「第67話 - 雪辱戦」
アキトは敗北の悔しさを胸に、再び戦いの場に立つことを決意する。
「再戦申し込みってできるか?」
彼はシステムに尋ねる。
「相手が了承した場合、可能です」
システムが答える。
「相手が3本先取を提案してきました。いかがいたしますか?」
「了解。始めよう」
アキトは迷わずに承諾する。雪辱を晴らすチャンスだ。
「戦闘フィールド、岩山。10秒後に戦闘を開始します。10...9...」
システムのアナウンスが響く。
(岩山!?うわ、マジだ!傾斜がエグいぞ)
アキトは目の前に広がる険しい岩山に驚く。これが、今回の戦場なのだ。
彼は『スキルのことがよく分かるスキル』を起動し、相手の位置を探る。
(うっわ。俺のほうが上か。しかも距離は...30メートル!近い!)
アキトは相手を視認し、急いで山道を駆け上がる。しかし、相手のほうが早い。
(しまった。相手が★2で経験があるってことは、ステータスが俺より上ってことじゃん!)
彼は焦りを感じながらも、必死に距離を取る。
「3...2...1...戦闘開始!」
距離を更に詰められて20メートル程度になったところで、戦闘がスタートした。
(斬撃を飛ばされたら試合が即終わるぞ!大技を使う余裕は与えない!)
アキトは岩陰に隠れながら、咄嗟に魔法を放つ。
「ミニ・ファイアボム・レイン!」
彼は小型の爆発効果を持った火魔法の塊を、相手に雨のように投げつけていく。
(ファイヤバレットよりも小さいし、威力も数分の1だが、数を確保した。当たってもボクシングの軽いジャブくらいの威力だろうが...)
アキトは必死に魔法を連射する。
(効くだろ?)
岩陰にしっかり隠れながら『スキルのことがよく分かるスキル』で相手のスキルの反応を伺う。
相手は刀を巧みに振って、斬撃スキルを要所要所で使っている。うまく防いではいるが、すべてを防ぎきれてはいない。
この岩にも斬撃スキルは届いているが、分厚い岩が切れるほどの効果は無いらしい。よかった。俺の足とは硬さが全然違うだろうしな。
毎秒毎秒、体のどこかにボムの爆発が当たっているし、脚が止まっているようだ。
岩を意識しながら、相手から姿が見えないようにアキトはさらに距離を取り、別の岩陰に身を隠す。
(大技があって、それに岩ごと斬る性能があるなら、もう俺の負けでいい。でも、足を切られた感覚的に、斬撃を飛ばす分、威力は常識的だった感じがあった)
彼は相手のスキルを分析しつつ、次の一手を考える。
アキトはファイアボムと入れ替えで、MPを可燃性の燃料にして岩に撒いていく。
(登ってくるか?好都合だ)
「ファイアスピアー!」
登ってくる相手の足元の燃料が爆発し、岩肌がめくれ上がる。
「ぐあっ!」
相手は吹き飛ばされ、山を転がり落ちていった。
「ファイヤブースト!ファイヤブースト!ファイヤブースト!!!」
今だ!と言わんばかりに俺は魔法を乱発し、大きめの岩を下に転がしていく。
5つほど落としたところで、うまく、相手の体に直撃し、相手はさらに山の斜面をを転がり落ちていった。
「アキト様の勝利です。アーティソンに帰還します」
システムのアナウンスが、アキトの勝利を告げる。
「おお、死んじゃったか。うーん、上下の位置が逆だったらどうだっただろう。まぁ、戦闘の選択肢は広がったかな」
アキトは満足げに呟く。目の前の岩山は、彼の勝利を称えるかのように静かに佇んでいる。
「1分後に2戦目を開始します」
システムが告げる。
アキトの雪辱戦は、まだ始まったばかりだ。
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