「第2話 - スキルの秘密」
教会を後にしたアキトは、自分に授けられたスキル『スキルのことがよく分かるスキル』について考えを巡らせていた。冒険者たちが持つスキルは、大きく分けて戦闘用とそれ以外の便利系に分類される。戦闘用スキルを持つ者は、ダンジョンでの探索や戦闘で活躍し、便利系スキルを持つ者は、冒険者たちをサポートする役割を担っているのだ。
「『スキルのことがよく分かるスキル』か...どっちのタイプなんだろう?」
アキトは首をかしげながら、アパートへと向かう。部屋に入ると、彼はベッドに腰掛け、スキルの性能を確かめようと試みた。
「『スキルのことがよく分かるスキル』、発動!」
大きな声で叫んでみるが、何も起こる気配はない。部屋の中は静まり返っている。
「う〜ん...言葉だけじゃダメなのかな?」
アキトは手を前に出し、集中してみる。しかし、やはり何の反応もない。彼は溜息をつき、窓の外を眺めた。夕暮れ時の街並みが、オレンジ色に染まっている。
「『スキルのことがよく分かるスキル』って名前からして、スキルがわかるんじゃないのか?レーダーって、探知するものだろう?」
彼は頭を抱えながら考え込む。そして、ふと閃いた。
「そうだ、人がいないとダメなのかもしれない!」
アキトは勢いよく立ち上がり、部屋を出た。目的地は、近所のコンビニだ。
コンビニの自動ドアが開き、アキトが中に入ると、涼しい空気が彼を包み込んだ。店内には、数人の客と店員がいる。
「よし、ここなら人がいる。『スキルのことがよく分かるスキル』、発動!」
アキトは心の中で唱えた。すると、突然彼の視界が変化した。客と店員の頭上に、半透明の文字が浮かび上がったのだ。
「『レジの金額を1円単位で瞬時に暗算できるスキル』...『万引き犯を見抜けるスキル』...?」
アキトは驚きと興奮に目を見開いた。頭上に浮かぶ文字は、それぞれの人が持つスキルの名前だと直感した。
「すげぇ...俺、本当にスキルが見えるようになったんだ!」
彼は思わず声を上げそうになったが、周りの視線を気にして慌てて口を手で覆った。
アキトはコンビニをあとにし、街を歩きながら『スキルのことがよく分かるスキル』を試した。行き交う人々の頭上に、次々とスキル名が浮かび上がる。
「『ギリギリの低温調理ができるスキル』...『包丁の研ぎ方が上手いスキル』...お、おい、これって料理人のスキルか?」
通りすがりの飲食店の店員たちのスキルを見て、アキトは思わず吹き出しそうになった。
「ほら、あのトラックの運転手。『ブレーキがうまくかけられるスキル』...マジかよ。」
アキトは電車に乗る人々を観察しながら、スキルの多様性とその具体性に驚きを隠せなかった。誰もが一つずつ、くだらないようで役に立ちそうなスキルを持っているようだ。
「スキルってのは、こんなにも身近なところにあるのか...」
彼は感心しながら、スキルの多様性に目を見張った。しかし、ここまでの観察では、戦闘用のスキルを持つ人は見当たらない。
「やっぱり、冒険者じゃないと戦闘スキルは授かれないのかな?」
アキトは少し残念そうに呟いた。だが、『スキルのことがよく分かるスキル』の力は実感できた。このスキルを使えば、きっと冒険者としての道が開けるはずだ。
夕暮れの街を歩きながら、アキトは冒険者への第一歩を踏み出したことを実感していた。彼の心は、未知の可能性に胸を躍らせていた。
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