキトは咄嗟に緑樹の矢と烈風の矢を同時に放つ。
『矢をたくさん打てるスキル』と『魔法がチョットだけ大きくなるスキル』で強化された緑樹の矢の魔法が、烈風によって撒き散らされ、紅竜に絡みつく。
「ダメだ!動きは止められるが、全然効いてない!もう、この隙にレイさんを攻めるしか...」
アキトは炎爆の矢、雷撃の矢、緑樹の矢を束ねて持つ。
「覚悟してくださいよ、レイさん」
彼は混合魔法の矢を放った。
猛烈な熱と電気をまとった爆風が紅竜を一瞬で蹴散らし、そのままレイの方に突進していく。
「ダンジョンを揺らした技かしら。フリーの私を狙うのは悪手じゃない?『紅蓮魔法スキル:憤怒の翼』」
レイが呟くと、まるで時間が止まったかのような現象が起きた。
爆発がレイを飲み込んだと思った直前、その場からレイが消え、アキトの意識が飛んだ。
バリアが破られた衝撃だけが、最後の記憶としてかすかに残っていた。
「アキト様の負けです。アーティソンに帰還します」
システムのアナウンスが、彼の敗北を告げる。
アキトは我に返ると、アーティソンの中にいた。全身に鈍痛が走る。
「嘘だろ...」
彼は悔しそうに呟く。
「お疲れ」
レイが近づいてくる。
「★2つ程度の威力とは、一体...」
アキトが尋ねると、レイは苦笑する。
「やれることの範囲は★2つのスキルよりも広いかもしれないわ。でもかなり制限されていることは事実よ」
彼女は申し訳なさそうに言った。
アキトは言葉を失う。レイの★3つのスキルを実感させられた瞬間だった。
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