「第3話 - 隠されたスキルの秘密」
アキトは飲食店でのアルバイトを続けながら、日々、客や同僚のスキルを観察していた。『スキルのことがよく分かるスキル』のおかげで、彼は人々の隠れた能力を知ることができた。
同じシフトで働く女子大生のサクラは、いつも多くのチップを稼いでいる。彼女の明るい笑顔と丁寧な接客は、客から高く評価されていた。
「サクラちゃんって、可愛いからチップがいっぱい入るんだよね!」
同僚の一人がそう言うと、サクラは謙遜しながらも嬉しそうに微笑んだ。しかし、アキトは彼女の頭上に浮かぶスキル名を見て、思わず目を見張った。
『チップをもらいやすくなるスキル』
なるほど、サクラがチップを多く稼げるのは、彼女の容姿だけではなく、このスキルの力も大きいようだ。アキトは人のスキルを覗き見ることに罪悪感を覚えつつも、その実態を知る喜びを隠せずにいた。
ある日、店に冒険者の一行が訪れた。彼らは全身に鎧を纏い、武器を携えた勇猛な姿をしていた。アキトは興奮を隠せずに、冒険者たちのスキルを観察した。
『モンスターの弱点を見抜くスキル』、『どんな攻撃でも受け止められる盾のスキル』、『仲間のHPを回復できるスキル』...
予想通り、冒険者たちは戦闘に特化したスキルを持っていた。しかし、アキトが驚いたのは、彼らが戦闘以外にも様々なスキルを持っていることだった。
『腐った肉も食べられるスキル』、『鈍臭くなるスキル』...
一人の冒険者が複数のスキルを持っているのを見て、アキトは疑問を感じた。自分は一つしかスキルを授かっていないのに、どうして彼らは多くのスキルを持っているのだろう?
仕事が一段落ついたところで、アキトはサクラに質問した。
「ねえ、サクラちゃん。冒険者ってどうやって戦ってるのか知ってる?色んなスキルがあるって聞くけど、1つもっているだけで、ダンジョンのモンスターと戦えるとは到底思えないけどなぁ」
「レベルアップすれば強くなるって聞くけど......あとはね、冒険者は『スキルオーブ』っていう宝物を集めて、新しいスキルを習得するんだよ」
サクラは得意げに説明した。
「スキルオーブ?」
「そう!ダンジョンの奥深くに眠ってるんだって。冒険者はそれを手に入れて、自分の能力を高めていくの」
アキトは感心しながら、サクラの話に耳を傾けた。冒険者になれば、自分も多くのスキルを手に入れられるかもしれない。
「実は、私もスキルを持ってるんだよ」
サクラが急に身を乗り出してきて、アキトに耳打ちした。
「え、何のスキル?」
「ふふっ、内緒!でも、すごく便利なスキルなんだから」
サクラは意味ありげに笑うと、再び接客に戻っていった。アキトは彼女の言葉を思い出した。
アキトは自分の『スキルのことがよく分かるスキル』について、誰にも話していない。人のプライバシーを覗き見ることができる能力を持っていると知られたら、どう思われるか分からないからだ。
夕暮れ時、オレンジ色の日差しが店内を照らす中、アキトは冒険者への憧れを胸に秘めながら、黙々と働き続けた。いつか、自分も冒険者になり、多くのスキルを手に入れられる日が来るのだろうか。彼の心は、未知なる可能性に胸を躍らせていた。
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