「第30話 - 秘密の取引」
アキトがダンジョンの入り口に戻ってきたときには、金森が当然のように立っていた。
「誰が見ているかわからないので、ここでは何もしないでください。会議室を手配してあるので、こちらの車に」
金森に促され、アキトは近くに停まっていた軽バンに案内された。冒険者も使っている車種だ。目立たないようにこの車を使っているのかもしれないと思ったが、そもそもの金森の存在があまりにも目立っている。彼女の美しさは、周囲の目を引きつけずにはいられないようだ。
軽バンに乗り込んだアキトは、車内の広さに驚いた。明らかに外見よりも空間が広く感じられる。
「これ...何か魔法を使ってるんですか?」
アキトが尋ねると、金森は微笑んだ。
「探索用の魔道具の応用ですね。購入すると探索が捗るようになりますよ」
彼女の言葉に、アキトは魔道具の可能性の広さを感じずにはいられなかった。
軽バンは、都心にある高層ビルの地下駐車場に滑り込む。運転手がドアを開け、アキトは金森に続いて車外に出た。
エレベーターホールに向かう途中、金森が片手を上げただけで、周囲のホテルマンたちが恭しく礼をする。彼女の存在感は、ここでも際立っていた。
(あれ...ここ、明らかに普通の入口じゃないよな......VIPの入り口なのか?)
アキトは内心で呟く。金森についていくことに、少し躊躇いを感じ始めていた。
金森のために開かれたエレベーターに乗り込むと、ドアが静かに閉まる。操作盤はないが、エレベーターは上へと向かっている。加速度を感じながら、アキトは金森の横顔を盗み見た。
ど、どこに連れて行かれてるんだろう...不安になってきたぞ......
アキトの胸中には、不安が広がっていく。この状況が、彼の想像を超えたものだということは明らかだった。
エレベーターが止まり、ドアが開く。目の前に広がるのは、都心を一望する眺望と豪華な調度品に満ちた部屋だった。
「どうぞ、お座りください」
金森に案内され、アキトはソファに腰を下ろす。部屋には二人の他に誰もいない。
「さて、スキルオーブの件ですが...」
金森が切り出した。アキトは緊張で喉が渇く。
軽い気持ちで電話したら、こんなことになってしまうなんて...
アキトは内心で後悔していた。スキルコレクターなのか何なのか、彼にはわからない。ただ、オーブを買ってくれるかもしれないと思っただけなのに。
豪華な部屋の中で、金森との秘密の取引が始まろうとしている。アキトは未知の世界に足を踏み入れてしまった予感に、戸惑いを隠せずにいた。
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