「第54話 - 魔法学講習への招待」
アキトは、龍条レイから受け取った名刺を握りしめながら、家路を急いでいた。上級冒険者からの招待。それは、彼にとって千載一遇のチャンスだったのだ。
「『火魔法スキル』が使えるようになるのか...!」
アキトの心は、期待に胸を躍らせていた。彼は『火魔法スキル』を試してみたが、まったく使えなかったのだ。『スキルのことがよく分かるスキル』のお陰で、他のスキルは問題なく、すぐに使いこなせたのに、『火魔法スキル』だけは別だった。
家に帰ったアキトは、早速講習について調べ始める。
現代社会において、魔法は欠かせない存在となっている。ダンジョンの出現から15年、人類は未知なる力、スキルを手に入れた。
スキルの中でも魔法スキルは、現代物理では説明できない現象を引き起こす。それを使いこなすには、専門的な知識と訓練が必要不可欠なのだ。
そこで重要な役割を担うのが、アカデミーだった。一流の講師陣が、最新の魔法理論と実践的なテクニックを教授する。修了証をもらえば、冒険者としてのキャリアにも大きな影響を与えるという。選ばれた極めて優秀なスキルを持ったものだけが通うと言われる場所。
あれ、俺が受講するのは......魔法学講習?
調べてみると、新米冒険者が魔法スキルを使えるようになるための最低限の講義・演習が行われるらしい。場所はアカデミーらしいのだが。こちらのほうが手軽なのかな。
「講習は3日間か...結構長いな」
アキトは日程を確認する。通常の講習は1日だけだが、龍条さんの講習は特別らしい。
「まぁ、ダンジョン探索もしたいけど...せっかくタダ券をもらったし、行くか」
彼は決意を固める。この機会を逃す手はない。
アキトは申込サイトを開く。しかし、そこには1年以上先の枠しか用意されていなかった。
「え?520万...?」
彼は目を疑う。講習の受講料は、なんと520万円也。庶民には到底手の届かない金額だ。
「大丈夫だよな...?行ったら請求されたりしないよな?」
アキトは不安を感じつつも、龍条レイの言葉を思い出す。
「名刺。これを出せば、いつでも講習に参加できるわ」
一応彼女に言われてこちらも400万円分の矢を使ったんだ。複製したものだし、実質タダだけども、講習は無料にしてくれるよな!
彼は龍条レイを信じることにした。
翌日、アキトは指定の場所に向かう。
「なんだこれ、大学みたいな規模の施設じゃないか」
彼は驚きを隠せない。目の前に広がるのは、壮大なキャンパスだった。
アキトは市ヶ谷に向かったのだ。そう、防衛省のすぐ裏手に、この講習施設はあった。
「防衛省か......あの入り口の門なんか、なかなか立派だよな」
彼は感心しながら、ぐるりと敷地を回っていく。防衛省の建物は、近代的でありながら威厳を感じさせる佇まいだ。その裏手にある施設建てられたばかりなのか、まだ新しい。より現代的な建築に見えた。
「景色もいいし、なんか得した気分だな」
アキトはニヤリと笑う。これから始まる3日間に、大きな期待を寄せていた。
彼は入場門に到着する。
「お兄さん、講座の受講?」
警備のおじさんに声をかけられた。
(いちいち、なんでバレるんだ?)
アキトは驚く。
「誰の紹介で来たの?」
おじさんが尋ねる。
「あの、龍条レイさんから...」
アキトは答える。
「名前は?」
「サトウ・アキトです」
おじさんは冊子を確認する。
「ん?受講者名簿にないけど...」
彼は眉をひそめる。
「いつでも来ていいと、名刺をもらってまして」
アキトは慌てて、レイの名刺を差し出す。
「おおぉ...そういうことですか。承知しました」
名刺を見たおじさんの態度が一変する。おじさんが無線で連絡すると、教室まで案内すると、コンシェルジュのような方がやってきた。
「お待たせしました。第二教室までどうぞ」
コンシェルジュはアキトを敷地の中に案内していく。
(な、なんだ?馬鹿みたいにスムーズだな)
アキトは内心で呟く。こっちは相当ドキドキしていたというのに。
彼は教室に向かう。ここから、新たな冒険が始まるのだ。
『火魔法スキル』を自在に操れるようになりたい。
彼の胸は、高鳴る思いでいっぱいだった。
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