「第69話 - 極寒の戦い」
「思ったより地形に特徴があるな」
アキトは連戦を重ねるごとに、環境の重要性を実感していた。
(地形を活かすという発想は、思ったよりも大事なのかもしれない。これは実際の戦闘においてもそうなのだろうなと感じる)
彼は考えを巡らせる。
(実際、ワクワクダンジョンも2層に入った瞬間、いきなり草原になったもんな)
アキトは冒険の記憶を反芻する。ダンジョンでも、地形の変化が戦いの流れを左右するのだ。
そう思っていたら、いつの間にか転送が始まっていた。
「戦闘フィールド、南極。10秒後に戦闘を開始します。10...9...」
システムのアナウンスが響く。
(南極!?)
アキトは驚きを隠せない。目の前に広がるのは、真っ白な雪原、というか吹雪だった。
彼は索敵の前に、慌ててしゃがんで姿を隠す。まぁ吹雪のおかげで、視界がなさすぎる。うーん......20メートル先がギリギリという感じ?おかげで身を隠すのは容易だ。
「待て待て、嘘だろ。アホみたいに寒い上に、なんだこの雪は!!!」
アキトは寒さに震える。南極という極寒の地は、彼にとって未知の環境だった。
試しに魔法を発動してみる。しかし、威力は実質8割減だ。
「いやいや、こんなの勝てるはずがないだろ!ふざけるな!!!」
彼は絶望感に襲われる。
それでも、アキトは『スキルのことがよく分かるスキル』を起動する。
(50メートル先か!)
相手の位置を把握する。だが、状況は芳しくない。
(負けるのか!このまま。いや、マジで魔法を使っても自分を倒すのも困難なくらいの威力しか出る気がしない)
アキトは歯がゆさを感じる。
(でも...負けたくないな...)
彼は拳を握りしめる。どうにかして、この局面を打開したい。
(これが現実だったら、俺はどうやってこの局面を乗り切る!考えろ!考えろ!)
アキトは必死に考える。
そして、ある閃きが彼の脳裏をよぎった。
(そうだ、あれしかない!気づいてみれば簡単なことだった......)
彼はニヤリと笑う。
白いボディで地面に伏せていたアキトは、ゆっくりと立ち上がる。そして、火魔法を花火のように打ち上げてあえて相手に姿を視認させた。
相手もこちらに気づいたのか、こちらに歩いてくる。
しかも、刀を地面に沿わせながら、こちらに歩いて来ていた。先程は常に上段?で構えていたことを考えると、明らかに舐められている。
(罠も何もないだろう?この極寒で何かできるならやってみろとでも言わんばかりだな)
アキトは苦笑する。
距離が20メートル、15メートルと詰まる。
そして、相手が10メートルにまで近づいた瞬間、アキトは全てのスキルをオンにして詠唱した。
「ファイア・アロー!」
大量の魔力が込められた矢は、3本の矢に増殖し、『魔法がチョットだけ大きくなるスキル』の効果で巨大化、烈火の如く燃え上がりながら、超速で相手の頭、胸、太ももを打ち抜いた。
相手はこちらを呪うようににらみながら、倒れ伏した......ように見えた。
「アキト様の勝利です。アーティソンに帰還します」
システムのアナウンスが、勝利を告げた。




