「第10話 - 弓の道」
アキトは『矢をたくさん打てるスキル』を習得したものの、肝心の弓の扱い方を知らなかった。とりあえず、弓を射る方法を探ることにした。
「弓教室の体験か...1回12,000円か。高いな...」
彼はスマートフォンで見つけた弓教室の情報を眺めていた。普通の人と一緒に練習すると危険なため、この教室では弓関連のスキルを持つ人向けの講習を行っているようだ。
「武道系の教室って、ダンジョンができてから増えたよな」
アキトはぼんやりと考えを巡らせる。世界に変化が訪れてから、人々の興味関心も大きく変わったのだ。冒険者を目指す者が増え、彼らを支援するための施設やサービスも拡大している。弓道教室もその一つだろう。アキトは、自分もその流れに乗ることになるとは思ってもみなかった。
教室に到着すると、アキトは袴のレンタルを発見した。
「せっかくだし、雰囲気を出すために借りてみるか」
袴に着替え、弓道場に入る。真新しい道場の香りが、アキトの鼻をくすぐる。
「さて、『矢をたくさん打てるスキル』ってどんな効果なんだろう...今日はスキルの検証が目的だな」
講師の指導のもと、アキトは弓の基本を学んでいく。足の位置、弓の構え方、矢の番え方...。一つ一つの動作に意識を集中しながら、彼は弓と向き合う。
「足は肩幅に開いて、真っすぐ立ちます。弓は左手で垂直に構え、右手で弦を引きます」
講師の説明に、アキトは必死でついていく。
「弦は目の高さまで引き、顎を外さないようにして、ゆっくりと放します」
「は、はい...!」
アキトは講師の指示通りに弓を放つ。初めての割には、上手く的に当たった。
「初めてとは思えないです。よく構えられていますよ」
講師が褒めると、アキトは照れくさそうに笑った。
「ところで、弓関連のスキルは冒険者の間でどう評価されているんですか?」
アキトは講師に尋ねてみた。
「正直なところ、あまり評価は高くないですね。使い捨ての矢の調達と持ち込みのコストが高いので...」
講師は残念そうに言う。俺もがっかりだ。
「ただ、『魔力の矢を作るスキル』があれば、そのネックは解消するんですけどね」
「『魔力の矢を作るスキル』ですか...」
「ええ。ですから、活躍している弓使いの冒険者はそのスキルを持っている人がほとんどです。属性魔法系の冒険者もちらほらという感じですかね」
アキトは落胆した。自分のスキルだけでは、冒険者としてやっていくのは難しいのかもしれない。
「スキルを使ってやってみますね。『矢をたくさん打てるスキル』」
落ち込みながらも、アキトは弓を構える。目標に向かって、彼は矢を放つ。
すると、信じられないことが起こった。放った矢が、まるで分裂するかのように増えていたのだ。
「な、なんだこれは...!?」
アキトは目を疑った。放った一本の矢が、三本に増えている。まさに、『矢をたくさん打てるスキル』の効果だ。
「信じられない...こんなスキルがあったなんて...」
講師も驚きの表情を浮かべる。アキトのスキルは、弓の常識を覆すものだった。
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