9.王国の事情
・・・・・王城では・・・・・・・・
「宰相、金鉱は何時になったら掘れるようになるのだ。これ以上待てば、公爵一派に好機を与える事にもなり兼ねん。
首尾はどうなのだ」
「国王陛下、公爵派のハーズレの領主は失敗、商業ギルドも失敗しました。ここは、準備万端で対応するのが賢明と思われます。」
「そうは言っても、相手も次の手を打って来るだろうし、税収は、公爵派の強硬組は、払って来ないから、6割程度しか入って来ないのに災厄の金庫に今年も金銀10万枚が吸い込まれるのだぞ。財政は、どんどん悪くなる一方だ。日にちが経てば経つほど我が陣営は苦しくなるのは必定だぞ」
「国王様、そのひっ迫する財政難の折ですので、どうか王妃様の旅行と買い物を控えるようご説得お願いします」
「王妃は、浪費家なのは知っておろう。
敵国の王女を和平目的で嫁がせたのは、宰相であろう。あの岩石のような、どこが鼻だか口だか分からぬ顔を毎日ニコニコしながら見ていると、口の筋肉が痙攣飛び越して動かなくなるのだぞ。
顔に塗る白粉は、壁を塗るコテで塗るのだぞ。
いつもあいつは、旅行しているくせに、側室置いたら即戦争とまで敵国の王に言われ、世継ぎは、早めにとか言って来るし、あいつの顔見て頑張れる奴がいたら、俺は毎朝毎晩そいつを拝んでやるぞ。」
「王様、ここは、漢気を出して頂きませんと大変困ってまして、側近を美男子にしろと煩いのです。
給金も通常の3倍出しているのですが、皆、1日で辞めてしまって男性は一人も寄り付きません。
欲求不満気味ですので、ここは、王様の大砲をズドンと発射して頂ければ、一発で解決です。」
「何がズドンだ。宰相、王になる時、金は思いのまま、女は抱き放題と言ったであろう。
金は吸い取られるは、女はロックゴーレム一人とは、一般の商人の方がよっぽど裕福だぞ。私は、一刻も早く脱出したいのだ。
早く方策を考え、問題を解決するのだ。」
「は、どちらにしても問題解決の鍵は、ハーズレの町と枯れ木の森にございます。
先日、短剣と指輪を持つ第3王子マリオンを発見しました。
暗部の者を向かわせましたが、公爵家と思われる間者に阻まれ生け捕りには至りませんでしたが、旧侯爵家に草(その地に根付いた隠密)を放っておいて正解でしたな。
今、ハーズレの町に住んでいる事までは突き止めましたが、森に入ったまま帰ってこないそうです。そのうち食料が尽きれば戻って来るでしょうし、それを捉える為、1個大隊500人程を送り込んでおります。
S級冒険者の騒動で、応援の名目で送っておりますので、領主も嫌とは言えません。
これで、マリオン王子を捕まえられれば、金庫が開きますので、国宝の他、100万枚を超える金銀が手に入りますから、今の所、均衡している公爵家との戦力を大きくこちらに傾けられるでしょう。」
「そうか、しかしマリオンが生きていて助かったな。父上は、王位を誰かに渡せば、私に毒殺されると解かっていたのだろう。だから、誰にも分らないようにマリオンに渡し、死ぬまで譲らなかったふりをしていたのだろうな。
全く、しぶとい狸爺には困ったものだ。じわじわ毒を持って生かしておいたのに最後まで指輪も短剣もどこにあるのか口を割らなかった。
侯爵家の人間は皆死んでしまったから全てが不明だったしな
これで、マリオンの子供を餌に拷問でもして譲渡させれば問題解決だ」
・
「しかし、冒険者たちは、高々リッチ如きに後れを取るとは、思えんのだが。
そうではないか宰相」
「はい、このリッチは相当毒に造詣が深いのではないかと、王国の研究者達は分析しております。
ハーズレの最強冒険者だから下痢ピーで済んでいますが、おそらく毒ではないかと思われます。
S級冒険者に至っては、毒づけにされた為だと思われます。彼らは、耐えきれる能力はあっても、副産物の臭いが街を壊滅的にしてしまった自責の念に追い込まれ、精神的に耐えきれず気が触れたと分析しています。
ここから考察すると、毒も弱く、決して強いリッチではございません。」
「では、現世界最強の勇者パーティーは、必ず勝つのだな」
「問題ございません。毒耐性MAXの最強勇者ですよ。彼らが負けるのでしたらこの世で倒せるものはございません。」
「早く勇者を連れて討伐するのだ。ハーズレの町は、公爵家からは、はずれの町ではあるし、領主が中立に近い公爵派だ。今まで国に税も収めている。
鉱山さえ押さえれば、必ず寝返る。
早く公爵家を打倒せねば、枕を高くして寝れぬ」
・・・・・・公爵家では・・・・・・・・・・・
公爵邸にて
「公爵様、侯爵家を監視するものから第3王子マリオン様らしき人物を発見した件でございますが、どうもハーズレの町に住んでいるようにございます」
まさか王子らしき者が現れるとは、可能性はあったが、ハーズレは一応我が派閥が領主だ。何かあれば監視させるか。
今は、派閥で結束し兵力を上げる時期ではあるが、金鉱山を押さえられると財力面で厳しくなってしまう。冒険者は失敗してしまったし、何とか押えらない様妨害工作が必要なのだが国軍に駐留されると簡単には手が出せん。
「公爵様、もう一つ報告がございまして、どうもマリオン様は、ユームン様の夫らしいのです。」
「何、間違いではないのか、子供が生まれたのは聞いたが、街の冒険者と結婚したと聞いておったのに」
「そう思っていたのですが、必要に王国の間者が王子を狙うのを見ていたのですが、隣にいるのがユームン様と解かったのでございます」
「ユームンの夫が第3王子とは、何の因果かのう・・・・・・
しかし、なぜ王国は、今更何もできない第3王子に刺客?いや捕縛だな。殺しても、生きていても意味が無い。
捕縛しないとならない何かがあるのか。
いや、今は、それどころではない。
兵力増強と金鉱山発掘の阻止が重要だろう。
おい、ユームンの監視についてだが、引き続き行え、第3王子についても情報があったら伝えよ。
兵力の増強は、計画通り進めてくれ」
・・・その頃のリッチー・・・・
双子と一緒に家の前に家庭菜園を作り始めた。
やっぱり子供には、新鮮な野菜を食べさせないといけないと思うリッチーだった。
日記には家庭菜園のことをいっぱい書いた。
今日は、絵も入れて絵日記を子供たちと作った。