「第35話 - 贅沢な一時」
アキトは、金森から受け取った800万円を手にして、有頂天になっていた。
「こんなにたくさんのお金、初めて見たぞ...」
彼は興奮を隠せない。これまでの冒険者としての収入とは、桁が違うのだ。
「よし、何か美味しいものを食べに行こう!」
アキトは高揚感に浸りながら、街を彷徨い始めた。そして、彼の目に飛び込んできたのがオイスターバーだった。
「牡蠣か...何年ぶりだろう。大好きなんだよな」
アキトは迷わずオイスターバーに入っていく。店内は高級感溢れる内装で、彼はちょっと場違いな気分になった。
「いらっしゃいませ。本日のおすすめは、岩手県大船渡産の『令和の怪物』です。一つあたりの価格は高めですが、その分大きさも圧巻ですよ」
店員の説明に、アキトの目が輝く。
「牡蠣は大きければ大きいほど美味いんだよな...よし、『令和の怪物』を5つ、あと生ビールをお願いします!」
注文を済ませたアキトは、ふと我に返った。
「800万円...ストアで装備を買ったら、あっという間に使い切りそうだな」
彼にとって、この大金は10年かけても貯まらないような額だ。それが急に心もとなく感じられてきた。
「まあ、仕方ない。ダンジョンで稼いだ『あぶくぜに』だ。気にせずダンジョン攻略のためにパーっと使ってしまおう」
アキトは開き直るように呟く。今は贅沢をする時なのだ。
そこへ、注文した牡蠣が運ばれてきた。
「お待たせしました。『令和の怪物』でございます」
皿の上には、信じられないほど大きな牡蠣が鎮座していた。
「うおお...でけえ!」
アキトは思わず声を上げる。『令和の怪物』の名に恥じない、圧巻のサイズだ。
彼はナイフを手に取ると、慎重に牡蠣を切り分けていく。
「ぷるんっとした食感...これは新鮮な証拠だな」
アキトは牡蠣の身を口に運ぶ。
「うまい!海のミルクって言われるだけのことはあるぜ!」
彼は幸せそうに目を細める。濃厚な牡蠣の味が、口いっぱいに広がっていく。
「これだけ大きいと、一つでもかなりお腹が満たされるな」
アキトは満足げに呟く。高級食材を堪能できる喜びを、彼は噛みしめていた。
「でも、明日からは頑張らないとな...」
贅沢な時間は、彼を現実に引き戻す。どんな敵が現れるかわからないダンジョンで、アキトは生き残らねばならないのだ。
「金森さんの言う通り、一刻も早く強くなるんだ」
彼は心に誓う。スキルオーブを求める冒険は、まだ始まったばかりなのだから。
アキトは最後の一切れを口に運ぶと、勘定を済ませて店を後にした。
「さて、明日はどんな装備を買おうかな」
彼の心は、既に次なる冒険に向かっていた。
夜の街を歩くアキト。彼の表情は、希望に満ちている。
「俺は...最強の冒険者になるんだ!」
アキトは力強く呟くと、家路を急ぐのだった。彼はビール1杯で酔っ払っていた。
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