「第53話 - 暗躍する者たち」
都内を一望できる高層ビルの一室に、金森と龍条レイの姿があった。
「急に緊急臨場に割り当てるなんて、やってくれるじゃない。私にだって色々あるのよ?」
レイが不満げに言う。
「それくらいの貸しなら、たっぷりと積んできたつもりよ」
金森は涼しい顔で答える。
「で、あれは何?あのバカバカしい、いえ、馬鹿げた奴は」
レイが尋ねる。
「あなたから見て、何が馬鹿げていた?」
金森が問い返す。
「要救護者としてあなたに渡されたサトウアキトのステータス表よ」
レイは資料を取り出す。
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プレイヤーランク ★
プレイヤーレベル 3
次のレベルまで 52
累積経験値 279
ステータス
HP 102
MP 11
スキル
『スキルのことがよく分かるスキル』 -
『矢をたくさん打てるスキル』 ★
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「レベル3なのに、2つもスキルを持ってるのよ!?見た瞬間に吹き出したわ」
金森が笑う。
「それが、ダンジョンの中で私が冒険者カードを見せられたときにはこうなっていた」
レイは別の資料を差し出す。
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プレイヤーランク ★
プレイヤーレベル 14
次のレベルまで 265
累積経験値 2532
ステータス
HP 113
MP 24
スキル
『火魔法スキル』 ★
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「あははは!」
金森は高笑いする。
「楽しそうね!あんたほどそういう笑いが似合う人はいないわ」
レイが皮肉を込めて言う。
「で?」
「仮に、仮にあんたから渡されたステータスが正しいのだとすれば......彼はとんでもないスキルを『複数』持っている」
レイが分析する。
「一つはスキル偽装。スキルが減っていることになるから」
「次はスキルオーブの獲得に関するスキル。『火魔法スキル』とスキル偽装のスキルは新しく獲得したことになる」
「あと、さらに複数の戦闘系スキルを保有している。今日のダンジョン内爆発、犯人はあいつであることは間違いない。でも、彼が持っている魔法矢ではあんな威力には到底届かない」
「あれがあんたの......」
「そう、『わたしのもの』よ」
金森は断言する。ゴクリとレイが息を飲んだ。
「......危なっかしいわよ。あれ。危機管理能力が低すぎるわ。少し見れば、話せば、すぐにやばい奴だってわかる。誰もあんな奴を放っておくなんてことはしない」
レイが忠告する。
「いいのよ、それで」
金森は涼しい顔で言う。
「アキトが冒険者カードを見せた人間には全員、可能な限り早く、記憶洗浄をかけてきた。冒険者免許の会場にいた人間も全員即日で記憶洗浄をかけたわ。もちろん冒険者データベースも改ざんしてある」
「......それでも」
「ええ、それでも足りないわ。気づかれる日は必ず来る。もう来ているかもしれない。でも彼は自分の望むように生きること以外望んでいないわ」
「ッ!そんな!」
金森の言葉に、レイは怒りをにじませる。
「......そんなに甘い世界じゃないわよ。遠からず、暗く、大きな力が彼を支配しに来る......」
「私は、そんな外敵と戦う彼を支えるわ、そうすれば彼の力を、力の恩恵を享受できる」
金森は冷酷に告げる。
「彼をあなたの講座に招待したそうね?」
......なぜ知られているの!?
レイは驚きを隠せない。隠すつもりはなかったが、二人きりの会話まで把握されているとは思わなかった。
「いいわ。ちゃんと関係を作っておきなさい。そういうチャンスを逃さないあなたを私は高く評価している」
金森はレイを褒める。
「で、あなたは私の味方なのよね?」
金森が強烈な圧をかける。
「もちろんです。あなたには返しきれないほどの恩がありますから」
レイは冷や汗をかきながら答える。
「......ならいいわ。これからもよろしくね、レイ」
金森は満足げに微笑んだ。
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