「第59話 - 魔法の応用」
「レイさん、オーラが動かせません。コツを教えてもらえませんか?」
アキトは勇気を振り絞って、レイに助けを求めた。
「コツか...難しいんだよね」
レイは首をかしげながら、アキトを見つめる。
「みんなそれぞれ、オーラの感覚の掴み方が違うから。君の場合は、どんな感じ?」
「うーん...手から火は出せたんですけど、オーラを動かすイメージがつかめなくて」
アキトは正直に告げる。不思議なことに、火魔法を使う時はオーラが自然と動くのに、オーラ単体では全く動かないのだ。
「あら。さっき火魔法を起動したときはオーラもスムーズに動いてたけど?熟練の老魔法使いみたいな感じに」
レイが驚いたように言う。確かに、火魔法を使った時のアキトのオーラの動きは、まるで長年魔法を使ってきたベテランのようだった。
「本当です?」
アキトは不思議な感覚を味わっていた。自分でもなぜだかわからない。
彼は改めて火魔法を使って、手のひらに小さな火球を生み出す。オーラが、彼の意思に従うように手へと集中していく。
アキトは首をかしげる。オーラを動かすコツが、火魔法を使う時とそれ以外で全く違うのだ。あら、意識はしてないけど、ちゃんと動いてるじゃないか。
「みんなこっちをみて」
レイが他の生徒たちに呼びかける。
「第二段階、オーラの流れが制御できるようになったら、それを手から押し出すように動かすの。そうするとこんな感じで、みんなのスキルで使える魔法が発動するわ」
彼女は手を前に突き出し、炎の弾を生み出す。真っ赤な炎が、勢いよく前方に飛んでいく。
「アキト、そのままあちらの的にその火球をぶつけてみて」
レイがアキトに指示を出す。
「はい」
アキトは手のひらの火球を、的めがけて放つ。
火球が的に当たり、ふわりと消えていく。彼はその様子を眺める。威力は弱いが、確かに魔法は発動している。
的に火球がぶつかって消滅した。ふんわりって感じだ。
「オーラがある程度動かせるなら、こうやって魔法も発動できる。できると思ったらみなさんも、的に当ててみましょうか」
レイの言葉に、生徒たちは次々と的に向かっていく。
アキトは自分のオーラに意識を集中していた。
(オーラを意識してもちっとも動かないな。一方で火魔法を少しでも使おうとすれば、オーラも思ったように動くのに)
彼は耳からチャッカマンのように火を出しながら思う。
『スキルのことがよく分かるスキル』のおかげで、スキルの使い方をよく理解している。しかし、魔力そのものを動かすのは、スキルとは違う感覚らしい。
(『スキルのことがよく分かるスキル』のおかげなんだろうな。スキルの使い方は良くわかってるんだ。一方で魔力を動かすのはスキルじゃないから、それだけをやろうとするとわからないのか)
アキトは自分の状況を分析する。
(オーラ単体で動かせるようにするメリットはあるのかな?いや、特になさそうだ。火魔法を使おうとしてオーラを動かすのと実質的には変わらないしな。なら、これでいいか、俺も的あてに行くか)
彼は手のひらに火球を生み出し、的めがけて放っていく。今は、自分なりのやり方で魔法を使えればいいのだ。
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