「第43話 - 残酷な条件」
アキトは火魔法ゴブリンに注目した。せっかくの機会なので、『スキルのことがよく分かるスキル』を使って、スキルを得られる条件を確認することにした。
「『相手よりも強力な火魔法を見せつけ、絶望させたうえで、相手よりも弱い火魔法で殺すこと』...だと?」
アキトは思わず舌打ちした。
「性格わっる」
彼は苦笑しながらも、火魔法ゴブリンに立ち向かう準備を始める。
「まずは氷河の矢をスキルオフで放って、拘束するか」
アキトは慎重に狙いを定め、氷河の矢を放つ。矢はゴブリンの体を貫き、瞬時に氷の塊へと変えていく。
「ギャオオオオ!!」
拘束された火魔法ゴブリンは、激しく吠えている。怒りに任せて、こちらにファイヤーボールを次々と放ってくる。
「ガシャーン!ガシャーン!」
しかし、スーパーバリアを貼り直したアキトには、全くダメージがない。彼は無造作に火魔法ゴブリンに近づいていく。
「もう魔力を使い切ったのか...?」
8発目のファイヤーボールを放ったあたりで、火魔法ゴブリンの攻撃が止まった。
「よし、次は俺の番だ」
アキトは炎爆の矢を取り出す。最大火力で打つなら、3本束ねて、スキルをオンにすればいい。
「見せつけるように放つぞ...」
彼は火魔法ゴブリンの視線の先をめがけて、炎爆の矢を放つ。凄まじい爆発が起こり、辺りは真っ赤に染まった。
「おお、ゴブリンの癖に何を考えているかわかるなぁ...」
アキトは感心しながらも、反対方向にも見せつけるように炎爆の矢を放つ。さらに、今度は連続で2発放ってみせた。
「うーん、これくらいで絶望してくれているといいんだけど」
火魔法ゴブリンの表情から、恐怖と絶望が読み取れる。そんな気がした。
「相手より弱い火魔法ね...一応、火の矢をまだ持っててよかったなぁ」
アキトは火の矢を取り出し、『矢をたくさん打てるスキル』で増やしていく。
「9本もあれば足りるだろ」
彼はスキルをオフにして、火の矢を1本ずつ火魔法ゴブリンに放っていく。ゴブリンの体は少しずつ焼け焦げ、苦痛の悲鳴を上げている。
「ギャアアア!!」
「グオオオオ!!」
悲鳴は徐々に小さくなり、やがて完全に消えた。火魔法ゴブリンは灰と化し、風に乗って散っていく。
「ふぅ...」
アキトは小さく息をつくと、灰となったゴブリンの足元を見つめた。そこには、『火魔法スキル』のスキルオーブが転がっていたのだ。
「やったぜ...!」
彼は歓喜の声を上げながら、オーブを拾い上げる。このスキルを手に入れれば、また一つ強くなれるはずだ。
「でも...なんて面倒な条件なんだ」
アキトは複雑な表情を浮かべる。そもそも相手を絶望させたうえで殺すなんて、冒険者としてのあるべき姿なのだろうか。
「いや、ゴブリンだからいいのか...?」
彼は自問自答する。ダンジョンでの戦いは、常に命を賭けたものだ。敵を倒さなければ、自分が死ぬ。それが、この世界の掟なのだ。
「考えても仕方ない......恨むなら、そんな入手条件を設定したこの世界を恨んでくれ」
アキトは意を決して、オーブをポケットに仕舞う。彼の冒険は、まだ始まったばかりなのだから。
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