「第20話 - ゴブリンの巣」
アキトはゴブリンの巣の前で様子を伺っていた。
「よし、作戦は決めた。行ってみよう」
巣の入り口からは、不気味な唸り声が聞こえてくる。 巣の前に体を出したところ、ゴブリンたちも、こちらに気づいた。獰猛な表情で牙を剥き、こちらを睨みつけている。
アキトは意を決して、ゴブリンに向かって3本同時に雷の矢を放つ。放たれた矢は、雷光を纏いながら9本の矢になりゴブリンめがけて突き進む。
「バチバチバチッ!」
矢がゴブリンに命中すると同時に、激しい電撃音が巣の中に響き渡る。9本の矢に込められた電気魔法が同時に発動したのだ。ゴブリンたちは凄まじい悲鳴を上げ、魔石を残し、灰になった。
「3本同時に放つ練習をしておいて良かった。こんなに早く使うことになるとはな」
アキトは小さく呟くと、相手の様子を伺う間もなく、氷の矢を放ってバリゲードを作る。氷の矢が地面に突き刺さると、そこから一気に氷が広がっていく。あっという間に、ゴブリンの巣の入り口は分厚い氷の壁で封鎖された。
「スキルでゴブリンの生存人数を確認.....お、残り5匹?結構削れたな」
アキトが上機嫌で呟くと、氷の壁を乗り越えて、こちらに向かってくるゴブリンの姿が見えた。彼らは、錆び付いた剣や斧を手にしている。
「まだ向かってくるか。ならば...」
彼はニヤリと笑うと、こちらに向かってくるゴブリンに炎の矢を放つ。炎の矢は、ゴブリンの周りで爆ぜ、火の海を作り出す。灼熱の炎に阻まれ、ゴブリンたちの動きが鈍くなった。
「やばい、相手の姿が見えづらいな...」
アキトは眉をひそめる。氷のバリゲードと炎の陰で、ゴブリンの姿がはっきりと見えない。
「炎の矢は視界を遮るから、もう少し考えないとな」
彼は反省しつつ、次の手を考える。その時、炎の向こうから、巨大な影が飛び出してきた。
「なっ、デカい!」
アキトは思わず叫ぶ。飛び出してきたのは、通常のゴブリンの2倍ほどの大きさがある、ホブゴブリンだった。
「ぬっ!ホブゴブリン!?」
アキトは慌てて、ホブゴブリンのスキルを確認する。
「『熱くても我慢できるスキル』...!お前だったのか!やらかした!」
彼は舌打ちをしながら、下がりつつ緑の矢を放つ。しかし、ホブゴブリンは、緑の蔓に絡まりながらも、ゆっくりとこちらに近づいてくる。
「くっ、動きが鈍くなっただけか...」
アキトは焦りを隠せない。このままでは、ホブゴブリンに追いつかれてしまう。
「なら、これはどうだ!」
彼は3本の電気の矢を、ホブゴブリンに向かって放つ。『矢をたくさん打てるスキル』によって電撃に包まれた9本の矢となり、ホブゴブリンの体に突き刺さる。
「ギャオオオン!」
ホブゴブリンが苦痛の叫び声を上げる。しかし、まだ倒れない。
「電気の矢を束にしたのに...これでも倒しきれない!」
アキトは焦りを隠せない。ホブゴブリンとの距離が縮まっていく。
「やばい!向かってくる!どうしよ、どうしよ!」
アキトは必死で逃げ回る。その時、ふとバリアのことを思い出した。
「そうだ、バリアがあった!」
アキトは咄嗟にバリアの矢を打つ。だが、焦りのあまり、矢は1本、2本と連射してしまう。
「やべ、撃ちすぎた!」
彼は慌てるが、バリアの効果は絶大だった。ホブゴブリンは、次々と展開されるバリアに阻まれ、近づけなくなっている。
「よ、よし、これだ!」
アキトはホッと胸を撫で下ろすと、勢いづいて氷の矢を次々放ち、ホブゴブリンの全身を凍らせていく。
「この隙に...3本の電気の矢だ!」
氷に閉じ込められたホブゴブリンに、雷の矢が突き刺さる。凍った体に電撃が駆け巡り、ホブゴブリンの体が砕け散った。
「やった...倒せた...!」
アキトは安堵の息をつく。危ない戦いだったが、なんとか切り抜けることができたのだった。
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