「第65話 - 初めての敗北」
アキトは、ランキングの変動に驚いていた。
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アキト・サトウ
Rank 602290→538176
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「結構上がったな。こんなに簡単に上がるものなのかね」
彼は呟く。先ほどの相手のランクを確認する。
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Rank 407388
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「うーん。40万台でもヒヤヒヤさせられるな。地形のデバフはきつかった。というか、火炎放射をくぐり抜けてこちらに攻撃してくる胆力があるのは結構やばい」
アキトは先の戦いを振り返る。環境の不利を跳ね返し、果敢に攻めてくる相手の強さを思い知らされた。
「★1つと★2つってあるじゃん。このシステムだと、どれくらいになったら★2つの人たちと当たることになる?」
彼はシステムに尋ねる。
「直接戦闘能力を持つ★2つのスキル保有者は、登録後2ヶ月以内に上位10%以内に入る傾向があります。登録直後のユーザー、登録のみでアーティソンから離れていたユーザー、マッチングの運によってランキングが上振れ、下振れしているユーザーもいるため、ランキングが能力を反映しているとは必ずしも言い切れません」
システムが淡々と答える。
「おお、システムというかAIっぽい回答ね。つまり★2つあれば、7万位くらいには入ってくるのか。ありがとう」
アキトは納得する。
「うーん、まぁ続けてみるか。ランク戦続行で」
彼は意を決して、次の戦いに臨む。
「マッチング成功。戦闘フィールドへ移動します」
「ランキング差が大きい相手との戦闘です。よろしいですか?」
システムが警告する。
「おお、多分強いってことだよな?大丈夫です」
アキトは不敵に笑う。
「戦闘フィールド、平原。10秒後に戦闘を開始します。10...9...」
彼は『スキルのことがよく分かるスキル』を起動し、敵の気配を探る。
(後方150メートル、『斬撃スキル』か)
今度のフィールドは、結構草の高さがある平原だ。アキトはワクワクダンジョンの2層を思い出す。
(バレないように隠れよう)
彼は慎重に草むらに潜む。
「3...2...1...戦闘開始」
カウントダウンが終わり、戦いが始まった。
(この草よく燃えそうだよな......うん。燃える)
アキトは敵から見えないように草に火を放ってみる。確認した後アキトは、徐々に距離を詰めていく。
敵の姿が視界に入る。侍のような構えで刀を構える人形だ。
(うーん、酸素を奪って殺すことができないかな)
アキトは両手から相手を閉じ込めるように炎を吹き出していく。火炎放射だ。
(草が燃えてくれたことによって、先程よりもMP消費は少ないな)
燃え盛る平原の中央から、斬撃が飛んでくる。
「嘘だろ!?」
アキトはとっさにスキルの反応を感じ、避ける。しかし、それでも片足を切られてしまう。
「あっ!これ切断されてる!マジで痛いどころじゃねぇ、動けねぇって!」
彼は絶叫する。
(マズい!近づかれてる!)
日本刀を大上段に構えた男が、すぐ近くにまで迫っていた。
「ファイアバレット!」
アキトはとっさに魔力を込めて、相手を吹き飛ばそうとする。
しかし、次の瞬間、信じられない光景が彼の目に飛び込んできた。
「斬撃」
相手の一言と共に、アキトのファイアバレットは切り裂かれ、返す刀で彼の胴体も真っ二つに斬られてしまったのだ。
「ぐあっ!」
アキトは絶叫する。激痛が全身を駆け巡り、意識が遠のいていく。
「アキト様の負けです。アーティソンに帰還します」
システムの冷たいアナウンスが、彼の敗北を告げた。
アキトは目を開ける。そこは、見慣れたアーティソンのアリーナだった。
「負けた...のか...?」
彼は呆然と呟く。初めての敗北に、ショックを隠せない。
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