「第68話 - 砂漠の死闘」
「思ったより地形に特徴があるな」
アキトは前回の戦いを振り返る。岩山という環境が、戦いの流れを大きく左右したのだ。
(地形を活かすという発想は、思ったよりも大事なのかもしれない。これは実際の戦闘においてもそうなのだろうなと感じる)
彼は考えを巡らせる。
(実際、ワクワクダンジョンも2層に入った瞬間、いきなり草原になったもんな)
アキトは冒険の記憶を思い出す。ダンジョンでも、環境の変化が戦いに影響を与えるのだ。
「戦闘フィールド、砂漠。10秒後に戦闘を開始します。10...9...」
システムのアナウンスが響く。
(あかん!これは厳しい。実質直接戦闘になる)
アキトは緊張する。砂漠という環境は、彼にとって不利だ。
転送された直後、彼は素早く体を伏せる。そこから『スキルのことがよく分かるスキル』を起動する。
(どうやら砂丘を超えた先にいるみたいだ。70メートル先くらいか)
アキトは相手の位置を把握する。
(さてさて、どうしましょうかね...『火魔法スキル』で何ができるか...)
彼は戦略を練る。砂漠という環境下で、火魔法をどう活かすか。それが勝負の分かれ目になるだろう。
数十秒後、相手が砂丘に登り始めた。フィールド全体を見渡して俺を探そうとしているようだ。
(頭が見えた瞬間に『ファイアバレット』を連射して狙撃する)
アキトは相手の頭が見えた瞬間に魔法を放った。
(うわ...なんて動体視力してやがる。なんで躱せるんだよ!不意打ちくらいは食らってくれるものじゃないのか?)
彼は舌打ちする。相手は見事にファイアバレットを切り払い、悠々と歩いてくるのだ。
(『斬撃スキル』ずるいって......本人の動体視力もかなりいいのか?)
アキトは歯がゆさを感じる。
その時、相手が斬撃を飛ばそうとしているのに気づく。
(あっ不味い。斬撃飛ばしてこようとしてるな?そうはさせませんよ?)
「火炎放射!」
アキトは地面を削るように火炎放射を放つ。
(どうかね?ヒタヒタのMPを燃料に、地面を削り取るように燃える火炎放射は?さっきと違ってキツイだろう?)
しかし、予想外の光景が彼の目に飛び込んでくる。
「は???」
相手は複数回の斬撃を繰り出し、砂丘の表面の砂を削り巻き上げながら、、火炎放射を砂の層で防ぎながらこちらに近づいてくるではないか。
(ふざけるな!砂と相性が悪すぎるだろ!)
アキトは思わず叫ぶ。
(砂の裏で、やつが笑っているように感じられてくる。白い人形だからそんなのわからないんだけどね!)
彼は苛立ちを隠せない。
相手が10メートルの距離まで接近したその瞬間、アキトは仕掛けていた魔法を発動する。
「吹き飛べ!!!『ファイアボム』!!!」
削り取られていた砂の層の更に下から、爆発が起こる。
(数十秒あったんだぞ。何もしなかったはず無いだろ!見たか!)
アキトは勝利を確信する。相手の足は、もう使い物にならないはずだ。
(だが、遠距離戦になったら決め手にかける可能性がある。ここで決める!)
彼は空中で回転する相手の落下地点に走る。そして、相手の体に触れて直接魔法を発動する。
「『ファイアブースト』!!!」
アキトは直接相手の体を掴み、丸ごと燃やし尽くした。
「......!!!」
相手の断末魔が、ロボット越しに感じられた気がした。自分だったら絶対こんな攻撃は受けたくない。
「アキト様の勝利です。アーティソンに帰還します」
システムのアナウンスが、勝利を告げる。
アキトは砂漠の只中に立ち、深く息をつく。
「1分後に3戦目を開始します」
厳しい環境下での戦いだったが、何とか勝利を掴むことができた。
あと1戦か......どんな環境だろうと絶対に負けんぞ。
アキトの瞳に、炎が宿った。




