「第23話 - 驚きの買取額」
アキトは夢中になってゴブリン狩りを続けていた。気がつけば、辺りは夕暮れに染まっていた。
「はぁ、はぁ...今までの人生で、一番楽しかったかもしれないな」
彼は満足げに呟く。年甲斐もなく大はしゃぎしてしまった。
「そういえば、ステータスはどうなってるんだ?」
アキトは冒険者カードで、自分の情報を確認する。
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プレイヤーランク ★
プレイヤーレベル 3
次のレベルまで 94
累積経験値 237
ステータス
HP 100→102
MP 10→11
スキル
『スキルのことがよく分かるスキル』 -
『矢をたくさん打てるスキル』 ★
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「おおっ、気づいたらレベル3になってる!HPも2上がってるな」
アキトは驚きと喜びで目を見開く。この調子で狩りを続ければ、どんどんレベルが上がっていきそうだ。
「でも、2%アップじゃ、なかなか効果も実感できないかもな」
彼は少し残念そうに呟く。漫画で見るようなレベルアップ時の演出や、ステータスの全回復といったご褒美はないようだ。
「まあ、そんなご都合主義が通用するわけないか」
アキトは苦笑しながら、ギルドに向かって歩き出す。歩くたびに、ジャラジャラと音が鳴る。
「結構な数の魔石を回収したからな。ホブゴブリンも3体は倒したし」
彼は満足げに鞄の中身を確認する。初遭遇のホブゴブリンの後、さらに2体と遭遇し、見事に討伐したのだ。
「ゴブリンの気配だけを追っかけてたら、迷子になるところだったなぁ」
アキトは危機一髪だったことを思い出し、冷や汗をかく。
「マジで帰れなくなるところだった...怖かった......」
彼は心の底から後悔していた。スキルに頼りすぎるのは危険だと痛感する。
「人間のスキルの気配をたどって、なんとかダンジョンから脱出できたけど......もっと慎重にならないとな」
アキトは反省しつつ、ギルドの建物に足を踏み入れる。
ギルドは夕暮れ時のため、冒険者たちでにぎわっていた。男女問わず、様々な装備を身につけた冒険者が、談笑しながら帰路についている。
「みんな、疲れた様子だけど...楽しそうだな」
アキトは冒険者たちの表情を見て、微笑む。自分もこの仲間入りができたことが、嬉しくてならない。
そんな思いを胸に、アキトは受付カウンターに向かう。
「すみません。魔石の買取をお願いしたいんですが」
アキトは受付嬢に声をかける。
「はい。プレイヤーカードと魔石をお出しいただけますか?」
彼は言われた通りに、カードを出し、袋に入れていた魔石を机の上に出していく。するとそれを見た受付嬢も、ギルドの中の人々もざわついているように見えた。
「少々お待ちください」
受付嬢は大量の魔石を運んでいく。アキトは何が起こっているのか、戸惑いを隠せずにいた。
「なんだろう...なんか変なことしたかな?」
彼は不安げに周囲を見渡す。他の冒険者たちも、興味深そうにこちらを観察している。
「ち、注目の的だ......早く済ませたいな」
アキトは内心で焦りを感じていた。こんなに注目されるのは、人生でもあまりないことだ。
しばらくして、受付嬢が戻ってくる。彼女は驚きに満ちた表情で、アキトに告げた。
「買取金額は14万3000円になります」
14万3000円!?1ヶ月分の給料にも匹敵する金額じゃないか!
アキトは心の中で叫ぶ。こんなに稼げるとは思ってもみなかった。
「信じられない...本当に、こんなにもらえるんですか?」
彼は動揺を隠せずにいた。
「レベル3...入場記録も初めてですし......まさか、初めての冒険ですか?」
受付嬢が尋ねる。その表情は、驚きと好奇心に満ちている。
「あ、はい。そうなんです」
アキトは頷く。
「ゴブリンだと魔石一つで1000円ほど、ホブゴブリンだと5000円くらいですね。1匹も倒せなくて帰ってくる人が普通ですし、このダンジョンじゃ、パーティーでも20体以上倒してくる人はベテランしかいませんよ」
受付嬢の言葉に、アキトは目を丸くする。
「そ、そうなんですか。何か秘訣があるんですか?」
彼は思わず尋ねてしまう。
「そ、それはこちらのセリフです...」
受付嬢は苦笑いを浮かべる。
「今日は、ご自身で討伐されたんですか?」
「は、はい。一人で潜ってました」
アキトが答えると、受付嬢は驚愕の表情を浮かべた。
「一人で、これだけ討伐するなんて...とても初心者とは思えません。良いスキルを授かったのですね」
彼女は感心したように呟く。その間にも、彼女の手はスムーズに買取の処理を進めていく。
「ありがとうございました。またのご利用をお待ちしております」
受付嬢は笑顔で言う。アキトは頷くと、ギルドを後にした。
「いや、マジでわからんな。ベテランでも20匹って...どういうことなんだろう」
アキトは首をかしげる。自分の力が、異常に高いことに気づき始めていた。
「帰ったらちょっと考えてみるか...」
夕暮れの街を歩きながら、アキトは今日の出来事を反芻していた。
「こんなに稼げるなら、冒険者も悪くないな...」
彼は小さく呟く。弓の魔法を使えば、ゴブリン狩りは楽勝だ。これからは、冒険者として生きていくのも良いかもしれない。
「明日も、ダンジョンに潜ってみるか...」
アキトは意を決して、家路を急ぐ。彼の冒険者人生は、予想以上の幸運なスタートを切ったようだ。
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