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アニメイト様主催の『相棒とつむぐ物語』コンテストの応募作品です。
この企画はポイント重視のようですので、応援していただける方はポイントいただけると嬉しいです!
花の都、王都──。
ここは、『薔薇の戦姫』の異名を持つ女王陛下が統べる国。
そして、私は今、大聖堂の礼拝堂で整列している。
「聖女見習いの方々! 知っての通り、隣国との小競り合いが本格化して来た」
私達の前で王立騎士団の団長が声を発する。
「そこで女王陛下は貴女方に勅命を下された。各自、前線に赴き、負傷した兵を回復せよ! と」
「はい」
団長の前に並ぶ私達、五人の聖女見習いは、頭を垂れて勅命を拝した。
そこで、私達の内の一人が手を挙げた。
「あの、前線にはどうやって行くのでしょうか?」
すると団長が答える。
「君達には護衛をつける。護衛と一緒に馬車で前線に向かってもらう」
「じゃあ、その護衛は……」
「うむ。ここにいる彼らだ」
そう言って団長は、私達の前に並ぶ団員を紹介した。
「まあ、美形揃い……」
修道女で男性に慣れていない私達は、彫刻のように逞しい男性陣に頬を染めてしまう。
団員達は、聖女見習いと一人ずつペアを組んでいった。
「よろしく。可愛い聖女見習いさん」
「美しい女性を守れるなんて光栄です」
「僕が君を守るよ」
「私について来てくれ」
男性陣がうっとりするような言葉を投げかけると、女性たちはみんな「はぁ〜」と夢心地になってしまった。
で。
私は?
私のパートナーは?
「あ、あの、私の護衛はどうなるのでしょうか?」
私だけ護衛がいなかったので、私は団長に尋ねた。
すると団長が、団員達に聞いた。
「あれ? ネイの奴はどうした?」
「さぁ」
「あ、そういえば、遅れるかもって言ってましたよ。きっと地下ボクシングですね」
え?
「やれやれ、またか。仕方ない奴だな」と、団長。
「最近、入り浸りだそうですよ」
え、地下ボクシングってことは、賭博? ギャンブル好き?
「何でも今までの負けを取り返すんだって躍起になってました」
おいおいおい。ギャンブルに溺れてる男? 正直、好きになれないんだけど……。
と、その時──。
バンッと礼拝堂のドアが開いて一人の男性が入って来た。
「ひゅまん、おふれた」
よく聞きとれない言葉を放った男性は、団長の元に駆け寄って来た。
「え!?」
私は彼を見て驚いた。
だって彼の顔は、ぼこぼこに殴られた跡があったからだ。
「遅いぞ、ネイ!」
「ああ、ひゅまん」
団長が嗜めるも、男性は反省している様子はない。
「あ、えっと、こいつが君の護衛だ」
団長は、私に男性を紹介する。
「おへは、ねい・れぶほーん。よほひくな」
「すいません、何言ってるか分かりません。ちょっとそのままでいて下さい」
私はそう言うと、手を組んで詠唱した。
「神よ、癒しの風をお与え下さい──」
私が祈りを捧げると、男性は光に包まれ、顔のあざはみるみる消えた。
「おっ、治った。さすが聖女。ありがとな!」
「いえ、私は聖女ではなく、聖女見習いで──」
と言いかけた瞬間。私は彼を見て息を飲んだ。
な、な、な、なんつー美形!
た、例えていうなら、可憐な琥珀色の肌の少女に、獅子の野生味を足したような美しさ!
「どうしたの?」
男性が私に聞く。私は見惚れたことを咄嗟に隠した。
「い、いえ。何でもありません」
「そう。あ、オレの名はネイ・レグホーン。よろしくな、相棒」
「あ、はい。私はカレン・ウィスタリアです。あの、顔はどうされたんです?」
「ああ、ちょっと試合してたんだ。ぼこぼこになったけど、勝ったぜ」
なんだ、試合をする側かぁ。なら悪い人じゃないかも。
と、私はほっとした。
すると、団長がネイの頭をバシッと叩いた。
「痛っ! 何するんだよ団長」
「お前、ボクシングって言っても闇ボクシングなんだろ? 違法だ」
「闇の方が稼げるんだよ。人生に金は必要だろ?」
え、闇ボクシング? 違法?
と、私が戸惑っていると、急にネイが振り返って私に顔を近づけて来た。
「ねぇ、あんた──」
「な、な、何でしょうか?」
「あんた、金になりそう」
「え?」
「あんたの回復魔法使えば、がっつり儲けられそうじゃん!」
「は……?」
「オレがマネージャーやるからさ、一緒に稼がないか?」
「はぁ!?」
そこで、バシッとまた団長がネイを叩いた。
「国に仕える聖女見習いで稼ごうとするな!」
「いったいなー! 叩かなくてもいいだろ!」
はは……。
うん、分かった。
こいつは、クズだ。