「第61話 - 対人戦闘訓練施設『アーティソン』」
「第61章 - 対人戦闘訓練施設『アーティソン』」
アキトとレイは、アカデミー内を歩きながら会話を交わしていた。2日目の講習も、運動場での的当てから始まった。しかし、生徒たちがMP切れで一通りくたばったタイミングで、別施設に案内されることになったのだ。
「それにしても、★1つの人はいないんですね?」
アキトが不思議そうに尋ねる。
「講習費用が高いから。ダンジョンで稼いで講習費を回収できる人間は、魔法職では★2つ以上にほぼ限られてしまうもの」
レイは説明する。この世界では、スキルの★の数が、冒険者の実力を示す指標となっている。★がスキルであれば強力な能力を使えるのだ。
「それにしても、★が多いとMPの消費も大きいんですかね?1~2回しか魔法を使えないなら、ダンジョンに潜るのも大変ですよね」
アキトは疑問を口にする。MPの消費が激しいと、ダンジョン探索にも支障が出るだろう。
「★の数は関係ないわ。最初はみんなあんな感じね。アキトは違うわね。なんというか、魔法の発動の真髄を理解している。そういう感じがするわ」
レイはアキトの才能を評価する。彼は、他の生徒たちとは一線を画した魔法の使い手なのだ。
(そう言われるとそうなのかもしれないな)
アキトは内心で思う。自分でも、魔法の扱いには自信がでてきていた。
「魔法の発動回数を増やすのは、魔法使いの永遠のテーマ。ダンジョンというストレスがかかる場所では、こういう安全な場所と同じパフォーマンスを維持することは難しい」
レイは魔法使いの悩みを語る。ダンジョンでは、常に緊張感を強いられる。そんな状況下で、安定して魔法を使い続けるのは至難の業なのだ。
「それに対応するために作られたのが、この施設『アーティソン』よ」
レイに案内され、アキトは一つの建物の前に立った。
それは、円形のアリーナのような白い建物だ。まるで、古代ローマの闘技場を思わせるデザインだった。
「賢者ダーウィン・アークライトの魔法によって世界中に設置されたこの施設は、人間同士が、対人戦闘の訓練をすることができるの」
レイが説明を続ける。
「スキルで人と戦うということですか?」
アキトは驚きを隠せない。
「そう。誰と戦っているかはわからない。戦闘自体は人形同士で行われるからね。スキルを持った人形と戦うことになる。操作しているのはお互いに人間よ。ここのアカデミーの内部の人間かもしれないし、日本の支部、あるいは世界中の何処かのアカデミーの人間の可能性もあるわ」
レイの言葉に、アキトは緊張感を覚える。世界中の魔法使いと戦うことになるのだ。
「まぁ、★2つ以上離れた相手と戦うことはないから、一瞬で消し炭になることなんかは、なかなかないんだけどね」
レイは苦笑しながら付け加える。
「これが昨日話してた特別メニュー......」
アキトは合点がいったように呟く。
「そう。ダンジョンの攻略ができるだけの継戦能力に加えて、対人戦闘で揉め事が発生しても対応できるだけの力を身に着けさせるってこと」
レイは講習の目的を明かす。
「他の生徒は★2つあるから、講習後も使えるんだけど、あなたは★1つだから、スキルランクでこの施設は利用できなくなるわ。残り2日で、鍛え抜いてちょうだい」
「わかりました。頑張ってみます」
アキトは意を決して、アーティソンに足を踏み入れた。
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