「第32話 - 運命の取引」
アキトの動揺を察したのか、金森は彼を安心させるように話を続けた。
「現在、我が国には1名、鑑定が可能なスキルを持った人間がいます。しかし、その所在はトップシークレットなんです」
アキトは驚きを隠せない。日本にも、そんな人物がいるとは。
「本人の要望で、1日1度の鑑定を行う代わりに日給60万円を支給し、自由に生活してもらっています。行動の自由も保証されています。まあ、常に首相に並ぶほどのセキュリティ体制が敷かれている前提での自由になりますが」
金森は微笑む。まるで、アキトにも同じ提案をするかのような口ぶりだ。
「そういうことも可能というわけです」
「あー...そういうのは嬉しくない...ですよね...」
アキトは苦笑する。自由を失うことへの恐怖が、彼の脳裏をよぎった。
「わかりました。それでは当初の話の通り、オーブの買い取りをさせていただきましょう」
金森は話を戻す。
「ゴブリンのオーブですと、ギルドでの買い取りは10万円程度です。『爪がきれいになるスキル』ということですので、そうですね。800万円で買い取りいたしましょう。いかがですか?」
「そ、それで大丈夫です!ありがとうございます」
アキトは驚きと喜びで声を上げた。800万円。そんな大金が、彼の手に入るとは。
「もし戦闘に関係するスキルでしたら、数億、どころか数十億してもおかしくないのですけども。お持ちだったりします?」
金森の問いに、アキトは一瞬で答えを決める。
「...あー、持ってないですね」
彼は内心で呟いた。
(もう余計なことは何も言うな。何も言うなよ、俺)
アキトはスキルオーブの売買とは、これ以上関わりたくないと感じていた。今回の取引で、十分すぎるほどの利益を得られるのだ。
金森は満足げに頷くと、アキトに尋ねた。
「一方的に私ばかり質問してしまいましたね。何か私に聞きたいこととかありますか?」
アキトは思案顔で、金森を見つめる。彼の脳裏には、様々な疑問が浮かんでいた。
スキルオーブをめぐる争奪戦。各国の思惑。そして、金森の真意。
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