「第39話 - 戦いの予感」
アキトは先ほどの大規模な攻撃を反省していた。
「さっきは調子に乗って、とんでもないことをしてしまった。まずは矢の性能確認から行こうか」
彼は慎重に、スキルをオフにする。そして、緑樹の矢をそのままでゴブリンに放つことにした。
矢が放たれた瞬間、ゴブリンはこちらに気づく。驚くべき身のこなしで横に転がり、矢をかわした。
「!?」
アキトは目を見開く。しかし、次の瞬間、緑樹の矢から広がる腕のように太い蔓が、ゴブリンに追いつき、足首に巻き付いた。
「グオオオオ!」
ゴブリンは猛烈に暴れ、蔓から抜け出そうとする。そして、こちらに近づこうと必死だ。
「クソッ!」
アキトが舌打ちをした時、ゴブリンは手頃な石を掴み、こちらに投げつけてきた。
「ガシャーン!」
石はスーパーバリアに阻まれたが、その衝撃は猛烈だった。バリアが揺れ、アキトは一瞬、バランスを崩しかける。
「1つでも喰らえば、ただでは済まないな...」
アキトは冷や汗を流す。緑樹の矢の蔓が追いつき、ゴブリンの首を締め上げるが、それでもなお、ゴブリンは暴れ続けている。
「くっ...!」
アキトは無言で、『矢をたくさん打てるスキル』と『魔法がチョットだけ大きくなるスキル』を起動した。そして、もう一本の緑樹の矢を打ち込む。
「ゴオオオオ!」
もはや木よりも太い蔓が、一瞬でゴブリンを包み込むように締め潰していく。ゴブリンの断末魔が、辺りに木霊した。
「はぁ、はぁ...」
アキトは荒い息をつきながら、倒れたゴブリンを見つめる。汗が頬を伝い、心臓が激しく鼓動している。
「スキルをオフにして放った緑樹の矢の威力は、『魔法がチョットだけ大きくなるスキル』だけを起動したときの草の矢と同等か...」
彼は分析する。心の中で冷静に状況を整理することが、彼の生存戦略の一部だった。
「この威力があれば、1層のゴブリンなら3匹までは瞬殺できる。特殊個体相手でも戦えるレベルの矢だ」
アキトは矢の性能に満足げだ。しかし、2層のゴブリン相手となると話は別だった。
「これ1つでは戦えない。痛烈な反撃を食らう可能性がある。敵のレベルは、そこまで上がってきたってことだ」
彼は2層の脅威を実感していた。ゴブリンたちの強化された身体能力に、心の底から警戒心を抱く。
アキトの体が震える。だが、それは恐怖ではなく、興奮によるものだった。
「こんなに強い相手と戦えるなんて...ワクワクするぜ!」
彼の瞳に、戦意の炎が宿る。未知なる領域に挑む、冒険者としての血が騒ぎ始めたのだ。
「よし、次はどこに行こうか...」
アキトは『スキルのことがよく分かるスキル』で、2層を探索する。
「奥の大規模な集落はもちろん、周りの小さな集落ですら1000匹規模......ちょっとだけ覗いてみるか」
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