「第12話 - 冒険者の装備」
アキトは『矢をたくさん打てるスキル』の可能性に心躍らせながらも、ふと疑問を抱いた。
「弓本体はどんなものにしようか......」
彼は再びスマートフォンを手に取り、情報を探り始める。すると、ダンジョン向けの戦闘用の弓が売られていることを発見した。
「ずらりとコンパウンドボウが並んでる...動画を見るとすごい威力だな」
アキトは動画を再生し、コンパウンドボウの仕組みを学んでいく。このボウは、滑車とケーブルを使って弦を引く力を軽減し、より強力な矢を放つことができるのだ。弓の両端にカムという部品があり、これが弦の張力を調整する。引き始めと引き終わりは軽く、中間で最大の張力になるように設計されている。
「なるほど...科学の力で、強力な一撃を放てるようになってるのか」
アキトは感心しながら、コンパウンドボウの値段をチェックした。エントリーモデルでも20万円ほどする。
「まぁ、モンスターと戦うんなら安心できるものじゃないとな」
彼は決意を新たにする。冒険者として稼いでいくなら、自分の命を守れる装備が必要不可欠だ。
「とりあえず、問題はこれでも、無事スキルが発動するかどうかだな」
アキトは近くのダンジョンストアに向かうことにした。実物を見て、自分のスキルが使えるかを確かめるためだ。
ストアに到着すると、店内にはズラリとコンパウンドボウが並んでいた。アキトは店員に声をかけ、試射させてもらうことにする。
「あら、弓系のスキルをお持ちで?コンパウンドボウですか?このあたりのモデルがおすすめですよ」
店員は親切に説明してくれる。アキトは弓を手に取り、矢をセットする。静かに集中し、的に向かって矢を放つ。するとその矢は、見事に3本に増えて的に突き刺さった。
「よし...スキルが使えるな。これなら、購入を決断できそうだ」
アキトは店員に向かって尋ねる。
「初心者でも行けるダンジョンに行きたいんですが、出現するモンスターを教えてもらえますか?」
「ああ、初心者ダンジョンならゴブリンが主に出ますね。でも、弓が当たらないと結構大変ですよ。近接武器がやっぱりおすすめです」
店員は親身になってアドバイスしてくれる。
「とはいえ......今みたいに矢が増えて、何度も使えるなら話は違うかもしれません。氷結魔法で一定の範囲を凍結させて、その間に雷魔法付きの矢で倒すのはどうでしょう?」
店員の提案に、アキトは目を輝かせる。
「なるほど!それなら、ゴブリンを一網打尽にできるかもしれませんね!」
二人は戦略を練りながら、矢の選定を進めていく。しかし、ふとアキトは疑問に思った。
「ところで、弓系のスキルってダンジョン攻略ではメジャーではないんですよね?でも、ここには結構たくさんの弓と矢が置いてありますが...」
「ああ、それは富裕層の方がレジャーで潜られるんですよ。その際に大量に買っていってくれるので、かなり儲かるんです。だからどこのストアでも豊富に扱っているんですよ」
店員の説明に、アキトは納得した。冒険者だけでなく、裕福な層もダンジョンを楽しんでいるのだ。
「魔法自体は誰でも自由に使えるものじゃないですが、矢は最も手軽な魔道具の一つですからね。お金さえあれば誰でも魔法を使えるというわけです」
アキトは覚悟を決める。冒険者としての第一歩を踏み出すなら、惜しみなく投資するつもりだ。
「よし...コンパウンドボウと、属性魔法付きの矢を買おう!」
アキトは勇気を振り絞り、購入を決断した。しめて70万円。これが、彼の冒険者人生を大きく変える一歩となるのだ。
装備を手に入れたアキトは、店を後にする。背中に背負ったコンパウンドボウが、心強く感じられた。
「明日からは...いよいよダンジョン探索だ!」
アキトの心は、期待と不安で満たされていた。彼の冒険は、新たなステージに突入しようとしているのだ。
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